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375 選挙妨害とは


はじめに

先日の衆議院の補欠選挙において、東京15区で注目を集めたのが「選挙妨害」でした。「つばさの党」は、選挙期間中ほぼすべての日程で選挙妨害が行いました。その様子は、テレビで何度も放送され多くの人々が選挙戦の在り方が変わってきた様子を感じたかもしれません。
今日の教育コラムでは、この行動について少しお話してみたいと思います。

政策の議論をつぶす

問題は、有権者が立候補者の話をじっくりと聞く機会が奪われるという点です。SNSや動画などで有権者の政策に触れることはできますが、実際にその人となりを感じながら、本人の言葉を聞いて投票先を決めようと考えている有権者は少なくありません。
今回の様に街頭演説の予定を告知するとその予定に合わせて妨害に来てしまうため、立候補したほとんどの陣営が街頭演説日程を公表しない、ステルス演説を行うようなことが常態化すれば、もしかすると選挙結果にも大きく影響が出てくるかもしれません。
候補者として、選挙活動の一環として行動する者が拡声器を用いて別の候補者の近くで演説し、相手の主張の機会をつぶすことは選挙妨害ではないかと多くの人が感じているかと思います。
警視庁は、今回の選挙で公職選挙法違反にあたるとしてあわせて6件の警告を出していますが、このうち演説の自由を妨害した「自由妨害」の警告が1件ありました。この「自由妨害」の警告を受けたのが「つばさの党」の立候補者でした。

言論の自由

妨害をする側も言論の自由を主張していますが、街頭演説は有権者が日常の生活の中で立候補者と直接かかわれる限られた場の一つです。古くから続くこの街頭演説は、民主主義の中において重要な言論の場となるのです。
妨害を受けたと感じている側からすれば、その場を壊すような行為は、やはり表現の自由の範囲を超えているのではないかと感じても仕方ないのではないでしょうか。
今回の行為は、候補者としてとっている行動のため、法的な拘束力を発揮しづらいのかもしれません。もしこれが候補者ではなく第三者として同じ行動をとっていたらまた別の話なのでしょう。
実は、この候補者にさえなればという点が今後問題になる可能性があるのです。これまでも売名行為を目的に立候補し、選挙に当選することを目的としているとは考えにくいような選挙戦を戦っている候補者はいました。
ですから、こうした候補者が出てこないように300万円という高額な供託金を設定しているわけですが、つばさの党の様に資金支援も潤沢にあるような政治団体には、供託金の有無はあまり関係ないのです。
一方で、財政的に困難ではあるが政治的な行動に意欲的な候補者が立候補できなくなるという問題が生じるわけですから皮肉です。多くの考えが乱立する様なにぎやかな選挙は、互いの言論の自由を保障するためのルールが必要ですし、モラルも必要です。今回の東京15区の選挙でも明らかになりましたが、有権者は選挙戦での立候補者の姿を見てその人やその団体の考え方を判断しています。その証拠にこうした選挙の妨害に近いような行為をした団体が得た票は、全候補者の中でもっとも低いものでした。
今、公職選挙法の見直しも含めその運用の在り方が問われています。正常な民主主義における選挙とはどのようなものであるのかを私たちは考えていく必要があるのかもしれません。

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