3月12日 わたしのブラッシュアップライフ

スマートフォン用のイヤホンが壊れてしまったので初めてBluetoothイヤホンを買ってみた。ワイヤレスイヤホンの良し悪しが分からないのでとりあえず2000円くらいの安いやつをお試しで買ってみた。

実際使ってみると、ベースがよく聴こえ、おお、こんな安いのにローが聴こえるなんてすごい。いい買い物をした、と最初は思ったのだけど、しばらく聴いていると、ほとんどローしか鳴っていないことに気づいた。
ローが鳴りすぎて常に"ぶおーん"と妙な音がして、高い音はほとんど聞き取れない。

ラジオを聴くくらいなら気にならないが、音楽を聴くにはちょっとしんどいかもしれない。
否、ラジオでも、元々声が低めの人、例えばオードリー春日さんの声のロー部分が強く押し出されすぎて、吐息混じりのイケボじじいが喋ってるように感じてしまう。

春日さんの歌う「万の札になって」も良い声に聴こえすぎてしまって気持ち悪い。ちょっとだけわざと下手に歌う春日さんの技術のキモさが際立ってとても辛い。

イヤホンひとつでラジオの楽しさが変わってしまう。次はもう少し良いものを買おう。

バカリズムさん脚本のドラマ「ブラッシュアップライフ」が面白い。もしわたしが今日死んで、あの真っ白な空間のあの受付にあのバカリズムさんがいて、
「35年間お疲れ様でした。右のドアを開けると来世になります。来世は"南アフリカのノミ"になります。いってらっしゃいませ」
と言われ、麻美と同じように"今世をやりなおす"ことを選択した場合、わたしはどんな風に2周目を生きるだろうか。

麻美と違って、わたしは保育園時代や小学生時代の記憶がほとんどないので、幼少期はあまり2周目感を味わえないかもしれない。

わたしが2周目感をしっかり味わえるのは高校あたりからだ。幼馴染に突然告白されて、それほど好きでもなかったのになにも考えずOKした最初の恋人には失礼なことをしたので、それはやり直したい。
やり直す、というか、しっかりと終わらせたい。

付き合って1ヶ月くらい経ったある日、夏祭りに一緒に行く約束をしたのに浴衣を着た写真を添付されたメールで「似合う?♡」と聞かれ、怖くなって音信不通にして別れた一番最初の恋人。
「青春しようとしてるじゃん」と思って何故か怖くなってしまった。謎すぎる。相手からしたら本当に意味が分からないと思う。名前も顔も忘れた最初の恋人。

その後の人生はどうしよう。
音楽の専門学校に行ってまた元の相方と音楽活動をするのはいいかもしれない。というかやりたい。
(当時2人組のCHEMISTRYみたいな、ゆずみたいな、ユニットをやっていた)
わたしはなんといっても人生2周目で、1周目でやってきた数々の失敗をある程度は未然に防ぐことができるはずだ。
2023年を知っているわたしは、YouTubeチャンネルを作ることを相方に提案するだろう。
…うーん、YouTubeって当時からあったのかな?今35歳なので音楽をやっていたのは20歳で、ということは2008年くらいだ。
オードリーがM1で準優勝した年だ。
1周目のときは確か"魔法のiらんど"でホームページを作りライブ情報やブログを書いて、曲は"myspace"というサイトに上げていた気がする。

調べるとYouTube自体は2005年から存在していたらしいが、まだまだメジャーじゃなかっただろう。
当時の我々はライブをしてもお客さんが2人くらいしか居らず、チケット代を自分達で払っていた。曲数はそれなりにあったのに、マネタイズする方法が全くなかった。
2周目でもマネタイズできないのは変わらないだろう。

成功するかどうかは正直全く分からない。勝算はない。
1周目の"失敗"という唯一の財産を元に、1周目以上の努力をしたらもしかしたらうまくいくかもしれない。

これは絶対ダメだけど、2023年にヒットしてる曲を2008年に「わたしが作りました」と言って発表しちゃうこともできる。YOASOBI、藤井風、米津玄師、上野大樹あたりの曲を使えばどれかしらは人気出るっしょ。
よっしゃよっしゃ。ガハハ。

でもこの方法は反則すぎるし、地獄堕ちになりそうだからやめておこう。


あと2周目の利点として、専門学校の先生の全てのアドバイスを真に受ける必要がないことが最初からわかっているのは大きい。
とある先生に「歌うときは必ず目を開けなさい、"歌の力"というのは目から発するから目を閉じるのはダメ」と言われたことがある。
わたしは「せやろか?」と疑いつつもしばらく目を開けて歌を歌っていた。
でも、それで"歌の力"が伝わっている感触もなければ、丁寧に表現したいバラードを歌っている時、それまで目を閉じていた場面で無理矢理目をこじ開けた結果、抑揚のない淡白な歌になってしまって、途中で"目を開けて歌ってもいいよね"という結論に至った。

2周目で「歌うときは必ず目を開けなさい、"歌の力"というのは目から発するから目を閉じるのはダメ」と言われたらわたしはこう言うだろう。

「歌を歌う人の中には目の見えない人もいます。例えばスティービーワンダーですね、彼はサングラスをしていますが目を開けて歌っていると思いますか?」

先生は言う。「あ、開けてるんじゃないか?」

わたしは言う。「盲目の人にとって目から得れる情報はありません。おそらくですがスティービーワンダーは視力以外の全ての感覚を総動員させて音楽を奏でていたのではないでしょうか」
続けてわたしは言う。「目を開けていないといい歌が歌えないというのは、"あなたの感想ですよね?"」

先生「あぅ」

スナ村ひろゆき爆誕である。先生に見えないように麻美と同じようにグーサインを作る2周目のスナノ。


そして、ブラッシュアップライフでは描かれていない描写だが、1周目と同じタイミングで病気をするのだとしたら、首の病気をした2018年(31歳)と網膜剥離になった2021年(34歳)2022年(35歳)はほぼ稼働できないので音楽活動はできない。
そうなると、若い時にしっかり売れていないと相方に迷惑がかかりすぎてしまう。そんなうまくいくか?

2周目といえど売れた経験はないわけで、どこかで壁にぶつかるのは必然だ。ブラッシュアップライフの福ちゃんを見ていると胸が苦しくなる。"売れないミュージシャン"という言葉の響きは苦しい。泣けてしまう。

しかもわたしの相方は1周目の現在の時点でYouTubeで成功しかけている。それを考えると2周目でわたしが1周目より頑張ることで今の相方の成功しかけている状態が無しになってしまうのだとしたら、それは最悪の事態だ。
それならば大人しくわたしは"南アフリカのノミ"になることを選ぶ。




今日ブラッシュアップライフの最終話が放送される。こんなに夢中になってドラマを観るのは本当に久しぶりだ。
ブラッシュアップライフの制作に関わる全ての人に感謝します。

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