見出し画像

洪水・土砂災害ハザードマップの意義と注意点

「洪水・土砂災害ハザードマップの意義と注意点」記事執筆

 独立行政法人国民生活センターの定期刊行物に「国民生活」というものがあります.といっても私も最近まで知らなかったのですが.この「国民生活」2020年6月号に「洪水・土砂災害ハザードマップの意義と注意点」という記事を執筆させていただきました.

 記事は「洪水・土砂災害は(主に)起こりうるところで発生する」という,日頃から私が言っている話から始まります.その上で,ハザードマップを利用する上での注意事項として「そこに書いてある通りのことが起こるわけではない」「だからといって信用できないものというわけではない」という話を続けます.

 記事後半は,国土交通省「重ねるハザードマップ」の使い方についての私なりの解説です.「重ねるハザードマップ」の使い方については色々と解説があるところですが,私の記事では,全国同一のインターフェースで使えることなど,高く評価しつつも,よく知らないと陥りがちな誤解のポイントを挙げています.たとえば,「洪水」アイコン押しても浸水想定区域(計画規模)は表示されないとか,地図を最大に拡大するとハザードマップ情報は消える(でもそれはとても適切な仕様!)とかいった話です.

動画・国土交通省「重ねるハザードマップ」を使う上での注意点

 この記事を書いたついでに,「重ねるハザードマップ」を使う上での注意点について,動画を作成してみましたので掲示します.「国民生活」の記事では触れなかった,「河川は浸水想定区域ではないですよ」という話も収録してあります.

拡大するとハザードマップが消える(とてもよい)

 動画で使ったスライドから.「重ねるハザードマップ」では地図を最大に拡大すると浸水想定区域などのハザード情報が消えます.これは情報の精度という観点から高く評価できることです.ただ,いずれ「自宅の危険性がわからない」というクレームに負けて表示できるようになってしまうと予想しています.私はよく「自宅付近でどのような災害が起こりうるか,ハザードマップで確認することが重要」と言っています.しかし,「自宅」という「点」だけを見ることを勧めてはいません.あくまでも「自宅付近」.ハザードマップはやたらと拡大するのではなく,少し引いて見て,だいたいどのあたりでどんなことがありそうか,くらいに捉える方がいいと思います.

スライド7

河川敷は浸水想定区域ではないが洪水の危険性がある

 もう一枚スライドを.河川(河川敷という方が誤解がないかも)は浸水想定区域ではないので浸水想定区域としては表示されません.だからといって「洪水に対して安全」な訳はありません.「河川」なんですから,そこが駐車場や公園になっていたとしても,大雨の際には当然水は流れます.「公園になっているから安全確保されている」訳ではありません.河川に関わる人は「そんなことまで説明が必要なのか」と思うかもしれませんが,残念ながら世の中そんなものだと思います.

スライド8

「想定最大」だけでなく「計画規模」も表示しないと

 もう1点.「重ねるハザードマップ」の「洪水」アイコンを押して表示されるるのは,「浸水想定区域(想定最大)」だけで,「浸水想定区域(計画規模)」は表示されません.これについては「国民生活」に掲載した図を示しましょう.「想定最大」はまだ情報未整備の流域がかなりあります.このため,「想定最大」だけを表示すると,あたかも洪水の危険性がないかのように誤認してしまう地域が生じてしまうことが懸念されます.

画像3

画像4

 とはいっても,「重ねるハザードマップ」は大変よい情報源です.活用されていくことが望まれるところです.


記事を読んでいただきありがとうございます。サポートいただけた際には、災害に関わる調査研究の費用に充てたいと思います。