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ママが酔いつぶれたっていいじゃないか

香港で今日、とあるコンサートがあり、妻はその打ち上げに参加していた。
 
5歳の次女が「ママおそいね~」と何度も言った。
10歳の長女は落ち着いている。
 
11時ごろ、玄関のチャイムが鳴った。
やれやれ相当呑んだのかな、と思いながらドアを開けると、見知らぬ日本人女性が妻を抱えて立っている。
「〇〇ちゃん、酔っ払っちゃいまして・・・」
即座に状況を把握する。
 
女性から妻を受けとる。立ってられない重症だ。
親切な女性に丁重にお礼を言い、ドアを閉めた。
 
長女と次女が固まっている。
こんなママを見るのは初めてだろうな。
パパは初めてじゃないけど・・・
ここまで酔いつぶれた彼女を見るのは何年ぶりかな。
 
靴だけ脱がせて、寝室に運び込む。
次女が、ママ、ママ、と声にならない声でついてくる。
長女は、なにやら考え込んでいるようだ。
 
ベッドに寝かせて、だいじょぶ?と声をかけた。
妻は、こどもたちは? と言った。
元気だよ、と答えた。
見られたくない・・・と妻はつぶやいた。
 
ばーか。
いいんだよ。
娘たちにかっこつけてどうすんだ。
 
ママを寝かせてあげような、と言うと、次女のさとは、ひとりでシャワーに行った。浴室のドア越しに耳をすますと、歌いながら水遊びしている音が聞こえた。
 
長女のかずは、ソファに座ってボーっとしている。
かずに言った。
ママは楽しかったんだよ。
(おまえも大人になればわかるさ)と思いながら。
 
明日の朝、妻は強烈な自己嫌悪に苛まれるのだろう。
私は言おうと思う。
母であるまえに、おまえはおまえだ。
今度は一緒に酔いつぶれようぜ。
あの頃のように。