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神様を信じる強さを僕に(『天使たちのシーン』©小沢健二)

『ぼくの地球を守って(©日渡早紀)』を読んでいて、米国文学「シェーン・エア」を憶いだした。「シェーン・エア」はメルクマールだとは思うが、"名作"とは思わない。お薦めもしない。必要なヒトは読むのでしょう。

「シェーン・エア」の中では、『神に仮託して愛を語る男』がでてくる。そして"ぼく地球"では、『運命に仮託して愛を語る男』が出てくる。無論、これらは当時の時代背景を踏まえる"当て擦り"・当て馬の類であり、結論を言えば、物語を追うにつれ、これらは徐々に退けられていく。とはいえ今でも、或いは今だからこそ、この手の男、いわゆる、大いなるものに仮託して、マスターベーションする依存癖のある男、というのは後を絶たない。

小沢健二のいう『神様を信じる強さ』。彼は、"神がいる"とは言わない。信仰を強制しない。言い方を換えれば、『神の存在証明』とは、"神を疑う"という心性の、その地平を提供する"足場"こそ『神』と呼ぶべきもので、これはニーチェの謂う『神は死んだ』の"反語表現"と矛盾しない。素朴に"神はいない"、と回避してしまう心性は危うい。自然界にありがちな、"Hot spot"の見せる"偏り"に(≠『整然としたバラバラ』=人為)、簡単に『神様』を見出してしまう。これは、奇跡があり得ることを、経験則・悟性として踏まえる医者のほうが、そうでない者に比して、遥かに健全であることと似ている。質の悪いノンフィクションより、良質なフィクションが有意義であるように、リアリズムを振りかざすことが、即ち"actually"であることとは言えない。

"ぼく地球"では、この『神の存在証明』を(作中でいう"サージャリム")徹底してやっている。作品内では、"信仰を強制される抑圧"からはみ出してしまう者の救済、ではなく、ヒトがその"内なる光"を託す宛先として、『神』を呼び出していくさまを、真反対から逆照射することで、アイロニカルに浮かび上がらせていく。無論そのウラには当時の新興宗教ブームや、それに連なるニューエイジブームがあり、"ここではない何処か"を夢見て集う若者と、その"期待外れ"感の蔓延による、"鬱"な厭世感に浸されるナイーヴさを共有する、"キャッチャーインザライ"の側面があった。"ぼく地球"を読み『前世の仲間』を募る若者が、一緒に自死をするという事件が多発し、作者は連載誌面上で、"これはフィクションです"、という宣言を余儀なくされた。ナイーヴさゆえに、"当て擦り"を読み取ることなく、順接に反応してしまった結果といえる。

これが、"急な環境変化に伴う、過渡期に陥りがちな昔話"、で済まないのは、アドラー / ラカンの二項還元図式として、今でも脈々とコロラリーを引き継いでいるよう思え、かつ"当て擦り"を読み取る能力は、当時より遥かに劣っていると感覚するからだ。

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福岡伸一センセの言う"sense of wonder"と、ブッティズムの言うアートマンと、アインシュタインの言うスピノザの神と、我々の親しむ八百万の神(≒九十九神)とは、"ほぼ同じもの"で、西洋眼差しで『アニミズム』と格下に回収するのは"間違い"といえる。

哲学的ゾンビとシュレディンガーの猫は、全く違う分野でありながら、とても良く似た地平を共有している。哲学的ゾンビは、唯物論への"起無仮説"として生まれ、シュレディンガーの猫は量子論への"批判的"な足場を提供する。両者とも、総じて『悪魔の証明』に陥っている可能性を告発しており、その意味で共に"whistle whisper"を引き受けているといえる。これがマージナルマンが駆動させる、"match pump"に過ぎないマボロシなのかどうかは、ひとりひとりが判断していくほかない。

喩えるなら、"潜在的核保有論"がマボロシ(=利権)なのか、『潜在的核保有論』が在ると言い募る"IAEAによる査察"がマボロシ(=利権)なのか、もはや誰にもわからない。マッチポンプが駆動することで、プロ倫的"桶屋が儲かる"を経由し、大分以前から、『虚』が「実」を浸食してしまっている。このコロナ禍で、"セキュリティー不安"に寄り添う『防犯』利権や、大手既成メディアによる、"自粛警察"が存在する"という埋め込みや、CCC(Cash Conversion Cycle)の徹底に伴う在庫圧縮傾向を"マスク買い占め"と言い換えるさまを、見てきたように、我々はもう既に、"胡蝶の夢"のただ中にいる。

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