リスナーとして思うこと

音楽の聴き方がとても多様化したように思う。

各種サブスクを利用すれば、あるいは無料でたくさんの音楽を楽しめる。しかも、プロの提供するクオリティの高いトラックをだ。また、動画配信サイトではアーティストが好意で(もちろん販促やアフィリエイトの意味もあるだろうが)有名曲などを提供してくれたりしている。「この人の事は詳しくないから曲を買う前に試聴したい」という場合や、若年層のリスナーならそもそも曲を買う余裕がない場合にも(それでもアーティストのその後の活動を考えるならば出来るだけ『課金』しておきたいが)、扉が広く開かれている時代といえるだろう。

反面、近年ではあえて手間のかかる曲の聴き方を好むリスナーが一定数現れたのではないかと感じている。インターネットで曲が買えるにも関わらず、あえて手元にフィジカルを入手する事を好む層だ。CDはもちろん、レコードや果てはカセットまで、ひと昔ふた昔前のカルチャーが令和の時代に復刻されているのは興味深く思う。再生にはハードを必要とするため、手間も金もかかるが、それこそが愛おしいのであろう。

かくいう私も、ミーハーなもので、最近はごくごく一部ではあるがレコードやカセットテープを購入させていただく機会がある。いかんせんリリースされたばかりのレコードを扱う店舗があまりなく、通販に頼りがちになるのは味気ないが、楽しみにしていたレコードが届いた時は気分が高揚するし、レコードに針を落とすのはいかにもな雰囲気であり、とても良い気分にさせてくれる。

また、現場で物販を利用して購入するのは非常に良い。アーティストを直接支援出来ているように感じるからである。比較的最近では、神戸の某パーティーにてカセットを二本購入させて頂いたのだが、これがカセットにラメが入ってキラキラしていて眺めているだけでもなんだか可愛らしい。このパーティーについて語ると話がそれため、ここで詳しくは言及する事は避けるが、とても楽しみなパーティーの一つである。

さて、導入としては長くなったようにも思うが、最も『手間をかけて』音楽を聴くには『現場で』聴くというのが考えられる。移動に時間がかかるし、入場料も必要になる上に、その一回しか聴く事が出来ない。だが、必ずしもではないかもしれないが、時として家では出会えない非常に刺激的な驚きと興奮を与えてくれると思っている。

ある時に遊びに行ったパーティーでは、若いトラックメイカーの女性が初ライブとの事だった。バーカウンターで緊張していた様はどこへやら、その風貌からはとても想像できない太く重いベースサウンドは、アーティストとしてすぐに好きになるには十分だった。

そもそも憧れのアーティストを見に行くのも良いだろう。これまたある時に遊びに行ったパーティーでは、大好きな憧れのアーティストをやっと生で見るに至ったが、あまりの良さにある意味で落ち込んだ。あんな表現は自分には出来ないし、まるで違う星から来た異星人なのではないかとすら思った。しかし、あの気持ちもあの時遊びに行ったからこそ味わったと思えば、一つ大事な経験をさせていただいたのかもしれない。

スマホ一つで音楽が聴ける時代において、手間をかけて現場で音楽を聴くという行為は、その時に味わう気持ちを含めてやはり贅沢だろうと思う。景色や感性、自分の感情を含めて、その時にしか味わえないのだから。

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