懸垂線

糸の両端を固定して垂らしたときに,糸がつくる曲線を懸垂線(カテナリー)という.変分法を用いて,この曲線の方程式を求める.
糸の線密度を $${\rho}$$ とし,両端を点 $${(-x_0,\,y_0)}$$ と点 $${(x_0,\,y_0)}$$ に固定する.また,糸の長さを $${L}$$ とする.
束縛条件

$$
\displaystyle L=\int_{-x_0}^{x_0} \sqrt{1+y'\,^2}\,dx
$$

のもとで,糸の位置エネルギー $${U}$$ が最小になるような曲線 $${y=y(x)}$$ を求めればよい.

$$
\displaystyle U=\int_0^L g\rho y \,ds=g\rho \int_{-x_0}^{x_0} y\sqrt{1+y'\,^2}\,dx
$$

以下,$${g}$$,$${\rho}$$ は定数であるので積分の部分のみを考える.Lagrange の未定乗数法を用いて

$$
\displaystyle\int_{-x_0}^{x_0} y\sqrt{1+y'\,^2}\,dx-\lambda\int_{-x_0}^{x_0} \sqrt{1+y'\,^2}\,dx=\int_{-x_0}^{x_0}(y-\lambda)\sqrt{1+y'\,^2}\,dx
$$

とし,$${f=(y-\lambda)\sqrt{1+y'\,^2}}$$ がベルトラミの公式を満たすように $${y}$$ を定める.

$$
\displaystyle\frac{\partial f}{\partial y'}=(y-\lambda)\frac{y'}{\sqrt{1+y'\,^2}}
$$

であるから

$$
\displaystyle(y-\lambda)\sqrt{1+y'\,^2}-y'\cdot(y-\lambda)\frac{y'}{\sqrt{1+y'\,^2}}=C
$$

よって

$$
\displaystyle\frac{y-\lambda}{\sqrt{1+y'\,^2}}=C
$$

これより

$$
\displaystyle\left(\frac{y-\lambda}{C}\right)^2=1+y'\,^2
$$

となるので $${\displaystyle\frac{y-\lambda}{C}=u}$$ とおくと

$$
\displaystyle\frac{du}{dx}=\pm\frac{1}{C}\sqrt{u^2-1}
$$

が得られる.したがって

$$
\displaystyle\int\frac{du}{\sqrt{u^2-1}}=\pm\frac{1}{C}\int dx
$$

左辺の積分は $${u=\cosh t}$$ とおいて置換積分ができる.$${du=\sinh t \,dt}$$,$${\sqrt{u^2-1}=\sinh t}$$ より

$$
\displaystyle\int\frac{du}{\sqrt{u^2-1}}=\cosh^{-1}\,u
$$

ゆえに

$$
\displaystyle y=C\cosh\left(\frac{x}{C}+D\right)+\lambda
$$

積分定数 $${D}$$ は,$${y}$$ は $${y}$$ 軸対称であることを考慮すると $${D=0}$$ となり,定数 $${C}$$ および $${\lambda}$$ の値は,$${(\pm x_0,\, y_0)}$$ を通ることと曲線の長さ $${L}$$ から定めることができる.以上より

$$
\displaystyle y=C\cosh\left(\frac{x}{C}\right)+\lambda
$$

が求める方程式である.

【参考文献】
裳華房『力学II 解析力学』原島鮮 1973

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