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パンクはシングルだ!

パンクロックが好きだ。
しかしいくら好きだとは言え何曲も何曲もアナーキーがどうとかロンドンに火を放てとか聴いてるとダレてくるんだよな。
それは過激な音楽ほどその傾向が強く、ヘヴィメタルでも何曲も何曲も地獄がどうとか神への反逆がどうとか聴かされるとやっぱりゲップが出てしまう。
そもそもパンクというジャンル自体に音楽的な深みという物がない。シンプルなスリーピースバンドによるシンプルかつ過激な音楽。しかしその勢いというのは武器にもなるが弱点にもなる。シングルとして1曲だけ聴く分には過激でスピードと勢いがあってカッコいいと思えるんだが10何曲も収録したフルアルバムだと緩急が無く単調で通して聴くとつまらない。セックス・ピストルズだって「勝手にしやがれ」の1枚しかフルアルバムを残せてない。シングル盤にこそパンクの全てが宿っているのだ。パンクとかメタルというのは小規模なクラブで沢山のバンドが対バンして、そこで2~3曲くらいやると息切れせずみんなで熱く盛り上がれるし丁度いいのであって、大規模なアリーナ向けの音楽ではないのだ。パンクとは短距離走、瞬間爆発、線香花火でありラモーンズみたいに1曲も2分くらいの短さが丁度いいのである。
ラモーンズは曲も短いがライブも短い。その理由は「みんな明日仕事とかあるだろ?あんま長いと疲れるしさ」という、パンクスにだって明日仕事があり日常があるという極めて地に足のついた想像力に由来する。この精神はパンクというのが押し込められた労働階級の若者らの不満のはけ口になっていたという面を色濃く反映している。自分もオールナイトのクラブなんかに行くと夜10時~朝の5時までの間は流石に疲れる。眠いししんどいし曲もダレダレだし最後の方は誰しもが焦燥しきっている。それよりか30分くらいのミニライブの方が健康にいいような気がする。1995年にスラッシュメタルバンドのSLAYERが来日した時に友人に誘われて東京でのライブに行ったんやが、正直言ってどれも似たような曲ばかりですぐに飽きてしまった。やっぱりこのバンドも2曲やるくらいが相応しいバンドに思えた。そして学生時代に大好きだったドイツのバンド、指輪物語やエルリック・サーガなんかを取り入れて歌にしていたブラインド・ガーディアンも初期はスラッシュメタル的なサウンドだったんだけど4枚目のアルバムからオーケストラを意識し以後壮大なスケールのロックオペラ路線に鞍替えするんだ。その方向転換はかつて壮大なスケールの70年代プログレッシブ・ロックに対するアンチとして生まれたヘヴィメタルという物が紆余曲折あってプログレ的なモノへと回帰するのがおもろいなと思った。その路線変更があったからこそ30年以上バンドが続いているのだろう。元のスラッシュメタル然としたサウンドだと早々にネタ切れになりバンドはとうの昔に解散していたと思う。
80年代イギリスのNWOBHMの時代もほとんどのバンドがシングルを出してその後息切れを起こして消えていった。これもわずか2年しか続かなかった短命なムーブメントだった。
そしてパンクロックはスカと融合したりスラッシュメタルと融合したり、またはラップと融合して形を変えて現代でも生き残っている。過激な音楽もたまに聴く分には最高だ。

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