思い出すことなど(89)

翻訳に関する思い出を「思い出すことなど」と題して、色々と書いていきます。今はだいたい1997年頃の話です...

やっと、本当にやっと、すべての数字が出揃った。しかし、まだ安心はできない。むしろここからが大変だ。数字を用紙に記入しなくてはいけない。今は国税庁のWebサイトにシートが用意されていて、そこに打ち込んでいけばいいのだけれど、当時は全部、手書きだった。持っている用紙は一枚だけ。書き損じは許されない。

子供の頃から手で文字を書くのが何より苦手だった。嫌いなのだ。だからノートもまともに取ったことがない。学校に持っていっていたノートは最初の方だけしか使っていなかった。あとは落書きばかり。色々落書きしたなあ。サインの練習したり(恥)、漫画のキャラクター描いたり。あとは立体に見える文字の練習とかもした。ばかみたい。

たぶん、これまでに書いた文字の量は、普通の人の1/10以下だと思う。そのせいなのか、ものすごい悪筆だ。これはどっちが先かわからない。あまりの悪筆が自分でも嫌で、それで字を書かなくなったのか、それとも文字を書いた経験が少ないから練習が足りないのか。その両方か。たぶん、両方だな。

いきなり書き込んでも失敗するのは目に見えている。だから、まずは下書きをした。チラシの裏に書く。それを「控え」の用紙に写す。控えも手書きだったんだよなあ。そしていよいよ本番。さて、どうなる。

結論から言えば、これが書き損じをせずにすべて記入できたのだ。奇跡。いやあ、本気出せばできるね。俺だってやるときゃやるのよ。底力が出た。問題は年中底力を出していたらとても生きていけないということ。底力を出した時だけ一応、まともな人間になれる、なんてねえ...

―つづく―

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