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韓国に嫉妬する

いろんな国に住んでいると、世界で日本がどう位置づけられているかがよくわかるものです。
私は日本人ですから、様々な国の人たちが日本という国をどう感じているかに関心があります。
その次くらいに関心があるのは、韓国でしてね。

日本と韓国。
歴史的に数々の因縁があり、現在も様々な分野でライバル関係にある両国。
私は、学生時代に在日韓国人の内縁妻がいたこともあり、韓国と韓国人全般に対して親近感をもっているほうだと思っています。

といっても、いわゆる「韓流びいき」ではありません。
『冬のソナタ』に始まった第一次韓流ブームには見向きもしなかったし、現在のビジュアル系韓国アイドルやダンスグループにも興味なし。
ここ数年、韓国の映画やシリーズドラマを観るようになったのは、ひとえに脚本や演出のクオリティの高さを知ったからです。

『パラサイト 半地下の家族』という映画を観たときに、裕福な家の奥さんが貪るジャージャー麺にやられました。

日本にも邪悪で蠱惑的なジャンクフードは数多いけれど、あのギトギト感・ごちゃ混ぜ感・味濃ゆい感は、至高の領域だと感じました。


去年、インドネシアに出張したときのこと。
そこは工場の多い地方都市でした。
ディナーどこに行く?となって、トリップアドバイザーなどを見ます。
出張の同行者は 3人のヨーロッパ人女性で、アジアのグルメに興味津々です。
インドネシア料理のほか、中華、べトナミーズ、韓国料理や日本料理のお店もありました。

翌週中国に移動する予定だったため、最有力の中華が候補から外れました。
日本人の私に彼女らの期待が集まります。
このまちにある日本食レストランはどれも “まがいもん” と私は確信していたので、日本料理だけは避けたいと思っていたのですが。
「ジャパニーズレストラン!」
と無邪気に叫ぶヨーロピアンの声には抗えませんでした。

私は、まがいもんのなかでも最もマシっぽい日本料理店を選びました。
料理の注文も 100% 私に任せられます。
海外にある日本食レストランのテンプレートどおりの品揃えです。
お寿司、天ぷら、ギョーザ、海藻サラダ、やきとり、牛肉のたたき。

マズくはないのですが、これを「日本食」と称して彼女らに食わせていることへの罪悪感が拭えません。
彼女らは「うまい、うまい」と言ってパクパク食べてくれます。
私は、サーモンの握りや裏巻きを見て、こんなのお寿司じゃねえ・・・と言いたい気持ちを抑えていました。


次の日の晩も、レストラン選びは私に一任されました。
私は韓国料理のお店を選びました。
韓国料理店においても、料理の注文は 100% 私に託されます。
ヨーロッパ人からすれば、日本も韓国も同じようなものです。
日本人にとって、ドイツ人とベルギー人の区別がつかないのと同じで。

その韓国料理店もほどよくまがいもんだったので、私でも注文できました。キムチ、プルコギ、サムギョプサル、チヂミ、そしてフライドチキン(?)
これがどれもうまいんだわ。
おそらく、リアル韓国人なら「こんなもんフェイクだ!」と言うのでしょうが、日本人の私にとってはホンモノでもフェイクでもかまいません。
うまいもんはうまいんです。

ね。思いませんか?

特定地域の人しか知らんやろな~

彼女たちも、昨晩より明らかにテンションが上がっています。
「オーマイグッドネス!スーパーデリシャス!!」
ワンダフルチョイスだわ!と私は感謝されましたが、やっぱり複雑な気持ちになりました。
なんだろう、この敗北感。

私は、日本料理のクオリティ、その洗練と繊細さと深みは地球上でズバ抜けていると思っています。
でも、だからこそ、まがいもんには真似できないんだろうね。
フェイクとフェイクが戦ったら、日本の味は韓国に負けるんだね。

辛いものが食べられないはずのヨーロッパ人が、キムチに病みつきになっていました。彼女らには日本のお漬物の美味しさはわからんのだろうな。


韓国の映画やドラマを観ていると、登場人物らが飲んでいるお酒らしきものが気になります。

☟ の記事を書いたきっかけもそれでした。

この緑色の瓶に入った透明の液体は、ソジュという韓国の蒸留酒らしい。
ここスイスにも韓国料理のレストランはありましてね。先日、職場から近い韓国料理店でそれを初めて飲んでみたんですよ。
驚きました。
こんなにうまい飲み物があったのか!

私は葡萄酒や日本酒の深い味わいを好む人間ですが、このソジュは深みなどお構いなしに、ただただうまいのです。
嗚呼。またしても敗北感だ・・・
まがいもんのうまさ、とでも言うべきか。

ホンモノのお寿司やホンモノの日本酒は、とんでもない高みにあります。
それは絶対になくなってほしくない。私は日本人としてそう願います。
でも、そのケタ違いクオリティは、ノンジャパにはわかるまい。
わかってもらう必要はないのかもしれませんが。
この世界からホンモノがなくなっていったときに、日本はほどほどの品質で勝負できるんだろうか。なんてことを考えさせられました。

スイスにも日本料理店はありますが、スイス人に人気なのは韓国料理店のようです。

韓国料理店でまったりランチを過ごすスイスの働く女性