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日本の銀行よ。さらばでござる

私はスイスの銀行と香港の銀行の他に、いちおう日本の銀行にも口座を持っているわけですが、今日その銀行からこんな題名のメールが来ましてね。

「【重要】現在の住所が確認できませんでした」

メールにはこう書かれていました。

当行からお送りする書類をご登録住所宛にお送りしましたが、宛所なし等の理由により当行へ返送されております。住所を変更された場合は、住所変更の手続きをお願いいたします。
 
なお、ご対応をいただいていない場合、インターネットバンキング、ATM入出金、およびクレジットカードのご利用を制限させていただいております。

〇〇〇〇銀行

たしかに、7ヵ月前に香港からスイスへ移住したとき、日本の銀行に住所変更届など出していません。そんな必要など思いつきもせんわい。
ちなみに、銀行から郵送してほしい「書類」など皆無です。この「書類」とは、住所を確認するために銀行が勝手に送りつけてくる嫌がらせです。

さっそく、その銀行の eバンキングにログインしてみたら、私のアカウントはすでにブロックされていました。
なかなかの暴挙ですね。

「よくあるご質問」をクリック。「住所変更したい」をクリック。
「Q. 現在の登録住所や変更後の住所に海外が含まれますか?」に「はい」をクリックすると、「お手続き方法:郵送」との表示。

住所変更の手続きを郵送でせよと?
ダメだこりゃ。
頭がクラクラしながら、お問合せ先(海外から)の番号に電話しました。

長~い機械音声の後「オペレーターにお繋ぎします」からの永遠に続きそうな待ち時間。
やっと人間が出ました。

事情を説明して、郵送ではなくメールで住所変更できないのですか?と訊きました。
「海外にお住まいのお客様には、郵送でのお手続きをお願いしております」
アホですか?
海外に住んでいるからこそ郵送がメンドクサイのだよ。

住所変更届のフォームにはちゃんと記入するし、それをスキャンしてメールしますよ。郵送と何が違うのですか?と食い下がると、
「上席に相談しますので、少々お待ちください」

少々ではなかった。その間に仕事のメールを 1本書いて送る余裕があった。

「たいへんお待たせしました。△△課長の〇〇です。メールで送っていただく場合は添付ファイルにパスワードを設定していただく必要がございます」

いいよ。その程度ならできますよ。
てゆーか、課長さんが出てきちゃったんだ。

「今からパスワードを申し上げますので、メモしてください」

はあ? パスワード、あなたが決めるの?
まあいいけど。

メールで住所変更できるとわかってひとまずホッとしましたが、ここからがたいへんでした。

「添付書類として、公的機関が発行した住所証明書類が必要になります」

日本でいうところの住民票ですね?
ははは。そんなものないよ普通の国には。

「在留証明でもけっこうです」
おいおい。そのために日本大使館まで出向けってか?
だいだい、在留証明は現住所まで証明してくれないよ。

「ご身分を証明できるものはありますか?」
それなら腐るほどあるわい。パスポート、スイスのワークパミット、運転免許証、健康保険証、社員証。
でもね、そのどれもが顔写真・氏名・生年月日等は記載されているけれど、住所は記載されてないんですよ。
個人の ID に「住所」という概念はないんだわ。

考えてみたら、今どき住所が記載された書類ってないんですよ。個人情報保護法の影響なのか知らないけど。
電気・ガスの請求書も、携帯電話の請求書も、e-invoice がメールで来るので、住所を記載していません。

唯一思いついたのが、アパートの賃貸契約書でした。
「アパートの賃貸契約書には住所が記載されているので、そのコピーを送りましょうか?」
「アパートは公的機関ですか?」

んなわけあるかい!
わしゃ大臣か王家か?

どうしても公的機関が発行したものでなければならないらしいのです。

「お持ちのパスポートは、2020年以前に発行されたものですか?」
は? なんでそんなこと訊くんだろ。

パスポートを見てみた。
「2021年発行です」
「それ以前に発行されたパスポートはお持ちですか?」
持ってるわけねーだろ・・・と一瞬思いましたが、最近たまたま中国のビザを取るために奥のほうから引っぱり出してきたのを思い出しました。

「2011年に発行されたパスポートがありました。もちろん無効ですけど」
「最後のページに住所を書く欄がありますよね?」
「・・・ああ、あります。そこには当時の日本の住所が書かれていますが」
「その下に、現在のご住所を書いてください」

・・・・・・。
今? 自分で? 手書きで? すでに無効になってるパスポートに?
で、そのコピーを送れと? パスポートは公的機関が発行したものだから?

「公的機関が発行した住所証明」とかなんとかルールに書かれているのでしょうね。それが存在しない場合、賃貸契約書(れっきとした文書です)よりも、公文書を偽装するほうを選択するのですか?
ルールを遵守するってそういうことですか?
あなた、本当に課長さんですか?
日本の銀行、ダイジョーブですか?

住所を証明できない人間は、銀行取引ができない。マネーロンダリング防止のためなのでしょうが、こんなことやってるの日本の銀行だけですよ。
日本、ホントに終わるよ?
海外に住んでる日本人がどんどん資金を引きあげてくよ?


追記:
親愛なるnoterの皆様。楽しいコメントをありがとうございます。
私も本当に言いたいことはコメント欄に書かせていただいたとおりです。
郵送にこだわる古代宗教。馬鹿の一つ覚えのごとく公的機関と連呼する御上信仰。日本国内の慣行を世界に当て嵌めようとする無知蒙昧。これらの愚にも増して、私が最も「おかしい」と感じていることは、「住所」を神聖視する定住思想です。
私には住む家がありますし、現住所も喜んで開示しますが、それを公的に証明する手段はなく、それを求められたこともありません。そもそも、数年ごとに転居する人間にとって、住所という情報に何の意味があるのか理解に苦しみます。今のご時世、住所不定の人間や、ノマド的に様々な場所を転々として暮らす人間も珍しくありません。それらの人間は銀行口座を持つことができない、と 21世紀の日本の政府と銀行は言っているわけです。
いったい、いつまで「住所」という物理的な場所に縛られているのですか?
「重力に魂を縛られている人々」と言ったシャア・アズナブルの気持ちが今はよくわかります。