Living The Gangsta Life

かつてSheff Gはインタビューで、「もしギャングスタを殺人鬼共と捉えなければ、彼らは尊敬する対象でさえあった。夏になればトランポリンハウスを作り、アイスクリームを売って、公園に来ては飲み物や食べ物を振舞ってくれた。いつだって彼らのようになりたかった」と語っていました。そう答えるSheff自身、Movin Gangに所属する現役バリバリのGangsta。

Brooklyn Drillとギャングは切っても切り離せない関係。と言うより、Brooklynのギャングが始めた新しいHIP HOPの手法こそBrooklyn Drillな訳で、両者は同義語と言って差し支えないでしょう。

そこで本日はBrooklyn Drillの心臓部、ギャングについてまとめたいと思います。


1.Woo

Woo Gang又はWooo(We On Our Own)とも表記されます。Movin Gang、092 GSC、800 Foreign Side、NBA Swish Gang、GS9、Rockstarz(Bloods and Crips)等を束ねる、NY二大派閥の片割れの総称。

Tylek HaydenとDevin Yardが "Wave Gang" というグループを作ったのが始まり。最初はただのラップグループだったそうですが、過激派が加わる事でギャングのような組織になっていったんだとか。

Woo所属のラッパーは、Sheff G、Pop Smoke、Fivio Foreign等、いずれも第一線級。

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ハンドサインは中指と親指を折ったWサイン。

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Bloods & Cripsが名を連ねている事もあり、青や赤を好んで身に着ける傾向にあります。

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2.Cho

Blixky、SPMB、PNV、Hoodstarz等を束ねる、Wooと双璧をなすNY二大ギャングの片割れの総称(いくつかのBloods & Cripsも名を連ねているそう)。

Chew(Choo)又は Folk Nation、Shiggiesとも呼ばれるChoは、シカゴのギャングチームであるGD(Gangster Disciples)と同盟を結んでいます。GDとは、シカゴの二大ギャングの片割れの総称であるFolk Nationの傘下。その為、ChoはしばしばFolk Nationと呼ばれるようです。

Cho所属のラッパーは、22Gz、Envy Caine、Ciggy Black等。いずれもBrooklyn Drillシーンで確かな実績を築いてきた者達です。

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チームカラーは黒一択。黒のペイズリー柄のバンダナが、彼等のトレードマークなのです。

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3.両者のビーフ

元々WooとChoは仲の良い関係だったそうです。ところが2010年のスニッチ事件以降(色んなサイトをディグしてるんですが、スニッチの詳細は見つけられませんでした)、両者の関係は悪化。抗争を繰り返し、多くの血が流れる最悪の結果に。

ここからは、両者のビーフに端を発した事件をいくつかご紹介します。

<Sheff Gショッピングモール事件>

10代の頃からギャングの問題に直面していたSheffは、高校生の頃にブルックリンのショッピングモール「King’s Plaza」にて敵対するギャングに向けて発砲、逮捕されました。当時の事件についてSheffは、「ブルックリンにおけるギャング問題は伝統みたいなもの。いつでも何か悪い事が起きた時の覚悟をしておかなきゃならない。」と答えていました。


<ABG Neal襲撃事件>

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Woo(恐らくMovin Gang)所属のABG Nealは、去年11月にEnvy Caineと彼の所属する63 Outlaw GDs / Situation Gang(Cho)の仲間から襲撃を受けます。あろう事かCokaは、その様子を自身のインスタライブにて配信しました。

更に、ラッパーの象徴であるネーム入りのゴールドチェーンを奪うという悪趣味っぷり。

これを受けてなのか、Woo側からのEnvy Caineディスは今も延々ドロップされ続けています。


<Sahiah Davis事件>

Hoodstarz(Cho)に所属するSahiah Davisという女の子は、彼氏がWave Gang(Woo)所属の男の子だった為Wave Gangに寝返ったそうです。Wave Gangに入ったSahiahは、忠誠の証としてHoodstarzのメンバーを殺すよう命令されます。そして彼女は幼馴染だったNathaniel Walcottという男の子を殺してしまいました。

しかし逮捕されたSahiahは、刑務所に入る事を「普通の事」と言い退けます。食べ物があって仲間がいて、自分のベッドもあるから、だとか。またとある子は裁判で、「2週間の刑務所生活」か「数十時間の社会奉仕活動」を選択する際、当たり前のように刑務所生活を選んだそうです。ギャング達にとって刑務所は、懲罰と言うよりも仲間と会いに行く場のような感覚なのでしょう。


4.全ての始まりはフェイク

沢山の抗争と死者を出したWooとChoのビーフ。しかしWave Gang創始者であるTylek Haydenは、Wooのギャング活動を「全てフェイクだ」と主張しています。

Tylek「俺達はWave Gangとして出てきたが、ギャング活動なんてしてなかった。ただのラップグループだったんだよ。ところがその内、他のガキ共がWave Gangを勝手に名乗り出した。そっからおかしくなったんだよ。」

Tylekは、リリックに出てくるハードな内容は全てジョークで、自身が刑務所に入っていた時も、敵対関係であるハズのHoodstarzの人達と仲良くしていたと言っています。更に、HoodstarzとWave Gangの抗争は警察がでっち上げた架空のストーリーであるとも主張しています。

思うに、最初はただのグループだったWave Gangは、Tylekの(ジョークと言い張る)ラップに触発された "過激派" が絡む事で本来の思惑から外れ、どんどんギャングな活動に進んでいってしまったのでしょう。しかし実際に死人が出てしまい両者の関係に深刻な亀裂が入ってしまった今、Tylekのラップはジョークで済まされない事態となっています。

この成れの果ては、元々自警団としてスタートしたものの一部の過激派のせいで道を外れてしまったブラックパンサーを連想させます。ブラックパンサーの末路は破滅。歴史はまたもや繰り返してしまうのでしょうか。


DJ MoB

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Brooklyn Drill Mixtape -Mixky The Moo- on Mixcloud
















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