集める愉しみ:香炉編
香道への興味が高まってくると、あらゆる香道関連の書籍を読み漁った。歴史のある香道には、手に入る書籍とそうでないものとがある。
貴重な文献は、国立国会図書館に行ってコピーして読んだ。古文のような文章も多く、読むのにかなり苦労した。通勤中は小説を読むのが常だったが、当時は香道関連の書籍を読んでいた。自分の勉強のためということもあるが、香道を知る誰かが話しかけてくれないかという下心もあった。生の情報が欲しかったのだ。
香雅堂さんに初めて足を運んだのはその頃だ。その時には、奥様にご対応いただいた。白磁の香炉を購入させていただいたのだが、静かに語ってくださるその後ろに、凛とした芯を感じた。いまも香雅堂さんに行ったり、体験香席に参加させていただいたりするとお目にかかることがあるが、心地よい緊張感に包まれる。
実は、奥様にはこの場を借りて懺悔したいことがある。おすすめいただいた香炉を金箔で覆ってしまったことだ。年一回、大みそかの日の晩に金箔を重ねている。もう何重になっただろう。この香炉には大変な思い入れがある。
香道に興味を持って以降、十分時間が無い時には電子香炉を、集中して向き合える時間を確保できる時には金箔香炉を使う。目を閉じて香木と対峙した後、目を開けると、そこにはキラキラ光る金箔の香炉。「好きなものに囲まれる」まさに至福の時間だ。少しずつ、本当に少しずつだが、使えるお金の範囲内で道具もそろえてきた。
火道具も香雅堂さんで購入させていただいたが、写真付きの書籍に象牙の火道具が掲載されていた。「かっ可愛い、いや、カッコいい!とにかく良い」値段を見ると!?!? 全く手が出ない。よし! 自分で作ろうと思った。象牙店に端材を譲ってくれないかと相談。用途を伝えると「うちで作れます」との回答が大半。そうではないのだ。お金がかかり過ぎてはいけないし、自分で作ってみたかった。
縁あってある店でお譲りいただけたのだが、そのご主人から象牙の取扱方法を教えていただいた。「自分でやってみたいんでしょ?分かるよ。紙やすりは●●番が良いよ」。マット加工にするか、艶出しにするかは好みだが、艶出しにするなら細か目の紙やすりで磨いた後、コンビニのレシートの裏面で磨き上げると素晴らしい艶が出ることも知った。
端材の象牙をレシートで磨いてつくりあげた火道具。文字にすると「いかがなものか」であるが、私の大好きな相棒である。
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