耳と腰痛の意外なカンケイ 2023 1.1

頭蓋骨はひとつの骨ではなく、全部で23個の板状の骨がパズルのように組み合わさって形成されています。それで耳のあたりの骨を「側頭骨」と呼びます。この骨は「聞こえ」や身体の平衡感覚を保つうえで重要な働きをしています。例えばめまいのある人は必ずこの骨に問題があります。耳鳴りも同じ。幼児のころの中耳炎の名残で耳管に癒着があると、その影響で側頭骨の動きが悪くなってこれらの症状が起きてきます。
 
近年になって言われるようになったAPD/LiD(聴覚情報処理障害/聞き取り困難)という概念があります。この特性を持つ人は「聞こえるけれど聞き取れない」。ちょっとした騒音でも会話が妨げられたり、話を聴いてもちゃんとそれを理解して記憶できないということです。
 
私たちはちょっとがやがやした場所であっても普通に会話することができます。これは耳から入ってきた情報を取捨選択して自分の関心のある事をピックアップすることができる能力で、「カクテルパーティ効果」と呼ばれています。APD/LiDの特性がある人はこの「カクテルパーティ効果」が弱い、と考えられています。この場合も側頭骨が緊張していることが多いです。
 
意外なのが腰痛患者さん。側頭骨は実は骨盤(正確には寛骨)とシンクロしていて同じような動きをします。だから腰椎や骨盤をいくら調整しても改善しない腰痛患者さんは側頭骨を調整する必要があります。腰痛を訴えておいでになったクライアントの頭をさわっていると「オレは腰が痛いんやで」という顔をされることもあります。(もっともあっという間に寝落ちされますが)
 
それではどうして側頭骨が変位するのか。ひとつには先に書いた中耳炎の名残。もうひとつは歯科治療や外傷など。さらにもうひとつがね、イヤホン。今の人ってずっとイヤホンで音楽聞いたり、場合によっては通話してたりするでしょう?そうすると耳からの情報量が過剰になってしまうんだと思います。その結果、耳(側頭骨)が緊張して様々な症状が現れる、ということです。
 
自分でできるケアの方法です。今ではすっかり有名になってしまった「耳引っ張り」。両耳を軽くつまみます。ごくごく軽い力で側方に引っ張るのですが、「引っ張る」ことを意識するくらいでいいです。そのままで約3分間じっとしています。テレビを見ながらでもおやすみ前でも思いついたときにどうぞ。
 
もし腰痛があるのでしたら歩きながら「耳引っ張り」を行うとベター。歩いている間に徐々に骨盤が緩んでくるのが実感できます。こちらも時間は3分間くらいです。
 

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