ずっとマスクをしたままだと、腰が痛くなる 2022・10・1

解剖学では頬骨は「ほおぼね」ではなく「きょうこつ」と読みます。だいたい解剖学では骨の名前は音読みにします。ちょっと特殊なのが「頭蓋骨」で、普通に音読みすれば「ずがいこつ」なのですが医療関係者は「とうがいこつ」と読むことが多いです。
 
さて、頬骨です。ここは非常にストレスを受けやすい骨です。例えば顔面の骨折で一番多いのが鼻骨骨折。頬骨骨折は鼻骨に次いで骨折しやすい骨です。
 
総合格闘技の選手やプロボクサーを診ていた時は、試合後必ずこの骨をチェックしていました。パンチを顔面で受けてこの骨がゆがむと、さまざまな影響が全身に及ぶからです。
 
頬骨がゆがむ、と言っても必ずしもボクシングのような強い力が加わるとは限りません。例えばこの数年、皆さんマスクをしますよね。気にならないくらいの小さな力ですが、マスクで頬骨はずっと圧迫されています。これがどんなふうに全身に影響するのでしょうか。
 
頬骨の下に自分の指を当てて、「いーっ」と歯を食いしばってみてください。かなり大きな筋肉に触れますね。ものを噛むときに中心となって働く筋肉で、「咬筋」(こうきん)と言います。頬骨がゆがむと咬筋に無理な力がかかって緊張します。あご周りの筋肉が凝ります。そうすると食事中に、自分の内頬を噛んでしまったりします。寝ているときに歯ぎしりをする人も、この筋肉が凝っています。口を開ける時に顎に痛みを感じたり、顎関節がゴリゴリ音を立てたりする症状を、「顎関節症」といいます。この数年で歯ぎしりをするようになったり、顎関節症になったりした方は、もしかしたら頬骨がゆがんでいるのかもしれません。
 
それだけではなく、あごは身体のバランスをとっていますから頬骨がゆがんで咬筋が緊張すると、それが原因で股関節や腰に痛みが出ることもあります。いくら骨盤や背骨を調整しても治らない腰痛が、顎関節のゆがみをとると治ってしまった、という例もあります。
 
頬骨のゆがみは自分で改善できます。親指と人差し指との腹で、頬骨を軽くつまみます。本当に指の腹を当てるだけ、くらいのごくごく軽い力。そのままの体勢で約3分間じっとしています。それでおしまい。むちゃくちゃ簡単ですけれど顎の緊張は緩みます。おやすみ前にでもぜひお試しください。
 

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