004-カラテキッド

ソフィア駅から列車に乗り、ヴェルコ・タルノヴォ駅まで。
映画とかではみたことがあったけど、向かい合わせの席が2列で一部屋のコンパートメントと呼ばれる車内は人もまばら。

列車が動き出し、いよいよ旅がはじまったと感じた瞬間。
窓の外から見える景色は、街中を数十分走っただけで周りは山や林の中。
何駅目に停まった時かは覚えていないが、コンパーメントの引き戸が開き、若男女のカップルが入ってきた。途中駅で人が増えて席の空きもなくなってきたものだと思い、特に気にも留めなかった。

はじめのうちは2人で話していたけど、ふと英語で話しかけられた。
日本人か?日本が好きだとかなんとか。そんなことを言っていたかと思う。

まあ、こっちは英語よくわからないし、適当に受け答えをしていた。
そのうちなんだか、日本のお金とブルガリアのお金を両替してあげると。
その頃のブルガリアでは、正規の両替をすると証明書のようなものが発行されて、出国時にブルガリアの通貨レヴァ?だったかを外国の通貨に戻すときに必要だったんだ。闇両替は正規の10倍以上のレートで交換できた。政情や経済が不安定でモノもないという時期のブルガリアでは、外貨を持っていることが有利だったみたい。イマノニホンミタイダナ。

ソフィアでは、最低限の両替しかしていなかったの、その話にのって両替をすることにした。とりあえず、現金でも持っていた中から10ドル紙幣を出し、交換という時。
相手の若い男がナイフを出してきた。女の方は逃げ道を塞ぐようドアの方に立つ。
え?やばいじゃんと思ったのと同時に、横に置いてあった大きなバックパックを男めがけて投げつけ怯んだ隙に、女の方に向かって空手のような構えで威嚇してみた。まさかのエセ空手ポーズにこれまた怯んだ女を押しのけ、戸を開けてコンパートメントの外に出ることに成功!

戸を全身の力を込めて押さえつける。中から必死に開けようとする男女のカップルとの攻防戦。
その戦いは長くは続かなかった。騒ぎを聞きつけた近くの客室から乗客が出てきて大騒ぎ。ナイフを出してお金を取られそうになったんだ!となんとか英語で伝えるとまわりの乗客も戸を押さえるのを手伝ってくれた。

そのなこんなしていると車掌が来て、ドアに鍵をかけ出られないようしてくれた。

なんとか助かった。。。

次の停車駅でその2人は降ろされ、自分の荷物を確認するよう言われ、何も取られずに済んだこと、怪我もしていないことを伝えると、カップルは警察らしき人たちに引き連れて行かれた。

こんな映画のようなことって起きるんだと。

そして列車は駅を出発し、車掌から「ここなら安心だろ。」と、車掌室のそばのコンパートメントに案内され、目的地まで向かうことになった。



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