2023.10.29「番外地」

 彼女が仕事の都合もあって実家に帰っているので、自分も実家に帰ること。
 残暑も過ぎ去りすっかり秋めいたこの時期、母が定期的に扇風機をつけようとすることに少し恐怖を覚える。
 実家にはあまり変化はないが、母が旧TwitterのことをXと呼ぶようになっていた。ええやろ、Twitterで。家族なんやから。

 実家でやることもないので、自分の幼少期のアルバムを開く。可愛い子。よく誘拐されなかったな。こんなに可愛い子がここまでスクスク育って、親としてはさぞ嬉しかろう。
 そんなことを言っていると、お前はいつ結婚するのか、孫の顔は見れるのか、と無言で語りかけてくる両親。こいつらっ、脳に直接っ。
 昔の写真というものは軒並み面白い。若っ、と口にするとき、我々はもれなく面白を抱えているのだ。祖父の昔の写真はだいたい若くて面白い。皆様も、機会があれば是非。

 己の可愛さに満足したところでアルバムを元の場所に戻すと、自分の生まれる前の両親の写真が出てきた。不思議な感覚。生まれる1〜2年前の写真で、両親はもう結婚している。
 新婚旅行のカルフォルニアの写真もあった。えげつない色の布だけでパッチワークされたジャンパーを着ている父。この時代の日本のセンスは、少しおかしかったのだ。
 それよりも目を引いたのが、北海道に旅行に行っている写真だ。摩周湖と屈斜路湖の写真もあるので、北海道でも割と東側に行ったのだなと思う。ただ気になるのが、網走の写真だ。今でこそ網走ビールの爽やかなイメージがあるのだが、どうしても網走刑務所の印象が先行するし、両親も御多分に洩れず訪れている。
 自分の生まれる1年程前となると、父は32歳、母は23歳前後だ。俺は23歳のおなごを網走に連れて行く勇気はない。向こうから頼まれても行かない。なんとか上手いこと逸らして金沢あたりに落ち着かせると思う。
 網走刑務所はその当時も既に観光地化が徹底されているのか、今でいうフォトスポットが用意されていて、牢屋の檻の中にいる風の写真を撮ることができたようだ。笑顔で収監される母の姿が写真の中にはあった。やめろやめろ、縁起でもない。
 そんな両親の思い出に触れることができて、いや、できてしまって、なんだかむず痒い気分だ。そんな思い出があるのに、両親は『ゴールデンカムイ』を読むのを途中で辞めてしまっている。何故……。

 今後、自分も彼女と色々な場所に旅行に行くのだろう。自分が出不精なところがあるので頻度は少ないだろうけれど。でも色んなところに行って、旅行先選びもマンネリしてきたら、そのときは網走に行きましょう。

 以上。

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