ムガベ

2000年以後にジンバブエのことが、ニュースで目にとまるようになりました。

内容はハイパーインフレ、独裁者による人権弾圧、白人の持つ土地の強制収容、クーデターと、私の見た報道では国のイメージを低下させるニュースばかりが目につきました。

この前に図書館に行くと、石原孝著「堕ちた英雄・『独裁者』ムガベの37年」というムガベ元大統領の軌跡と2017年から2019年ごろのジンバブエの社会状況を書いた本があり、借りて読みました。

石原孝氏の文章はムガベやジンバブエの政治家、そしてインタビュに答えてくれた一般人の経歴や感情をわかりやすくまとめていて、ムガベの生い立ちからムガベ失脚後の2019年までのジンバブエの政治と経済がどうなってるか、さらりとわかりました。

政敵や反対勢力の弾圧、経済悪化で苦しむ人々、2度目の妻との贅沢三昧の生活、希望を失くした国民の国外脱出、ニュースで見たムガベの政治的な失敗が「堕ちた英雄」でも詳しく書かれていて、ムガベの評判の悪さに裏付けのあったのがわかります。

一つだけムガベの政治家としての功績が書かれていました。

それは教育の充実です。

ムガベによって教育予算は拡充され、1992年時点でジンバブエの15歳〜24歳の識字率は95%に達したと本書で記述されてます。

グーグルでジンバブエの今の識字率を検索すると、2022年時点で15歳以上の識字率が89.8%、サブサハラで突出しているとグーグルAIが答えてくれました。

ChatGPTに聞くと2022年のジンバブエの成人識字率は93%、サブサハラ地域の成人識字率は68%、ジンバブエの識字率がサブサハラ地域で突出してるのは事実のようで、この数値はムガベの功績と見てよさそうです。

しかし、教育を拡充して成人の識字率を向上させても、教育を受けた国民が活躍できるような産業を育成せず、逆に経済を悪化させて人々の日常生活を困難にしたのはムガベの失政でしょう。

ジンバブエが独立した時に、良い未来が来るとジンバブエ国民は期待し、その期待をムガベは裏切ったわけです。

だからムガベは国民から嫌われているかと言えば、そうでもないようです。

ムガベ失脚後にジンバブエ国民に話を聞き、ムガベに感謝し尊敬するジンバブエ国民が意外に多いと石原氏は記述してます。

白人政権と激しい闘争を経て、人種差別から黒人を解放し、黒人の主権国家を成立させたこと、世界にアフリカの声を届けたこと、これらの理由によってムガベの欠点は認めながらも、ムガベを英雄として讃え感謝する人が多いと「堕ちた英雄」に書かれてます。

ムガベは弾圧と贅沢をやめなっかた独裁者ですが、植民地支配からの独立のために先頭に立って戦ったのは事実で、弾圧と贅沢より解放闘争の功績を評価する人が多いのは、それだけ植民地支配がジンバブエ国民に与えた心の傷が深いということでしょう。

もちろん、ムガベを英雄視する人がいる一方で、ムガベを非難する人もいて、それらの人の意見も「堕ちた英雄」で記述されてます。

ムガベを評価する人がいる理由がもう一つ書かれていました。

ムガベの次に大統領になったムナンガクワより、ムガベの方がマシだと語る人がいると本書で記述されてます。

この意見に賛成はしませんが、ムナンガクワの政治がうまくいってないのは事実でしょう。

「堕ちた英雄」が出版されたのは2019年10月で、それから4年半経ちますが、ジンバブエの混乱がまたヤフーニュースに出ました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c881a376c1d9f0e254f5e358156591e9a5b6b

ジンバブエでは4月30日から「ジンバブエ・ゴールド」という新通貨の配布が始まって、早速混乱が始まってるとヤフーニュースで報じてます。

新通貨発行がジンバブエの経済成長の助けになるのか、混乱が収まらず「ムガベが大統領だったころの方が良かった」と言う人が出てくるのか、今後が気になります。


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