思い出すことなど(98)

翻訳に関する思い出を「思い出すことなど」と題して、色々と書いていきます。今はだいたい1997年頃の話です...

その後は、編集担当のNさんから原書が届くのを待っていた。ところが、これがなかなか来ない。Nさん(本当に真面目でいい人)は時々、連絡をくれた。「まだなんですよ、すみません。もうしばらくお待ちください」「わかりました」そういうやりとりが何度かあった。作業が始まる前に、もう一度くらい、出版社の方にも行ったような気がする。何の用事かは忘れたけど。結局、飲み会のために行ったような気も(飲めないけど)。

ようやく原書が届いたのは、半年以上経ってからだったと思う。なぜ、そうなったのか、当時の事情はもう忘れてしまった。出版が遅れたのか、それとも向こうの版元が単になかなか送ってくれなかったからなのか(そういうことは結構ある...)。いずれにしろ、着手は結構、あとになった。Nさんは平謝りだった(最初、ひらやままりって打っちゃった...誰だよ、それ)。「本当に申し訳ありません。ようやく着手していただけます」「よかったです。ほっとしました」

Nさんは悪くない。だけど、立てていた予定というものがあるので、結構、困ってしまった。だいたいこのあたりで作業をすればいいかな、と思って、時間を空け気味にしていたけれど、それは意味をなさず、思いがけないタイミングで「これから着手」ということになったからだ。急に時間は空くものではない。また実際、仕事を始めてみたら、思いがけない(しかし、よく考えてみたら当たり前の)理由で、作業がとても難航することになった。

―つづく―

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