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令和2(2020)年7月豪雨による人的被害についての調査速報(2020年8月7日版)

 当方ではこれまで,風水害犠牲者の発生状況についての調査を継続的に行っています.あらましは下記記事をご覧下さい.

 今回の令和2年7月豪雨についても同様な調査を実施中です.8月7日時点までの調査結果を簡単にとりまとめたので,以下に公表します.なお,新型コロナウィルス感染症の流行状況を考慮し,本災害に関しては一切の現地調査を見合わせています.行政資料,報道,地理的情報等の資料解析にもとづく調査結果であることをご理解ください.

調査速報の要旨

人的被害の概要
・犠牲者数は1999年以降で上位5位,主な家屋被害は上位9位.人的被害,家屋被害ともに多めであった可能性
・九州から中部地方までの広域で犠牲者発生だが,集計対象84人中の65人が8月4日の球磨川付近に集中
犠牲者発生の原因外力
・水関連犠牲者(「洪水」「河川」)が8割で,近年の風水害としては極めて高い
犠牲者発生場所
・「屋内」が7割程度で,近年の風水害としてはかなり高い比率
・水関連犠牲者は「屋外」が多いことが近年の風水害の傾向だが,今回は水関連犠牲者が多いにもかかわらず「屋内」が多かったことが特徴的
・「屋外」犠牲者中,「車内」「歩行中」は4割で,近年の風水害と整合的
避難行動
・「避難行動あり」犠牲者率は1割で,近年の風水害と整合的
災害危険箇所と犠牲者発生場所
・「土砂」犠牲者は全員が土砂災害危険箇所「範囲内」「範囲近傍」で,近年の風水害と整合的
・「洪水」「河川」犠牲者の9割が浸水想定区域「範囲内」.近年の風水害に比べ極めて高い比率
・「洪水」「河川」犠牲者の8割が地形的に洪水の可能性がある「低地」で発生.「山地」が2割弱でやや多い.球磨川狭窄部沿いの斜面で発生しており,山地河川洪水で見られる形態
・球磨川狭窄部沿いでは,比較的珍しい,洪水で家屋流失による犠牲者が少なくとも3棟,6人発生

調査速報本文(PDF)

 本災害についての当方の調査結果については,以下のマガジンにまとめていきます.

 なお,今後も新型コロナウィルス感染症の流行状況を考慮すると,現地調査は見合わせざるを得ないと考えています.現地を見ないと分からないことも多いのですが,苦渋の選択です.このまま現地調査は断念という事になることも想定に入ってきました.

記事を読んでいただきありがとうございます。サポートいただけた際には、災害に関わる調査研究の費用に充てたいと思います。