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2007年 ク宙の旅

前回の記事『区役所の思考停止っぷりよ』にいただいたコメントを読みながら、私の異次元体験を思い出していました。

遡ること 15年前、ルクセンブルクから日本に本帰国したときのこと。
当時は、日本に住むにあたって真っ先に必要なものが日本の携帯電話、という時代です。
 
有楽町のビックカメラで携帯電話を契約しようとしたところ、住民票が必要です、と言下に断られました。
しぶしぶ都営三田線に揺られて、芝公園の港区役所に来ました。
 
区役所の区民課で「海外からの転入」という用紙に記入させられます。
記入した紙を持って窓口に行きました。
きれいな七三に銀縁メガネの神経質そうな職員が対応してくれました。
 
職員は、私が手書きで記入した紙を見ながら、内容をパソコンに打ち込んでいきます。二度手間感が拭えませんが、心を無にして待ちます。
 
職員「転出元住所にフリガナを振ってください」
 
ええ~(困)
ドイツ語は読めるけど、フランス語は自信ないんだよなぁ。
まあテキトーでいいんだろう。
“Rue du Maréchal Foch” に
「リュー ドゥ マレシャル フォッシュ」とカナを振りました。
 
職員「えーと・・・市はどの部分ですかね」
私「ここです。”ルクセンブルク” です」
職員「ルクセンブルク市、でいいですか?」
私「はい」
職員「どこの国になりますか?」
私「ルクセンブルクです」
職員「む?」
私「ルクセンブルクという国なんです」
 
職員は泣きそうな顔で固まっている。
 
私「ルクセンブルク国のルクセンブルク市だと考えてください」
 
職員は小首をかしげながら、キーボードをカタカタと叩く。
 
職員「すみません。ルクセンブルクですか? ルクセンブルグですか?」
私「はい?」
職員「ですか? ですか?」
 
えーっと・・・これは哲学的な問いなんだろうか。
たしかに、ビッグカメラだと思っていたら、じつはビックカメラだったり。逆に、キャリーの彼氏はビックだと思っていたら、じつはビッグだったり。
そんなカン違いも、人生にはある。
しかし、今はアナタと人生について語っている場合ではないのだよ。
住民票がないと携帯電話を契約できなくて、携帯電話がないとベッドも配達してもらえないのだよ。
 
私「クでもグでも。どちらでもいいと思いますよ(微笑)」
職員「クか、グか、正式にはどちらが正しいんだろう・・・
 
正式って・・・。
ルクセンブルクのお役所にきいてみるかい?
正式には、クですか? グですか?って。
 
もういい。私が決めればいいんだね。
 
私「正式には、クです」
職員「え? どっちですか?」
私「『ク』です。カキクケコの『ク』。港区の『ク』ですよ」
職員「ああ。区だったんですか

んなわけないやろーっ!

ルクセンブルク国
ルクセンブルク市
ルクセンブル区か!