思い出すことなど(96)

翻訳に関する思い出を「思い出すことなど」と題して、色々と書いていきます。今はだいたい1997年頃の話です...

後日、本当に I さんからメールが届き、正式に出版社に紹介してもらえることになった。しばらくすると出版社の編集長からもメールが来た。何度かのやり取りがあって、挨拶に行く日が決まった。確か、一週間後くらいだったと思う。

さあ、どうしよう。とにかく、信頼してもらわないといけない。ちゃんと知識があり、力があると思ってもらわなくちゃ。翻訳には自信があったけれど、問題は知識の方だ。コンピュータ、ソフトウェアの基礎知識は一応、あったけれど、肝心のJavaのことはよく知らない。一週間では、本当の知識などつくわけはない。しかたない。とにかく、できる限り、関連する文献を読んで情報を詰め込むだけ詰め込まないと。最後はハッタリしかないだろうなあ。ハッタリって...大丈夫だろうか。

じっとしていてもしょうがないので、書店に走る。改めて棚を見てみると、Java関連の本はたくさん出ていた。よく知らないのだから、どの本がいいのかなんてわかるわけはない。初心者なのだから入門書しか理解できないだろう。目についた本は片っ端から買おう。これはだいたいいつものやり方。どれが役に立つかはわからないので、買えるだけ全部買ってしまう。どれがいいかはあとでわかってくる。10年後かもしれない。また、矛盾するようだが、焦って早くたくさんのことを身に着けようとすると失敗する。回り道のようでも基礎からじっくりと覚える。時間がないからこそ。

よくわからないながら、「おお、これは!」と思う一冊もあった。掌田津耶乃氏が書いた『愛と青春のJavaプログラミング―初めてのJava奮闘記』という本。ただ、解説文とプログラムコードが書いてあるだけでなく、漫画が載っていた。どうやら、この漫画の主人公と一緒にJavaを勉強していく、という内容みたいだ。これはどこかで見たことがある。そうだ、学研の「ひみつシリーズ」だ。子供の頃に散々、お世話になったシリーズと同じなのだ。これなら大丈夫かもしれない。

実際、この本にはものすごく助けられることになった。

―つづく―

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?