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水害時の車関係犠牲者は「車内に閉じ込められて遭難」が一般的とは言えない

 最近自分の調査結果が引用されている場面でちょっとまずいなと思うところがいくつかあります.そのひとつ.昨年の台風19号等で,車で移動中の犠牲者が多かった事という調査結果を自分で出しているのですが,分類名の「車内」が,「車内に閉じ込められて死亡した」と受け止められていることがあるようで,これはちょっと違います.

20191216_T201919+人的被害-抜粋

 私の調査での「車内」とは,遭難した際,もっと言うと,遭難しはじめた際に車(自転車バイク含む)で移動中または駐車中(これはごくわずか),という意味です.車から出られずにいるところ浸水が進んで,というケースも確かにあるけど,車から出て,車外で流されたと思われるケースもかなりあります.あるいは,車ごと河川に転落あるいは洪水流に巻き込まれ,脱出のいとまもなく流されただろうというケースも結構あります.

 先日ざっと数えたところでは,約20年間の水関連犠牲者で車移動中は158人ほど,うち車内で発見は少なくとも25人のようでした.無論,車内で発見されなかった人は皆車外に出ていたとは限らないですが,車と一緒に発見された方があまり多くないと言う事は,車が次第に浸水して脱出できずにという,あえて言うと「穏やかな」状況での遭難は,必ずしも多くないのでは,という気がします.

 このあたりはもう少し整理が必要で,今はあまり断定的な事は言えません.そして,車からの脱出手段(脱出用ハンマーとか)の用意自体はどうでもよい事とは思わないですが,それで軽減できる被害は限定的かもしれないとは思います.一方,水関係での車関係犠牲者のほぼすべてに適用できる回避策は「風雨が激しいときに水に近づかない」だろう,とは言っていいでしょう.

 冒頭写真は,2016年台風10号での北海道清水町で,橋の取り付け部から車が転落し,死亡したと推定される現場付近.車は現場下流で発見されましたが,運転していた方は行方不明に.この状況で,脱出用ハンマーはあまり関係ない気がします.

 まあ,「脱出用ハンマー」という「グッズの用意」の方が,「わかりやすい」し「対応した満足感」が「買うという簡単な作業」で実現するから,やっばり人気は上がるよね,とはおもいます.

記事を読んでいただきありがとうございます。サポートいただけた際には、災害に関わる調査研究の費用に充てたいと思います。