おれの異常な執着 またはおれは如何にしてANA社員が縫製に励む件を心配して原爆を嫌うようになったか

    初めにANA労組とANAホールディングス社長に宛てた文書で書いたように、おれは妻が縫製を仕事にしています。その意味ではこの件は縫製という専門職を舐めくさった態度です。それを日本を代表する企業が時の政権に要求されたのか、頼まれもしないのに進んで身を差し出しているのか。縫製というのは世界のどこに行っても底辺収入です。駅ビルや町にお直しショップがありますね?あんな家賃の高い所に入れるのはそこそこ手広くやってる企業が多いわけですが、働いているのは多くは高齢女性で、まず、間違いなく地域の最低時給しか企業は払いません。しかも交通費も回数券の分しか払われないこともあるとか。安く使う、企業が儲かるためのコマに過ぎんのですよ。わたくしの妻は会社員として少しはマシですが。

   4月7日の安倍首相が国民に向けて行った会見で「欠航が相次ぐエアラインの皆さんは、医療現場に必要なガウンの縫製を手伝いたいと申し出てくださいました」と唐突に語りました。翌日、西村康稔経済再生担当相はBSフジの番組で「エアラインのCAも手伝うということで申し出があった」とより具体的に述べています。

ANA労組とANAホールディングスからの返答では、その時点では何も決まっておらず、社として「困惑している」と述べていました(ネットメディア ねとらぼ https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2004/10/news105.html の取材に)。

が、(以下4/17産経新聞を引用)安倍首相が「オールジャパンでの取り組みが必要」との産業界への要請に応じ……16日、テレビ会議システムを使って……各社の経営陣と会談し、医療物資の生産強化を呼びかけた。……ANAホールディングス片野坂社長は16日の会議で、「医療用ガウンの増産に向けてマンパワーを提供する」と表明。社内の職種や性別を問わず希望者を募集し、都内のANA訓練施設内で作業する計画だ。(引用終わり)

ですって。この会談に参加した他の企業は(これも産経の表から)、帝人(医療用ガウン)・興研(医療用マスクN95のため投資)・日産自動車(医療用フェースシールド)・トヨタ自動車(医療用フェースシールド、移送用車両提供)・花王(アルコール消毒液)・サラヤ(アルコール消毒液)・サントリーHD(消毒用高濃度アルコール)・デンカ(アビカン原材料)・ソニー(人工呼吸器)。どうです?まっとうな支援・協力ですね。専門性のある事業の増産、拡張をする計画を開始する。そこに唐突に

ANA HD:医療用ガウンの増産に向けて、作業の手伝いなどマンパワー提供へ

正気か?これが正気という説明を誰か聞かせてほしい。

「作業の手伝いなどマンパワー提供」

片野坂、お前がやれ。

他の報道には、この作業はボランティアベースとありました。我が国が誇るウソ日本語の極北「ボランティア」。ただ働き、working without pay, work for nothing です。

唐突に話を拡げましょう。俺の母は長崎で9歳で被爆しています。当時は隣町である程度距離があったため、直接爆発や、高濃度の放射能の被害は受けていません。が、姉2人がおり(俺のおば)、彼女らはすでに女生徒だったので、時に勤労奉仕で三菱重工の兵器工場に学問を捨てさせられ、ただ働きに通っていました。その工場は爆心地から500mと離れていません。2人の片方の澄枝おばは8月9日、なぜか具合が悪く、欠勤することにして隣町の自宅にいました。で、11時2分にアメリカ軍のB29からプルトニウム爆弾が投下されました。たまたま直下に行かなかった、たまたま生き残ったのでした。おととし天寿を全うするまで長生きしましたよ。

国が強制といわず雰囲気を作って会社が差し出す事態で、俺は古い世代なのでこの個人的なメモリーに強く捉えられるわけですよ。そんなの年寄りの杞憂だという方は合理的にこの2つの件に関連が一切ないことを説明してくれ。いま勉強中ですが、第二次世界大戦の国家総動員体制から女子挺身隊、女は戦場に出ないので銃後で労働に励みました、という歴史を掘ります。

どうやって募集の30名を選びますか。どうやって訓練し、会社はどこまで指示をして、勤務評定に関わるのか、それともただの娯楽なのか。欠勤はどう扱われるのか、やっぱ私にはあわなーい、辞-めた!とさせるのか。30人全員がやっぱやーめた!という気分になった時、ボランティアなのに片野坂ら経営陣は安倍政権にいい顔を見せた手前、許すわけがないでしょう。

これが人権と労働問題だと考えられないとすれば世界のどこに人権と労働問題が存在するのか。

許さんぞ。内閣府への情報公開、ANAの2つの少数組合、本丸と書類の送付を続けます。お楽しみに。


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