思い出すことなど(55)

翻訳に関する思い出を「思い出すことなど」と題して、色々と書いていきます。今はだいたい1995年頃の話です...

いやいや「いくらほしい?」って...「お前はクビだ」に続いてベタすぎて実はあまり言われないセリフシリーズやんか。ドラマや映画以外でこんなセリフ、言われたことのある人いますか。何このジェットコースター人生。

この場合、どう答えるのが正解か、わかる人いますか。私はいまだにわからない。「いくらなら払えますか?」という逆質問も今なら思いつくけど、若造が言うとちょっと生意気すぎて反感買うよなあと思う。今はおっさんなので言うかもしれない。

この質問への答えが難しいのは、ご承知のとおり、「相場がわからない」からだ。知らずに非常識に高いことを言ってしまうと、あきれられてその後に悪影響を及ぼしそうだし。反対に非常識に安いことを言ってしまうと大損になる。どうしたものだろう。考えあぐねていると、プロデューサーが、

「もう赤字だからね。あんまり高いと払えないよ」

と釘を刺してきた。

そう言われても、高いとはどのくらいなのかがわからない。しかたない。ここは自分の相場観で答えるしかないだろう。一日いくらだったらいいのか、何日働いたのかで考えよう。日給1万円くらいならそう文句はないよな...そう思って、

「7万円ならどうですか」

と言ってみた。

「そうか、まあいいよ、それで。請求書出して」

ああ、よかった。本当に言い値かよ。でも結局、得をしたのか損をしたのかは永久にわからないままだ。多分、後者だと思う。なんとなくわかる。

番組はNHK-BS1で放送される予定になっていた。もしかしたら総合テレビでも、という話だった。おお、いきなりNHK、すごいことになってきたぞ、これは。

実際、放送されたのがNHKだったため、この仕事には思いがけない効果があった。自分としては予想もしなかった嬉しい効果だ。

―つづく―

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