第27回柔道整復師国家試験 柔理Part6
27-77 上腕骨顆上伸展型骨折で正しいのはどれか。
1.顆上部に強力な後方凸の屈曲力が働き発生する。
2.肘関節部に高度な腫脹を認める。
3.肘関節前方脱臼との鑑別が必要である。
4.偽関節を生じやすい。
上腕骨顆上骨折、実際に柔道整復師が臨床で診る機会はほとんどないし実技認定の項目から外れて久しいし昔ほど国家試験に頻出しなくはなったけど重要な項目には違いないからね。
1.屈曲骨折のⅡ型、よーわからん奴や。ベクトルがどうのこうの、と言ってもオレにもわからんからこういうふうに考えてちょうだいね。
上腕骨顆上骨折は小児が肘関節伸展位で手掌を衝いたときに発生する。いうことは肘が過伸展されるわけやんか。(成人では同様の機序で肘関節後方脱臼が発生する)そこで自分の肘をぐーっと過伸展してみ?肘の前側が突っ張るやろ。屈曲骨折Ⅱ型はこの「突っ張った側が凸」やねん。そやから上腕骨顆上骨折伸展型は「前方凸の屈曲力」が働いて発生する。
ちなみに手関節をぐーっと過伸展させると掌側が突っ張るから、コーレス骨折は「掌側凸の屈曲力」が働いて発生するねん。
まとめると、
「顆上骨折伸展型➝前方凸の屈曲力」
「顆上骨折屈曲型➝後方(前方の反対な)凸の屈曲力」
「コーレス骨折➝掌側凸の屈曲力」
「スミス骨折➝背側凸の屈曲力」となるねん。
2.受傷直後から高度な腫脹が発生する。肘関節後方脱臼との違いは「脱臼のほうが腫脹の発生するスピードがゆっくり」であること。
3.しょっちゅう出題される選択肢や。上腕骨顆上骨折と肘関節後方脱臼はどちらも肘関節が軽度屈曲位をとり肘が後方に突出するところが似てるから鑑別が必要とされる。
4.上腕骨顆上骨折は小児(5歳から10歳くらい)に好発する。小児骨折やから骨癒合が良好なので偽関節にはならない。小児骨折で例外的に偽関節になるのは上腕骨外顆骨折。
答え:2.
27-78 肘関節伸展位で固定するのはどれか。
1.上腕骨骨幹部骨折
2.モンテギア(Monteggia)骨折屈曲型
3.上腕骨内側上顆骨折
4.橈骨頭骨折
肘関節を伸展位で固定するのはものすごくイレギュラーな肢位になる。そやからあんまり数はないねん。ひとつは2.のモンテギア骨折屈曲型。もうひとつは肘頭骨折。どちらも前腕は回外位。
モンテギアの屈曲型と伸展型がややこしい子、いてへんかな?モンテギア骨折そのものの定義は「尺骨上中1/3境界部の骨折に橈骨頭脱臼を合併したもの」。
伸展型(多い)では尺骨は前外方凸変形、橈骨頭は前外方に脱臼。
屈曲型では尺骨は後方凸変形、橈骨頭は後方に脱臼。
両者を見比べてみると尺骨の凸変形方向と橈骨頭の脱臼方向は同じであることがわかる。そやから「伸展型は前外方」「屈曲型は後方」て覚えといたらそれでええねん。ラクな話やろ?
答え:2.
27-79 前腕骨遠位端部骨折で正しい組合せはどれか。
1.コーレス(Colles)骨折―鋤状変形
2.スミス(Smith)骨折―フォーク状変形
3.バートン(Barton)骨折―遠位橈尺関節不全脱臼
4.ショウファー骨折―関節内骨折
コーレス骨折で遠位骨片の背側転位が著明になるとフォーク状変形、スミス骨折で遠位骨片の掌側転位が著明になると鋤状変形をそれぞれ呈する。
バートン骨折(背側、掌側)とショウファー骨折はそれぞれ橈骨遠位端の辺縁部が骨折した関節内骨折で(遠位橈尺関節は温存される)、関節内骨折でもちろん間違ってないけど普通両者を総称して辺縁部骨折と呼ぶ。
答え:4.
27-80 手舟状骨骨折で誤っているのはどれか。
1.手関節背屈撓屈時に運動痛がある。
2.関節内骨折はまれである。
3.近位1/3部の骨折は壊死が生じやすい。
4.スナッフボックスの圧痛がある。
手の舟状骨骨折の症状をひととおり挙げとくわな。まず運動痛は「手の橈背屈時、又は伸展時痛」、「患手と握手時」。圧痛は「スナッフボックスと舟状骨結節」。軸圧痛は「第1,2中手骨軸に沿った痛み」。
手の背屈(or伸展)、屈曲どちらで痛みが出るのか迷ったときは舟状骨骨折の受傷機転を考えてみる。思い出せなければ「コーレス骨折の合併症」であることを何とか思い出してみる。そうすれば手の舟状骨骨折はコーレス骨折と同じように手の伸展強制で発生することがわかり、受傷機転を取らせることで痛みが増悪することも思い出せるやんか。
手の舟状骨骨折は①結節部骨折、②遠位1/3骨折、③中央1/3骨折または腰部骨折または体部骨折、④近位1/3骨折に分類され③が最も多い。
中央1/3骨折と近位1/3骨折は関節内骨折。定型の中央1/3骨折が関節内骨折なので2.の選択肢は正しくない。中央1/3骨折と近位1/3骨折では近位骨片の栄養血管が骨折によって絶たれてしまうので近位骨片が無腐性壊死を起こしたり骨折部が偽関節になったりする。
答え:3
27-81 外傷と固定方法の組合せで正しいのはどれか。
1.鎖骨骨折―ハンギングキャスト
2.ガレアジ(Galeazzi)骨折―ショートアームキャスト
3.膝内側側副靭帯損傷―シリンダーキャスト
4.脛骨粗面部骨折―PTBキャスト
1.は頻出の間違い選択肢。ハンギングキャストは上腕骨外科頚骨折とか上腕骨骨幹部骨折に適応があるねん。2.は手根骨とか転位のない前腕骨遠位端骨折に適応。橈骨骨幹部中下1/3骨折に尺骨頭脱臼を合併する不安定型骨折であるところのガレアジ骨折には適応せえへん。
3.のシリンダーキャストは膝関節ほぼ伸展位で大腿から足関節までギプス固定するから膝の側副靭帯損傷にも適応。4.のPTBキャストは下腿骨骨幹部骨折患者に早期荷重歩行させるための固定法。(長期臥床が必要、みたいな偽物が時々出題される)
病院勤務でもせんと縁のないこういう固定法を国家試験で出題したり下手すると学校で実技させたりするから新卒の柔道整復師が混乱するんや、と個人的には思う。
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