輓近高等数学講座第2巻より

ガウスが進んだ道は即ち数学の進む道である。その道は帰納的である。特殊から一般へ!それが標語である。それは凡ての実質的なる学問に於て必要なる条件であらねばならない。数学が演繹的であるというが、それは既成数学の修行にのみ通用するのである。自然科学に於ても一つの学説が出来てしまえば、その学説に基づいて演繹をする。しかし論理は当たり前なのだから演繹のみから新しい物は何も出て来ないのが当たり前であろう。若しも学問が演繹のみにたよるならば、その学問は小さな環の上を永遠に周期的に回転する外はないであろう。吾々は空虚なる一般論に捉われないで、帰納の一途に精進すべきではあるまいか。
(高木貞治「書カレナカツタ楕圓函數論」より)

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