見出し画像

集団1stGIG終了、その先に見えたものとは?

2024年6月29日、ぼくは初めて動く“集団”を見た。それはものすごく変わったグループのお披露目ライブであった。

“集団”とは、COALTAR OF THE DEEPERSなどのバンド活動で知られるNARASAKIと、代代代、細胞彼女といったグループをプロデュースしてきた小倉ヲージがタッグを組み、新たに手掛けたアイドル・グループである。

コンセプトはNARASAKI曰く、“速い曲をやるアイドル”。これまでに3曲が配信され、そのどれもが速く、多くのリスナーを驚かせたと思う。

メンバーは、翠叶かぅん、武者小路朱菜、由已むぎ、卯花ういの4名。
デビューワンマンライブでは、NARASAKI(G)、大谷明久(B / Marmalade butcher)、Shuhei Kamada(Dr / Imperial circus dead decadence)を迎えたバンドセットでのパフォーマンスとなる。

1stGIGの事前情報はこれだけだった。

それでも個人的に大好きなミュージシャン/コンポーザーであるNARASAKIの手掛ける新グループだから、個人的に期待値はかなり高い。先に発表された楽曲は癖になる独特の世界観が展開されていたし、チケットも即完売ということで、このグループへの期待はさらに高まっていた。

18時過ぎ、会場前にはすでに多くの人が集まっていた。やはりディーパーズのTシャツを着た人の姿がやや目立つ。そしてどこかで見たことのあるアイドルグループのメンバーや、NARASAKIのミュージシャン仲間も多く来場していた。他グループのプロデューサーも来るなど、業界内の注目度も高かったようだ。場内で聞こえてくる会話からは、メンバーが参加していた前のグループからのヲタらしき人もいた。

18時半をまわったところでSEが流れ場内が暗転する。
1曲目は「パンダちゃん」。約1分強、激しいブラストビートが聴衆に叩きつけられる。
“誤情報!誤情報!”と意味不明な単語が場内に響く。いや、意味不明ではなくて、“この世はすべて嘘ばかり”と社会を皮肉った内容の歌詞なのだが、曲のタイトルは「パンダちゃん」だから意味不明に聞こえる。あらためて面白いと感じる楽曲である。
演奏はとにかく速い。なのにズッシリと安定しているから凄まじく上手いと感じる。ちなみにドラムのShuheiは、以前GO-ZENやDISGUNDERといった数々のエクストリームなバンドで叩いており、僕はその頃の姿を何度か見ている。現在はドラマーとしてさらにエクストリームに突き抜け、進化しており、ただただ感心するしかなかった。

2曲目では早くも初めての曲が披露される。以降のセットリストは以下の通り。

フロアの雰囲気はやや硬く、聴衆は“様子見”な雰囲気であった。そりゃそうだろう、現時点で3曲しか知らないわけだし、そもそも歌って踊る姿を見るのが初なのである。まずはどんなものなのか、様子見するしかないわけだ。

だがしかし、このグループはわかりやすかった。当初からのコンセプト、“Dビートと2ビート、ブラストビートを多用するアイドル”というカタチは、しっかりと体現されている。サウンドはエクストリームで尖っているけれども、あくまでもアイドルだから、楽曲はポップ。その部分をしっかりと踏まえているから、優れた楽曲であると感じるのだと思う。もちろん、これまで登場した数々のアグレッシブなパフォーマンスを見せるアイドル・グループたちが地ならししてきた功績というのもあるんだろう。拳を上げ煽るメンバーに対し、フロアはすぐに手を挙げ呼応していた。

だが、まだまだこれからだ。演者と観客が一体となってその場に強力なエナジーを生み出していくのがライブである。ラストの「悪霊退散」はもう少し慣れが必要であろう。だがそれもすぐに慣れるはずだ。

それにしても、まさかこんなに数多くの曲が用意されていたとは、さらに振付も実にしっくりきているので驚いた。結論として“集団”は、1stGIGで想像以上のものを見せてくれた、ということだ。約1時間、充実した時を過ごさせていただいた。

で、話は少し逸れる。
今の世の中は家で独りで楽曲制作をすることが可能であり、その完成した曲を世界に向けて発信することも容易にできる。そしてそれがバズったりすれば、音楽業界はすぐに飛びつくという構造になっている。だから今どこのレーベルも“育成”ということをやらないらしい。すでにバズっているわけだから、育成する必要がないのである。そんな話を聞いた。確かにそうなんだろう世界的には。

しかし、日本独自のアイドル・カルチャーは、“育成”しながらグループを運営、発展させていくものである。その部分は揺るぎないというか、そうするしかないのだ。日本のアイドル・グループは、そこに面白さがある。“ハロプロ研修生”なんてまさにそうではないか。

そんなわけで、“集団”はこれからさらに面白くなっていくはずだ。各メンバーのキャラが見えてくればさらに面白くなるだろうし。来月の2ndGIGでのパフォーマンスではさらなる熱狂を、個人的にはサークルモッシュの発生に期待したい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?