2月20日 総務省接待事件の行方は

【今週の出演者】(敬称略)
司会:
山口一臣(「THE POWER NEWS」代表、元「週刊朝日」編集長)

コメンテーター:
伊田浩之(『週刊金曜日』企画委員、Web編集長)
水野誠一(株式会社IMA代表取締役、元西武百貨店社長、元参議院議員)
孫崎 享(評論家・元外務省国際情報局局長)

総務省の秋元情報流通行政局長は衆議院予算委員会で、菅総理大臣の長男と去年12月に会食した際、放送業界の話題が出たか、また長男が勤務する放送事業会社「東北新社」の事業や「BS」「CS」といった言葉のやりとりをしたかどうかを問われましたが、すべて「記憶はない」と答えました。野党は週刊文春が公開した当日のやりとりとされる音声に基づき、答弁が虚偽である疑いを指摘し、調査と回答を与党側に求めました。(東京新聞18日朝刊3面ほか)

山口
週刊文春の記事。関係者へのインタビュー、要するに総務省にお土産一つ持って行っても受け取ってもらえなかったが、やってもらえたのは菅長男だからじゃないかと。

孫崎
毎日新聞の社説。長男が役員を務める囲碁将棋チャンネルは…16社のうちハイヴィジョンでないのはほかになかった。審査基準はハイヴィジョンを進めるために改正されたばかりだった…もし菅長男というものがなかったら認められないです。

山口
菅長男であり、元総務大臣秘書官。

孫崎
親しみを増すために食事したわけではなく、本来認められないものが認められたことが重要。もう一つ、いくらお金をもらってるかわからないが、菅の支部に500万の金が流れている、東北新社から。そのバーターのような形で、本来事業としてできないものに入りこめたという構図をフォローしたい。

伊田
東京地検は動かない?

孫崎
動きません(笑)。日本の検察は政権のイヌです、申し訳ない。
落ちた犬は叩く、これはやるわけです。でも本当に力がある人にどれくらい歯向かえるか。2ちゃんねるを見ると、現政権には歯向かわない。

山口
捜査機関ではなく世論と報道の力が試されている。

伊田
ノーパンしゃぶしゃぶ事件もあったが、絶対アウト。

山口
昭和時代のわかりやすいワイロ。

孫崎
でもトカゲのしっぽ切をやられる。本家は菅さん、菅首相がいなければこの問題はおこらない、そこに焦点を当ててほしい。

山口
最初東北人の集まりみたいな話、料金は会社が出していた。まずいですよね。

水野
そういうことを言い出せばそもそも破綻しているが、深刻なのは要件を満たしていない会社がどうしてできたのかというところ。接待はよくある話、ノーパンしゃぶしゃぶ事件でもあのあと役人を招いてもじっと待ってる時代が少しあった。今回の問題も東北新社が常識的な範囲の中での付き合いだったのか、利権にからむ問題だったのかをもっとちゃんと掘り下げていくべき。下手に行けばトカゲのしっぽ切で終わってしまう。

孫崎
東北新社グループの650億の売り上げのうち衛星放送事業が150億。しかし本来基準からいえば認可されない。でも菅が入って認可されたというのが本質。

伊田
秋田から出てきて横浜、東北人の集まりって息子は東北人じゃない、別人格なんだから。

山口
国会で別人格、プライバシーの問題とまで言ったが、ホントに長男が長男じゃなかったら総務省トップが来るか?

孫崎
絶対に行かないです。

山口
総理の息子だから。

孫崎
通産省に出向したとき言われたのは、なぜ実権が課長にあるか、必ず政治的圧力がある。左遷される。課長もされるが、まだ20年くらいあるわけです。左遷されたのがある種のシンボル、勲章みたいになる。でも長官や次官は左遷されたらそれで終わり。ということで権限をできるだけ下に下げる、これがある時期までの霞が関に知恵だった。

山口
菅は総理就任時から意向に従わない官僚は飛ばすとはっきり言ってる。そういう人がトップにいてその息子から呼ばれて。

伊田
最初届けてなかった。後ろ暗かったんでしょう。届けてれば問題にならなかったかも、許認可権の話は別ですが。

孫崎
総理の圧力であるべき姿が歪められてるというものに対して総務省の中に反発する人もいるんでしょうか。

伊田
こんな情報中からじゃないと出てこないでしょう。いくら文春に力があるといっても、隠しマイクまで。どう考えるか、省内の勢力争いか正義からなのかわからないが。

水野
係長くらいまでは志に燃えて言いたいことをいい、革新的。ところが課長になると急に人が変わる、ということが私の体験ではある。そういうことを言われても先生困りますと。それが霞が関のシステムなんですね。責任を取らされるが上にも下にも責任が及ばない。今回はそういうルールが破られているのが特徴的。菅がつくった内閣人事局という仕組みに問題のすべての根源があると思う。局長クラスでも面白くなければ変えられることをやってきた恐怖政治が根底にある。そこまで問題を突き詰めないと。

伊田
霞が関を目指す優秀で志を持った人が多いと思うが、赤木さんモリカケで志望者が減り退職者も増える。国の体力が落ちる。

孫崎
やめてからもオゴってるんです。ポストを外されるだけじゃなく、一人の人間として生きているとき、自民党の政治の中で孫崎というものにちゃんとした扱いをしないようにするというものが起きている。ものすごく根深いです。人事局だけじゃない。

伊田
政治家は有権者に選ばれた、我々が…

孫崎
役人の在り方を議論すると…国家公務員人事法とか憲法とか、特定の人間じゃなく全体の奉仕者。それに対し政治家は選ばれてるんだから我々の言うことを聞けという。そういうときにあるべき国の姿から指示してることはほとんどない、個人の利益に基づいている。だから気を付けてみてほしいのですが、政治が公務員に優先するのはそれはそれでいい。しかし政治家が公務員に指示するときは、大所高所からではなく、9割ぐらいは個人の利益と密接に結びついている。

山口
恐怖による支配は、抑止力としては弱いイメージがあるんですが。

水野
それは明らかにそう。大きな企業の中に第二の菅みたいな人がいると、そういうやり方はどっかで破綻してしまう。どっかに不満が発生するということになると、やはりちょっとした蟻の一穴じゃないけどそこから情報が洩れる、考えられないような事件が発生するということに必ずなってしまう。企業は下から上までが一つのワンチームになって動いていくことがないとだめですね。その時に大事なのは忖度して上司のいうことすべてOKというワンチームでは駄目、議論もあり戦いもあり、でも一つの目的のために力をつけていこうとみんなが社長を応援する体制を作っていく、大変な努力が必要だがそれができている会社は強い。

孫崎
企業と公務員の違い、企業はおかしくなったら潰れる。潰れちゃいけないというのが最低限ある。でも国家にその様子はない。潰れるような国になっちゃってる。企業は本当にあっという間につぶれるから止める力があるが国はどこまでもおかしくなっていく。

伊田
それで1945年を迎える。

孫崎
そういうことですよ。

山口
日本という国の組織力がどんどん弱まっていく、ワクチンも作れない国に。

伊田
国土強靭化ってダムとか道路とかじゃなく基礎研究にお金を回さないと。

山口
もともと長男は総務大臣になったとき無職でプラプラしてたので官僚との接点を持たせ、その後関連企業に入れた。その長男がタクシー券やお土産を持たせた。そういう話なんです。皆さんちゃんと認識してください。

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