3104丁目のダンスホール

18歳の春 地元を離れ、東京での生活が始まった。

あの頃はインターネットなんてなく、噂で聞いていた新宿三丁目のロックバーに初めて足を運んだ。

田舎町から出てきた自分にとっては、大人の世界。新宿三丁目の地下鉄を降りてニコマートに寄ってタバコを買う。店を出てすぐ、いかにもという人がたくさんたむろした店の前。

新宿ローリングストーン

店は、赤い看板にストーンズのロゴ。
入り口につながる地下へ階段。
前の人について降りていくが、すでに店内の爆音が鳴り響いている。

扉を開けると店の中の音が鳴り響き、店員の女が、大声でチャージを要求してくる。
お金を支払うと人をかき分け、奥にあるカウンターでドリンクをもらう。とりあえず瓶ビール。

店内は老若男女様々な客でごった返し、みな身体をくねらせながら踊っている。

ビールを片手に店カウンターとは反対の店の奥に向かうと、アクリル板で囲われたDJブース。
その先にはテーブル席が3つ。吸い殻で埋もれた灰皿に空き瓶が転がっている。
店員がたまに来ては片付けているようだけど追いついていない。
空いていそうな場所を探すとカウンターの端だけだった。

初めての店、様子を伺うためにカウンターに立ち、ビールを飲みながらタバコを吸う。精一杯大人ぶってなめられないように振る舞う。

1人の女に声をかけられる。
「火、貸してくれる?」

自分より少し年上かなという感じの女2人。そこから仲良くなり30年経った今でもつながりが続く。

当時女子高生だった友達。

ニコマの店員。

ハーレー乗りのゼロファイターの面々とジョン。

テーブル席で座り込んで放尿しちゃうOLのあの子。

出身地も仕事もみんな違う同世代の友達。

たくさんの仲間が増えた。

ストーンに行っては、途中抜けてニューサザエで踊ったり、芙絵怒羅でまったり。69やBLACKとはしご。今でも残ってるのはサザエとBLACKくらいなのかな。
吉祥寺のクラブでイベントやってるから行こう!恵比寿のクラブでイベントやってるってよ!といった口コミだけのイベント、アディクトとか呼んでたかなが流行っていたのもその頃。

f.o.a.dのライブによく行ってたな。ベンジーと達也が来て飛び入りしたり。
様で飲んでそのままチッタに行ってライブ見たり。長春館でご飯食べたり、寿司屋の外階段でパキから手に入るネタはなんでも試した。喧嘩して眉間パックリ割ったり。それ見た東高円寺のギター弾きが治療してやるって家に連れてってもらって、消毒してもらったり。
酔っ払ってあっちの人のベンツにぶつかってヒヤリとしたり。なかよくなった女の子乗せてバイクで走ったり。朝まで飲んでそのままバーベキューに行ったり。

80年代の終わりから90年代にかけて、今よりもまだまだ自由な時代。

1995年の初頭までそんな週末が続いていた。

そんな時、飲んで家に帰って寝て、朝仕事に行きたくないなと、その日はさぼっていた。

そんな時、友達からの電話。

「お前今どこにいる!?」

ん?どういうこと?

「テレビつけてみろ!」

地下鉄サリン事件だった。
いつもなら通勤で丸の内線に乗っていたけど、今日はサボったから乗っていなかった。助かったんだ。

その年は、それからというもの自分に直接ということはなかったけど、その数日後には中学からの1番の親友が亡くなった。その日もなんだか仕事に行きたく気分で、サボっていたら親友の母親からの電話で亡くなったことを聞いた。

そのあと数ヶ月経った、朝起きがけに金縛り。目は開いているのに体が動かない。何分そのままだったのかはわからない。フッと金縛りが解けたかと思ったら電話が鳴る。実家から祖父が亡くなったと。

そんな嘘みたいで不思議なことが立て続きに起こり、新宿への足も遠のいていった。

そのあとは、自分も周りも人生で一番荒んだ時期。
東高円寺のギター弾きは、バンドも停止、シャブ中。部屋で一緒に飲んでたら上の部屋のやつがテレビのチャンネル勝手に変えるとか言い出したり、そのあと数週間後には2階から飛び降りて骨折したとか。
桜上水のそばに住んでた、バンドマンの家に遊びにいったら四畳半一間のボロアパートでポンプ打ってるわ、四谷の住宅街でネタ受け取ったりと、もうクソみたいな数年間。

そこから抜け出すきっかけになったのはバイク。19で免許取って、ビラーゴ、SR、限定解除して、スポスタ、GPZ900Rときて、そこで気がついた。こんなことやってら死ぬなと。シラフでバイク乗ってるの楽しいじゃん。頭の中にはお気に入りの音楽が鳴り響き、首都高、湾岸道路と夜な夜な繰り出しては気持ちをリセット。

すっかりシラフでバイクに乗るのが楽しくなっていった。

今では、1人で峠に行って、あてもなく半日ほど走り続けるのが休日の楽しみになっている。

つべこべ言わずに黙って走れ。

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