'ghost'の在りか

ネコを飼っていると、通称"デビルフェイス"と呼ばれる'顔つき'に出くわす。"出くわす"、というのは、意図してそれを'させている'わけではない、という最低限の'親心'に発している。

"家出少年"保護してる

白アッシュの長毛種かつ去勢済オスなので、傾向として、穏和かつ甘えん坊なのは、巷間いわれる通り。保護猫という履歴も関係するのか、弱いものには強く、強いものには弱い。考えうる限り、この世で最も姑息に、卑怯な戦い方をする。そして彼がきてから、ウチではめっきり虫をみなくなった。相関あるのかは‥よくわからない。"穏和"で"甘えん坊"は、愚鈍で臆病にも換言出来る。それでも換毛期のフェルト除去や、爪切りの際に、あの"デビルフェイス"に出くわす。

あとひとつ何かしてきたら、'ヤッてやる'。

ネコの本心は'本猫'以外判らないが、概ねそんなとこだろう。踏み越えたことは、未だ無い。

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わたしがこの世で一番嫌いな「言葉」はと聞かれたら、反射的に『教育的指導』に照準する。注釈すれば、"嫌い"というのが重要で、フォビア[phobia:恐怖症]を多分に含んでいる。履歴に埋まる負の感情を、多分に読み込んでいて、フラットにこの言葉を飲み込んではいない。その意味でこれは"好/嫌"の話であり、"正/誤"の地平にはない。

リモート教育の不可能性と不可避性

時に、"AI"の、発展・普及が進んでも、おそらく"無くならないであろう職業"が話題にのぼる。『職業』の内側の更新はあれど、その劈頭に推挙されるのは、"教師"だろうと思っている。この長引くコロナ禍で、"remote"による教育の、不可能性と、その不可避性が顕わになりつある。コロナ禍が収まっても、様々な要請から、"remote形式"の教育形態は、不可避的に進む。一方で、従来の、対面形式に自明に埋め込まれていた、"教師"による、属人格的な'補強の枠組み'は脱落する。

権力とは'非対称性'の謂

権力理論一般に流通する『パノプティコン[panopticon:一望監視施設]』という謂がある。簡単にいえば、ペーパーテストを実施する時、教師ひとりで監督をしなければならない場合、クラスのどの位置に居るのが合理的か。

答えは、教室の後ろ。

"黒板"に向く、進行方向後ろ側から、一様に監督するのが是とされている。これは観念モデルなので、実際にそのように適用し運営するには、前提としてかなりの少人数である必要がある。少人数なら前から見れば、或いは、カンニングが機能しないテスト問題を考案せよ、という"ご指摘"は尤もと思う。が、この話は、つまりは"権力"のもつ、そのものの'駆動'を、端的によく顕している。ドーム状の防犯カメラには指向が判らぬようスモークが張られている。'オペレーション簡略化による外国人留学生雇用促進システム'は"味集中システム"と翻訳される。進路調査票は、進路というより、'進学率'が評定の背景にある、'上に進学しないもの'を炙り出すための枠組み、が前提にある。忖度するのだ。自縄自縛に。

これは、通常の授業形態にも応用できる。生徒に当てて、何かを答えさせる時、"教師"は、当てられていない生徒の動向に意識を向ける。余興の『マジック』でいう"Mis-direction"の原理だ。"~じゃない方"に耳目を集め、その間'別の仕込み'をする。時空の位相をズラし、皆の意識の埒外から、アッと驚かせていく。

'estimation'は「業」と訳す

因みに、"それ"以外を業界では'estimation'と呼んでいる。曰わく'estimation'と呼ぶ全体が、"Mis-direction"を包摂するようにして『マジック』は成立している。'estimation'は、それが"業"とも訳されるように、極めてその属人格に寄せられる。この属人格性を担保する ―要素― 下位layerにぶら下がるのが"Mis-direction"という'技術'といえる。授業において、"remote形式"を採用するとき、教師にとっての"estimation"と、手段となる"Mis-direction"、この'ふたつの能力'は、著しく削がれていく。教師は自分たちが、垂直的な存在である『祭司』たる自覚を持っている。その意味で水平的な存在である『牧人』たる大学教授とは機能も意識も違う。教室の長として、時に"呪い"や"魔術" ―不条理を体現― を使い、治めなくてはいけない。

