第27回柔道整復師国家試験 柔理part2

27-22 骨折の合併症で正しいのはどれか。
1.フォルクマン(Volkmann)拘縮は上腕骨骨幹部骨折で多くみられる。


2.過剰仮骨は血腫の分散及び流出が原因である。


3.外傷性骨化性筋炎はスミス(Smith)骨折で多く見られる。


4.ズデック(Sudeck)骨萎縮はコーレス(Colles)骨折で見られる。

1.フォルクマン拘縮=阻血性拘縮がみられるのは上腕骨顆上骨折と前腕両骨骨幹部骨折。コンパートメント症候群でも同意でいいんやけど、「阻血症状(5P)が発生しつつある状態をコンパートメント症候群、拘縮が完成した状態をフォルクマン拘縮、というトンチキな出題例がいっぺんだけある。

フォルクマン拘縮で障害されるのは前腕屈筋。内圧が上がるのは掌側コンパートメント。指を他動的に伸展して前腕掌側に激痛を訴えるのがパッシブストレッチテスト。

肢位は手関節軽度屈曲位、MP関節過伸展位、IP関節屈曲位。障害される神経は正中神経と尺骨神経。

2.血腫は仮骨の原料であるからこの文言は正しくない。

3.外傷性骨化性筋炎は肘周辺の骨折、脱臼、具体的には上腕骨顆上骨折と肘関節後方脱臼に合併する。固定を外して後療法を行う際にマッサージや他動運動(国試では矯正という文言が使われる)を行うと発生。他に股関節後方脱臼にも合併する。

4.ズデック骨萎縮はコーレス骨折と踵骨骨折に合併。RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)と出題されることもあるので注意。距骨骨折の阻血性壊死と踵骨骨折のズデック骨萎縮が混同しやすいので注意。踵骨は壊死せんからな。

答え:4.

22-23 外傷性脱臼に合併する軟部組織損傷で最も多いのはどれか。
1.筋損傷 

2.関節包損傷 

3.神経損傷 

4.血管損傷

こういう問題を見て神経損傷と血管損傷とどっちが多いか?みたいなことを考えていると脳が腐敗する。外傷性脱臼に(ほぼ)必発するのは関節包の断裂、ということを言いたいんやろな。受験生諸君にはよーく覚えておいてほしいんやけど、試験で正解になるのは正しいものではなくて「出題者が答えてほしいと思っている」選択肢やねん。

答え:2.

22-24 額関節前方脱臼で正しいのはどれか。
1.男子に多く発生する。         

2.関節包が断裂する。

3.下顎歯列は上顎歯列の後方に転位する。 

4.片側脱臼はオトガイが健側に変位する。

1.外傷性脱臼の好発は基本的に青壮年男子。ただし例外が二つあって、顎関節(前方)脱臼は中年女性に、膝蓋骨脱臼は若い女性に好発する。

2.外傷性脱臼では関節包の断裂が必発する。ただし顎関節脱臼は例外で関節包内脱臼。それから顎関節脱臼では靭帯損傷も合併せんから迷わんように。

3.顎関節前方脱臼は近位の上顎骨に対して遠位の下顎骨が前方に脱臼するんやから下顎歯列が上顎歯列の前に来んとおかしい。

4.このフレーズはしょっちゅう出るから注意。たまに側方脱臼と混同する受験生がおるけど、側方脱臼は下顎骨骨折を合併する全然別モンやからな。

受傷機転は過度開口。外側靭帯、外側翼突筋、咬筋によって下顎骨は半開口位に弾発性固定。口は開いたまま閉められへんから「閉口」不能。

27-25 鎖骨骨折の症状で正しいのはどれか。

1.ピアノキーサインがみられる。 

2.患側の肩が挙上する。 

3.軋轢音を感知する。 

4.肩幅が増大する。

特に断りはないから定型鎖骨骨折で考えたらええねんで。

1.ピアノキーサインは肩鎖関節上方脱臼の弾発性固定のこと。鎖骨骨折に脱臼の固有症状の弾発性固定が発生するわけないやん。

2.遠位骨片は上肢重量によって下垂。ゆえに患側の肩は下がって見える。

3.骨折なんやから軋轢音は蝕知できるやろなあ。

4.遠位骨片は大・小胸筋によって短縮転位するから患側の肩幅が減少する。

定型鎖骨骨折は中・外1/3境界部で発生。近位骨片は胸鎖乳突筋により後上方に転位する。

答え:3.

27-26 上腕骨外科頚骨折の初検時にみられないのはどれか。
1.三角筋部の膨隆が消失している。      

2.烏口突起下に膨隆がみられる。

3.骨折部で上腕骨軸が前方凸に屈曲している。 

4.肩関節外転運動が制限されている。

先に3.と4.の選択肢から考えるね。

3.外転型では遠位骨片は前内上方に転位するから骨折部は「前」内方凸変形。内転型では遠位骨片は前外上方転位。骨折部は「前」外方凸変形。結局外転型でも内転型でも前方凸変形なのでこの選択肢は〇。

4.骨折してるから外転できるわけない、と考えてもいいし、腋窩神経麻痺出三角筋が働かないからと考えてもかまわない。ちなみに外科頚骨折に合併する血管損傷は?と聞かれたら腋窩動脈損傷と答えられるようにね。「腋窩」繋がりで覚えておくと忘れへん。

さて、1.で「三角筋部の膨隆」とあるのは肩の丸みのことで上腕骨頭が正常の位置にある外科頚骨折では消失しない。

2.の膨隆も上腕骨頭とすれば外科頚骨折では正常位置、つまり肩峰下に存在するはずである。烏口突起下に上腕骨頭があるのなら烏口下脱臼になってしまう。どう考えても出題者のミスであろう、とオレは思う。

こんな時にはどう考えるかというと「ケチのつけようのない選択肢」を選んでおくと間違いないんよ。「外科頚骨折で三角筋部の膨隆が消失するか否か」というのはまあ言ってみれば定番中の定番の選択肢。一方、2.の肩峰下の膨隆のほうはたとえば「血腫である」みたいな理屈がつけられるわけですよ。

こういうケースでは定番の1.を選んでおくのが間違いないです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?