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ビジネスマナーは永遠に

前回の記事では、最近受講した異文化研修の導入編として、日本人の国民性を地理的要因、宗教・哲学、学校教育の面から解読したレクチャーを紹介しました。

今回は、その続き「ビジネスマナー編」を共有します。
前回同様、話し手は研修の講師です。


日本人は幼い頃から日本社会特有のルールを教え込まれ、さらに会社に入ってから、様々なビジネスマナーを身につけるために特別な訓練を受けます。それらは、あまりにも多くを要求するもの (demanding) です。
しかし、怖がることはありません。あなたがマナー違反を犯したとしても、それは世界の終わりを意味しません。
日本人は非日本人に対してはとても寛容なのです。

それでもやはり、あなたが日本人に好印象を与えるためには、日本人のビジネスマナーを知っておく必要があります。
本日の講義では、あなたが日本のクライアント社を訪問するときに、最低限守らなければならないマナーとエチケットを学びましょう。
 
まずは、名刺交換です。
このビデオを観て、名刺を交換する際の一つひとつの動作を覚えましょう。

あなたの名刺を両手で持って相手に見せながら、まずは会社名、次にあなたの名前を言います。
(役職は言わないこと!)
名刺を交換するには、あなたの名刺を片手で差出し、もう一方の手で相手の名刺を受取ります。
受取った相手の名刺を両手で持ち、軽くお辞儀をしながら数秒間相手の名刺を凝視します。
「どこまで深くお辞儀をするか」は気にしなくていいでしょう。
日本人は、非日本人であるあなたに対してはそこまでのスキルを要求しません。

受取った名刺はテーブルの上に、座席どおりに並べておきます。(ミーティングの間ずっとです)


名刺交換を無事終えたら、次のマナーは席順です。
訪問者側 (guests) はドアから遠いサイド、ホスト側はドアに近いサイドに着席します。
では、ホスト側の横の並び方にはどのようなルールがあるでしょうか?

地位の高い順に①から⑤までの人がいるとします。
①~⑤を正しい席に移動させてください。

(Thinking time)

よくできました!

解説します。

最も地位の高い人①は、センターへ
2番目に高い人②は、①の隣へ(ドアから遠い方)
3番目に高い人③は、その逆サイド(ドアに近い方)
最も地位の低い人⑤は、ドアに最も近い席に着きます。


次にやるべきことは、おみやげを渡す、です。

おみやげは、高価なものでなくていいです。同僚たちでシェアできるお菓子などが最適です。
例えばクッキーやチョコレート、またはあなたの国の名物スイーツなどが喜ばれるでしょう。


アルコール類は避けてください。


おみやげは、きれいにラッピングし、小洒落たバッグに入れます。


おみやげの入ったバッグを両手で持ち、ホスト側の最も地位の高い人に手渡します。
(左手でバッグの紐を持ち、右手をバッグの底面に添えるようにして渡します)


さて、ミーティングが終わると、あなたは日本のクライアントからディナーに招待されるでしょう。
もちろんディナーの場にも日本特有のマナーがあります。

レストランに着いてすぐに座らないこと。ミーティングの席順と同じように、
ディナーの席でも、誰がどこに座るかあらかじめ決められているのです。
「乾杯」の掛け声を待ってください。それまではグラスに口をつけないこと!
自分のグラスにお酒を注いではいけません。日本では他人のグラスにお酒を注ぐルールなのです。
そもそも、すぐに誰かがあなたのグラスを満たしてくるので、自分でお酒を注ぐヒマはないです。


お酒の注ぎ方・注がれ方
にもお作法があります。

目上の人がお酒を注いできたときは両手でグラスを持ち、目下の場合は片手でグラスを持ちます。
同様に目上の人にお酒を注ぐときは両手でボトルを持ち、目下の人に注ぐ場合は片手で注ぎます。
相手が目上か目下かわからない場合は、グラスもボトルもとりあえず両手で持っておきましょう。
日本人は、グラス・ボトルの持ち方を見ただけで、その場の全員の上下関係を把握できるのです。


次に、お箸 (chopsticks) のお作法ですが、すぐに使えるようになるほど生易しいシロモノではないので、日本人からお箸の持ち方を指摘されてもあまり気にしないでください。
ただ、一つだけ絶対にやってはならないタブーがあることを覚えておきましょう。

お箸をお椀に突き刺したままにするのは、絶対にダメ!
これはお葬式で死者にお供えするときの作法なのです。


ディナーのあと、場所を変えてパーティーが続くことがままあります。
これを “nijikai” といいます。
nijikai の最もポピュラーな場所はカラオケバーです。

「日本の歌を知らない」との言い訳は通用しません。ここには英語の歌がゴマンとあるのです。
あなたは日本人から「イングリッシュソング、プリーズ!」と必ずリクエストされます。
歌がヘタでも気にしないこと。これは歌唱スキルを競うものではなく、楽しんだ者勝ちなのです。


nijikai のもう一つの場所はホステスクラブです。

ホステスクラブでは、ホステスがあなたの隣に座り、軽い会話をしながらお酒を給仕します。
それは彼女らのお仕事 (services) の範疇なので、おかしな勘違いをしてはいけません。
あなたが女性なら、ホステスクラブに連れていかれることはまずありませんが、男性のメンバーが混じっている場合は、あなた(女性)も巻き込まれる可能性があります。


nijikai であなたはすでにクタクタになっているかもしれませんが、恐ろしいことに、このあと ”sanjikai” という名の第3ラウンドが始まることもあります。関係を深める絶好の機会なので、できれば sanjikai にも参加してほしいところですが、どうしても行きたくなければ、断ることも可能です。
断る場合は、行けない理由を礼儀正しく伝えなければなりません。
「時差ボケ (jet lag) がありまして」と言えば、許してもらえるはずです。
 
最後に、「日本人とお酒」について、最も大切なことをお伝えします。

日本では、お酒はビジネスの不可欠要素です。議論、交渉、取引は、お酒の場で行われます。
日本人は、お酒の力でコミュニケーションをとり、人間関係とチームスピリットを深めるのです。
日本では「酔っ払うこと」にネガティブな意味合いはなく、男性も女性もお酒を楽しむのです。
でも、気をつけてください。
昨夜、肩を組んで共に呑んで歌った日本人は、次の日何事もなかったかのように振る舞います。
これは、TPO に応じて振る舞いを変える日本人の “Situational behavior” というものです。
「仕事は仕事」「遊びは遊び」という、華麗なまでの「変わり身の術」こそ日本人のお家芸です。
昨夜の狂乱を引きずることなく、神妙な顔で「昨日はありがとうございました」と言いましょう。


受講生のみなさん。日本に行きたくてウズウズしてきたことと思いますが、本日の講義はここまで。
次回の講義は、日本人のコミュニケーションについて深掘りします。


(追記)
本記事の続き、「コミュニケーション編」(3日目)です。