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どんなメールを書いていますか?

まだアジアロード中。今は中国広東省にいます。
支払い問題(VISAやMASTERカードが使えない)や、インターネット問題(GoogleやYouTubeやAmazonにアクセスできない)は、かなり死活的な問題ですが、そんなことはさておき。

この長期出張中に、オンライン研修を受けるスケジュールが入っていましてね。
Teamsはかろうじて使えるので、出張中ではありますが、とある研修に参加しました。その研修とは、非日本人向けに日本人の特殊性をレクチャーする異文化研修の上級コースです。
初級コースのことは以前の記事に書きました。

さすがに上級コースだけあって、具体的な仕事のシチュエーションにおける実践的なノウハウが伝授されます。ディープすぎて、ここにすべてを書くことはできませんが、この記事では、ケーススタディの一つを共有することにします。

設問の和訳☟

✅あなたは、国籍もロケーションも異なるプロジェクトメンバーとリモートで仕事をしている。
✅メンバーの一人に対して、あなたは大きな不満をもっている。
✅彼(女)は、プロジェクトチームがキックオフ時に合意した情報共有や納期などの基準 (criteria) を守っていない。
✅彼(女)の仕事ぶりはあなたの仕事にも支障をきたすので、あなたがその不満を彼(女)に伝えなければならないことは明らかである。
 
この問題を挙げるために、彼(女)宛てに、短いメールを書いてください。
前提)あなたと彼(女)は役職的に同等のポジションとします。また、あなたは彼(女)と面と向かって会ったことはないものとします。

この練習問題、何を学ぶためのものだと思いますか?
勘のいい人はピンときたでしょうが、low context と high context の違いを学ぶための演習なのです。

low context の文化圏はドイツやオランダが典型ですが、物事をはっきり言葉で言う、直接的でストレートな表現が特徴です。
かたや、high context は日本が世界ランク 1位で、はっきり言葉にしない、相手の気持ちに配慮した、遠回しでオブラートに包んだ表現を好みます。
 
さて、この練習問題で研修の受講者たちが書いたメールは公表できませんが、講師が提示した良い例と悪い例をお見せしましょう。

EMAIL 2は、low contextな人が書く例。
EMAIL 1は、high contextな人が書く例。
 
和訳します。

EMAIL 2
「プロジェクトの基準が守られていない件」
Dear ___,
急を要することなので、本件について手短かつ率直に伝えます。
このプロジェクトに対するあなたの働き方に、私は大きな失望と不満を感じています。プロジェクト開始時に合意した基準をあなたは全く満たしていません。私たちのゴールを達成するため、あなたはもっとプロフェッショナルな姿勢でこのプロジェクトに取り組むべきです。さもないと、私たちは深刻な問題に直面します。本件について明日話しましょう。そのときに私の言いたいことをはっきりと説明します。では、明日の14時に連絡します。

EMAIL 1
「一緒に始めましょう」
Hello ___,
あなたのすばらしい働きに感謝しつつ、このメールを送ることをうれしく思います。ご存じのように、私たちはこれから共に働きます。プロジェクトが始まった今は大切な時期で、私たちの仕事をより良いものとするために共有すべき情報があります。共に働く中で素敵な時間を共有したいと思います。一緒に頑張れば、私たちは新しく始めることができるでしょう。
私の電話番号はxxxxxxです。いろいろとお話しできる時間がありましたら幸いです。 

あなたは、どちらのメールが好きですか?
正直なところ、私は、EMAIL 2のほうがマシだと思いました。攻撃的な印象を受けるので、好きとまでは思いませんが、言いたいことがわかりやすい。
EMAIL 1のほうは、私の和訳が拙いこともありますが、何が言いたいのかよくわからないのです。このメールを読んで、「あ、もしかして私の仕事に不満があるのかな」とわかる人っているのでしょうか。

EMAIL 2 であれ、EMAIL 1 であれ、こういったショートメールがコミュニケーションの肝になっていたり、あとあと無用な仕事やメンドクサイ感情を生み出していたりしませんか。

この研修はその後「日本人に対しては、表情が見えない、話し方(トーン)が伝わらない e-mailは危険ですよ」という結論にもっていきました。
 
一理ありますね。
でも私は、時間を拘束されない、考える時間を与えてくれる e-mailが好きだな。

(追記)
山林さんのコメントを受けて、研修スライドを追加しました。

誰もが薄々感じていることだと思いますが、このように整理されると、ケースバイケースでコミュニケーションの方法を適切に選択することの重要性がわかるのではないでしょうか。