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中間世界をスケッチすること

中つ国とは、中央の国のことであり、あるいは真ん中の世界のことであり、何かと何かの間の世界のことである。
日本のことを「葦原の中つ国」とよぶのは、「高天原」と「黄泉の国」の「間にある世界」だからであり、西洋において、妖精の世界を「ミドルアース」とよぶのも、天国と地獄の「中間の世界」、悪でも善でもない存在のための世界という意味があるからである。

宮澤賢治は、自らの作品を「心象スケッチ」と表現した。

【この童話集の一列は実に作者の心象スケッチの一部である】
【けっして畸形に捏ねあげられた煤色のユートピアではない】
【これらはけっして偽りでも仮空でも窃盗でもない】
「虚構の世界」とは異なることが強調されている。

【たしかにこのとおりその時心象の中に現れたものである】
【ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです】
【たゞたしかに記録されたこれらのけしきは 記録されたそのとほりのこのけしきで】
【そのとほりの心象スケツチです】
現れたものを、ありのままに描いたことが語られている。

【心の深部において万人の共通である】
【ある程度まではみんなに共通いたします】
すべての人間に共通のものであることを強調している。

抽象的な数学世界は、現実には存在しないが、虚構ともいいきれない。
なぜなら、そこは独自の法則が支配している領域で、全てが自由に許可された世界ではない。まさに「現実」と「虚構」の「中間世界」なのである。

そこで賢治に倣って、「中間世界」の心象スケッチを提唱したい。
数学者は、論理記号と数式をことばとして、「中間世界」をスケッチしているのだ。

【すべてこれらの命題は 心象や時間それ自身の性質として 第四次延長のなかで主張されます】


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