義務教育の'義務'は『親』に係る

一方で、今般のコロナ禍が収まっても、教育格差の埋め合わせ等の要請により、加え、足場となるICT廻りの廉価化による普及により、教育リソースのデータベース化と、リモート化は"べき乗速"に進んでいく。これは、時間と地域を問わない、globe単位の'アビトラ'[Arbitrage:裁定]にあり、個別自治体レベルで防遏するのは不可能にある。わたしの地域は鎖国します、は人権の観点からも出来ないのだ。余談だが、"義務教育"の'義務'は、子どもではなく、法定監督義務者及び、その複数形となる"国"に対して、網は掛かっている。敢えての誤用なのか、素朴な無知なのかはわからないが、"義務教育だから学校に行け"は、短絡であり誤読を誘う。子には権利しかない。これを前駆に、かつての"登校拒否"から"不登校"へ、用語の統一がなされ、今なおその語彙の適切さが問われている。閑話休題。

'coaching'的teacherと、'teaching'的coacher

リモート教育の行き先は、やがて二極に振り分けられるものとなる。身近なところでいえば、"カリスマ予備校講師"の授業をpay-per-viewやサブスクで見るに始まる、いわゆる『teach』に振り分けられるコンテンツ群の蓄積は進んでいく。これは敷衍すれば、

『限りなくcoachingに寄せた、teach』

を体現できる、米国における"メガ・チャーチ"の、テレビ伝道師に相当するような"カリスマ講師群"('sound bite'的なもの)と、それらを"地元"で受信し、

『限りなくteachingに寄せた、coach』

を引き受ける、メンター制度[Mentor:静止衛星]の上位にあるようなファシリテーター[facilitate:促進]に分極するもの、と考えられる。学習において、"丸暗記"を完全に無くすのは困難で、諸処の問題は、"丸暗記"のまま放置してしまうところにある。これは大学入試等に対する批判にも応用できる。"大学入試"はあくまで手段的なもので、'ペーパーチェイス'そのものを無くすことは出来ない。'accessibility'の徹底は前提になるが、一定の知識量の'詰め込み'は土台に相当する。スポーツにおいて単純な筋トレがかかせないように、前提となる一方向的なteachingを無化することは出来ない。そのための、'マネタイズ'ならぬ、ペーパーテストの'点数化'を担う、teachに寄せたcoachの存在はかかせないものとなろう。これらはいわば、映像俳優と舞台役者の、力点の違いにゆるく重なっているかも知れない。

'ghost'

"AI"の開発、を眺めて思うのは、大きくふたつの方向性を、同時に実現していっているよう観測する。これは"retro-spective"(過去志向)と"pro-spective"(未来志向)という、違う矢印の向きに相当する。過去志向を徹底すると、"Deep Learning"(深層学習)に行き着く。いわば'学習方法の'学習、というメタ階層が無限にlayeredされていく。これは'perspective'的、もしくは'engineered'な力点、として換言出来よう。

未来志向を徹底すると、"Active Learning"に相当していく。どう訳せばいいか、能動的というより、積極的受動、もしくは"中動態"に相当するのが、その本懐にあろうと思う。が、余り一般的な言葉ではない。これは'paramount'的、もしくはartの文脈に還元出来よう。偶然と必然の、間の領域を蓋然(確率)と呼ぶが、蓋然性を記述する、蛮勇ではない'map-hater'な志を、きっと我々は、人形に埋め込む'魂'と呼ぶのだろう。無論、これらの'見立て'は前提として、ヒトの了解可能な"姿"に加工されている。'Singularity'を越えるとは、'人知を超える'を意味し、もうひとつの『自然界』が'自然'のうちに屹立・乱立することを予想する。

演繹的、帰納的、仮説推論、もしくは誘拐
'de-duction'/'in-duction'/'ab-duction'

"教師"が極めて属人格的で、'AI'に還元されない存在なのかを、整理してみた。無論、文科省カリキュラムほかに縛られ、各々の裁量は限り無く最小化されている。だが原理的に、全てが条理に還元されない、キャンセル出来ない部分が必ず残っていく。それが'非日常に足場'を置く、つまり"聖[holy]"を冠するいわれになっている。"栴檀は二葉より芳し"と、"三つ子の魂百まで"の間、"門前の小僧習わぬ経を読む"の領域を、浮かび上がらせたかった。

おミソだったから、という生育環境が関係するかはわからないが、わたしは多分に権力、設計の傾きに敏感で、'marginal'(周辺)かつ'ec-centrism'(中央以外)な自覚がある。搾取される側、屠られる側の自意識を持つ。権力が悪いわけではない。力への鈍感さが悪しなのだ。そこには非対称性があり、ハラスメントが顕現する。それが"聖[holy]"のもつ、もうひとつの意味だ。"キリスト"は『売春宿のマリア』に'聖性'を見出す。"嬢"を'天使'と呼ぶ感じ。デビルフェイスになる前に『ネコには鈴』をつけなければならない。

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