よくわかるハードコアDJ講座(2002)
私のホームページ用に2002年に書いたものです。
当時はアナログでターンテーブルを使ってDJしていましたので、それを想定して書いています。私も今やPCDJに完全シフトして、この当時のことはほとんど必要なくなったのですが、セットの組み方などの考え方は今もそう変わってないので、noteで公開してみます。
よくわかるハードコアDJ講座
By DJ C-TYPE(殺人ヨットスクール)
UPDATE: 02.07.27 1st release
23.01.15 noteに転載
序文
私がDJをはじめて、今年で9年になりました。幸いにも最初に良い師匠に出会って、
その時に教えてもらった事が今でも役に立っているんですが、今web上にあるDJ講座を読んでいると、
ハードコアにはあまり役にたたないかな~と思う物が多いです。というわけでここでは、私の経験を
もとにした実践的な事を中心に書き記していこうかと思います。これからDJを始めようという方の参考になれば幸いです。
第1章 練習編
1-1.機材に一つだけ金をかけるとしたら、ヘッドホンで。
DJに必要な機材は他のページでも紹介されているので省略するとして、個人的に一番大事だと思うのはヘッドホンです。
クラブでDJをやる場合は、スピーカーが客席の方を向いている為に、残響の関係で若干音のズレが生じるので、
それを防ぐためにモニタスピーカーと呼ばれるDJ側に向いたスピーカーを設置しているのが普通なのですが、
結構、このモニタが用意されていないクラブというのもありまして、ズレたままの音に次の曲を繋ごうとしても、
当然繋ぎ失敗という事になり、その際に頼りになるのがヘッドホンのみというわけです。
また、ハードコアではキックやベース等の低音が強調されている曲が多いので、安物のヘッドホンではモニタ時に
全体の音が潰れてしまい聞き取りにくく、本番の大音量の中では使い物にならない事もあります。
DJ用として低域・高域をブーストさせているモデルもありますが、同じ理由から、出来るだけ原音に近いタイプの物を
用いると良いでしょう。ちなみに私が使っているのはSONYのMDR-Z700DJです。
あと当然、レコードはメシを抜いてでも買いまくる事。
1-2.練習のフローチャート
機材がそろったら、早速練習に入りましょう。私の場合は、
[手持ちのレコードを聞きまくる→気に入った物にマーキングをして抜き出しておく→大体のBPM順に並べる→
最初から繋いでみる→展開的に気に入った物をメモ→(最初に戻る)]
という順番でやっています。
マーキングというのは、ヒップホップDJがスクラッチをやる際の頭出しのポイントにシール等で印を付けておく事ですが、
普通にDJをやる時にも有効です。私は3とか4とか回転数もメモして、確認の時間を短縮できるようにしています。
一通りチェックし終わったら、繋いでみましょう。ハードコアは一曲一曲の時間が短いものが多いので、
手早くサクサクとつなげるようになるのが大事です。
繋ぎ方としては、簡単な物から並べると、
・繋がない
・カットイン・アウトで繋ぐ
・フェードイン・アウトで繋ぐ
・曲のブレイク←→キックをあわせて繋ぐ
・キック→キックをあわせて繋ぐ
・上物→キックで繋ぐ
等があります。
繋がないというのは、どうしても繋げなかった場合の最終手段です。
カットやフェードはBPMが大きく変化する時に使います。
で、普通に繋ぐ時の行程を文章にすると、
レコードに針を落とす→一番音の大きい部分にあわせて、ミキサーの音量をチェックして調整→繋ぎやすい位置でBPMを合わせる→
繋ぎたいポイントに戻す→低音のEQを最低に→フェーダーを真ん中に→頃合いを見計らいつつ、低音のEQを戻すと同時に、
現在流れている方の低音EQを最低に→フェーダーを移動。
という流れになります。これを数分おきにこなしていくのが一般的なDJスタイルです。
微調整は、レコードに直接触れるよりも、ターンテーブルの中心の突起をつまんでひねると、より細かい調整が出来ます。
最初の内はノート片手に「2曲目 +4.5」という風にピッチをメモしながら繋ぐ練習をするのもいいのですが、
自宅とクラブのターンテーブルでは、ピッチにズレが生じている場合がありますので、
