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能登半島地震 死者・行方不明者の氏名公表について考える

 能登半島地震により亡くなられた方は、1月4日朝時点では73人と報じられています。すでに2016年熊本地震の直接死者50人を大きく上回り、戦後の地震災害による死者数としては1983年日本海中部地震の104人に次ぐ規模となってしまいました。大変心が痛みます。
 今回の地震による死者・行方不明者については、1月3日夜に一部の安否不明者15人のお名前が公表され、4日朝までにうち10人の安否が確認されたと報じられています。

 一方、亡くなられた方のお名前については4日朝時点で行政機関からの公表はなされていないようです。

 災害時の死者・行方不明者の氏名等の公表については、近年まとまった規模の災害の都度様々な議論が行われてきました。全国知事会は、2021年に「災害時の死者・行方不明者の氏名等公表に係るガイドライン」をとりまとめています。このガイドラインでは、特定の方針を明記はせず、各自治体における実例をもとに、死者・行方不明者の氏名公表のメリット、デメリット、留意点などが整理されています。
 また、内閣府は2020~2021年にかけて「防災分野における個人情報の取扱いに関する検討会」を開催しました。このなかで、安否不明者については発災時において基本的にその氏名は公表できる旨の整理がなされています。ただし、死者については個人情報保護法の対象外であることから同検討会では取り扱わないと報告されています。

 筆者は以前からこの件について関心を持ってきたところで、たとえば下記記事などにまとめています。

 筆者の基本的な考え方は、災害時の死者・行方不明者のお名前、大まかな住所(大字程度)、亡くなられた状況などの情報は、住民基本台帳の閲覧制限が行われているケースなどを例外として、基本的には公表した方がよいのでは、というものです。詳しくは上記記事を参照いただきたいですが、災害時に行われる「安否確認行動」(知人等の安否を確認するための情報収集を行うこと)においては、安否が不明であるということだけでなく、亡くなられてしまったということも、痛ましいことではありますが重要な情報ではないかと思うことなどからです。災害時には、わずかな手がかりでも欲しいと考えるケースが少なからずあるのではないかとも思います。他にも理由はありますが、詳しくは上記記事を参照して下さい。
 今回、実際に自治体に安否確認の問合せが多く寄せられているとの報道もあります。

 この件は微妙な内容であり、非常に意見が分かれるところだと思います。「こうすべきだ」などと言うつもりはありません。また、発災時に行政的に行う事は膨大な量に上り、死者・行方不明者の氏名等の公表をどうするかという事はその中の一業務だろうと思います。それだけに多くの時間を割くことは難しいとも思います。1つの考え方として、ここに記しておきたいと思います。

※冒頭写真は岩手県陸前高田市東日本大震災追悼施設にある東日本大震災犠牲者刻銘碑


記事を読んでいただきありがとうございます。サポートいただけた際には、災害に関わる調査研究の費用に充てたいと思います。