「うるし」の説明 その2 うるしの精製について
うるしの精製とは、生漆を塗料として「より使いやすい性質に改質するための工程」です。
生漆は水分量が多く(15~30%)、この水分は塗料として塗ったあとに蒸発して飛んでいきます。
塗料の中で、塗膜に残らずに飛んでいく成分を「揮発分」といいます。
生漆は水分量が多いために「一度に厚く塗ることができない」とか、「顔料の発色が悪くなる」といった問題あります。
そのため水分を飛ばして、塗料として塗ったあとに揮発せず塗膜になる成分「不揮発分」を相対的に増やすようにうるし液を改質します。
これにより、塗った厚みがほとんどそのまま塗膜の厚みになり、生漆のときよりも顔料の発色の良い塗膜が得られるようになります。
また、うるし液中には「ゴム質」という水溶性の成分があります。
このゴム質はうるし液の中にいる水分に溶けていて、その水分の粒は「ゴム質水球」と呼ばれています。ゴム質水球には漆の硬化反応を進める酵素「ラッカーゼ」も一緒に入っています。
ゴム質は水溶性なので、塗膜になったときには最も耐水性の低い成分になります。ゴム質が塗膜の中で大きな粒で存在していると、そのせいで漆塗膜全体の耐久性は低いものになります。
このため、うるし液中に分散しているゴム質水球をできるだけ細かく砕いて小さくします。
そうすると、硬化した時の塗膜は耐水性の高いウルシオールの重合体が耐水性のない小さなゴム質の粒を挟み込んで守る構造になり、塗膜の耐久性をぐんとひき上げることができます。
「水分量を減らすこと」と「ゴム質水球を小さく分散させること」が、うるしの精製工程になります。
実際の精製工程では、うるし液中の水分を飛ばすよりも先に、うるし液を撹拌してゴム質水球を細かく分散する作業を行います。
うるしの精製では、この「うるし液中のゴム質水球を細かく分散する」ための作業を「なやし」と呼び、「水分量を減らす」作業を「くろめ」と呼びます。
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