慣れてきたらあまり細かい事はメモらずに練習するのがいいと思います。
1-3.他人のDJを聞く
最初のうちに、なんといっても参考になるのは、他の人のDJです。海外のMIX-CDやMP3等を聞いてみて、
自分の(全体の流れを)知っている曲を、他人がどう使っているかをチェックしてみましょう
第2章 本番編
2-1.まずはイベント全体の流れを考えて
練習を積んだらいよいよ人前で披露です。まずはイベントの出演者(タイムテーブルがわかっていればなお良し)を見て、
自分の前後の人の曲調や平均BPMを考えましょう。もし自分の前の人が遅めのBPMで終了したのに、急に速い曲でスタートすると、
お客さんはとまどってついてこれない場合もあるからです。安全策としては、一曲目にキックの入ってないものや、前置きが長いもの
をかけて、一度、場の雰囲気をリセットしてから、自分の世界を構築していけばいいと思います。同様の理由で、最後にかける曲も
考えておくと、イベント全体の流れとして引き締まったものになるでしょう。
2-2.前準備
会場にいったら、当日使う機材をチェックしましょう。使い慣れているものだと問題ないのですが、初めて使うミキサー等だと、
EQの有無やヘッドホンからの音の出方、キュースイッチの場所等を事前に知っておくのが大事です。
DJの音出しが始まったら、ブースとフロアを往復して、PAさんに色々いじってもらって理想的な音を探しましょう。一番最初の
PAセッティングはハードコア用に調整されていない場合があるので、ここで手を抜くと音が割れたり潰れたりしてしまいます。
この作業は慣れている人にまかせるのがベストです。
2-3.いよいよ本番
イベントは必ずしもスケジュール通りに進行しているとは限りません。
自分の出番が近づいてきたら、当初の予定の自分の持ち時間とのズレを考えて、
選曲しておいたストックの中から、さらに使う曲をカットしていきましょう(盛り上がる部分までが長い物など)。
2-4.フロアコントロール
DJ中は、繋ぎもさることながら、フロアの雰囲気を感じ取って次の展開を考えるのも大事です。とはいえ、最初のうちは繋ぎの事だけで
精一杯だと思いますので、まぁ、お客さんが盛り上がっている曲は長めにかけるとか、その程度の事は気にしておきましょう。
2-5.神の見えざる手
何をやっても抜群にうまくいく状態を「神が降りてきた」と例えますが、DJ中にも時たま神が降りてきて、次のレコードに針を落としたら
既にほぼピッチがあってたり、一回のピッチあわせで繋ぎのスタンバイが完了したりすることがあります。これは練習量等は関係ない
偶然の産物なのですが、これが連続して何回も続いた時は、かなりいい気分になってリラックスすることが出来ます。
とはいえ、実力で一発合わせ出来るようになるのがベストなのですが。
第3章 覚えておくと便利かもしれない事
3-1.小技集
・ターンテーブルのSL-1200シリーズは、真ん中のテーブル部分を分解すると
ピッチの幅を調整できるネジがついており、これを最高にすると、
従来の限界を超えた速さでDJが可能ですが、元の速度に戻すのが難しいので、
お店に置いてある物をいじるのは控えましょう。
3-2.トラブルの対処法
・音が出ない
本番前のセッティングで、ターンテーブルに針をおとしても、音が出ません。
その場にいたPAさんとDJ数人でああでもないこうでもないと配線をいじりますが、ミキサー自体に音が来ていないのです。
困り果ててふと手元をみると、ターンテーブルのアームが上がりっぱなしでした。チャンチャン。実はよくある事例です。
・いくら調整しても、音が割れる
ハコのせいです。低音を切ったりして、せめてお客が聞きやすいようにしましょう。
・音飛びする
レコードに傷があるか針が弱くなっています。針に5円玉等の重りを乗せると
マシになる場合があります。
・ターンテーブルが一台しかない
冗談のようですが、本当にありました。CDを使うか、開き直って一台でやりましょう。
・緊張する
俺もする。これは性格的な問題なのでしょうがないです。ひたすら練習して
心配の要因を減らして望みましょう。
文責 DJ C-TYPE
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