芸術史(日本4)のレポート
はじめに
このレポートは京都芸術大学通信課程の在学中に書いたものです。最初、どのようにレポートを書けばいいのか悩んだ経験から、誰かがレポートを書く際の参考になればと思って投稿しています。
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レポート本文
歌舞伎
歌舞伎は、宮中で幼い子供たちが踊っていた「ややこ踊」を「出雲のお国」が大人の鑑賞向けに官能的な芸「かぶき踊」に発展させ、慶長八年に京で踊ったことにはじまる。その後「かぶき踊」は遊女たちに模倣され「遊女歌舞伎」として広まっていった。「遊女歌舞伎」の大きな特徴は三味線が取り入れられたことである。「かぶき踊り」も「遊女歌舞伎」も四条河原の仮設小屋や北野神社の境内、吉原などで舞台が設けられたが、踊りがメインのため背景などの舞台機構はなかったことが「歌舞伎図巻」「四条河原遊楽図屏風」から分かる。
寛永六年に「風俗を乱す」という理由で女芸の禁止令が江戸幕府によって発令され女性による歌舞伎は姿を消し、歌舞伎は男性で元服前の少年による「若衆歌舞伎」と男性が演ずるものへと変わる。「若衆歌舞伎」は能や狂言をベースにしたものが中心であった。女芸が禁じられていたため、男性が女性を演じる「女方」で女性を演じていたが、こっそり女性を出演させていたため「若衆歌舞伎」にも禁令が発令されたため元服した男性による「野朗歌舞伎」へと歌舞伎は絶えずに継承されていく。「野朗歌舞伎」の演目はある程度長く複雑な物語を演じる「続き狂言」と演劇的に発展していたが、背景などの舞台機構はなかったことが「都万太夫座屏風」からうかがえる。演劇的な発展と共に「立役」などの今に引き継がれている役柄の形式が確立し、華やかな元禄期になると上方では初代坂田藤十郎の「和事」江戸では初代市川團十郎の「荒事」が確立されるが、歌舞伎の舞台は能や狂言などの能舞台の形式であった。その後享保の改革の影響で歌舞伎は低迷期に入り、それを打開するため大阪を中心に黄金時代を迎えた人形浄瑠璃の「義経千本桜」などの演目を歌舞伎化して上演するようになる。
浄瑠璃の作者としての経験もある並木正三は、脚本家として浄瑠璃を歌舞伎に取り込んだだけではなく、舞台機構を考案し、歌舞伎の進化に大いに貢献した。「けいせい天羽衣」で舞台の一部が上下する仕組みである「セリ」、「三十石艠始」で舞台下の奈落で操作し舞台を180度回転させる大掛かりな「廻り舞台」、「霧太郎天狗酒醼」で大道具を90度後方に倒して場面転換を行う「がんどう返し」、大道具の下に車をつけ情景を変化させたり場面を転換する「引き道具」、綱を使って役者を吊り上げ舞台や客席上を移動する「宙乗り」など現在の歌舞伎で使用されている舞台機構の多くが考案されたのである。「廻り舞台」は回転コマをヒントしたとのことだが、並木正三が人形浄瑠璃の作者としての経験もあることから、人形浄瑠璃の「盆回し」もヒントになったのではないかと推測する。これらの舞台機構により歌舞伎はダイナミックな演出が行われる舞台へと大きく発展する。
現在では、中村勘九郎・七之助による江戸の芝居見物を体験できる平成中村座、市川猿之助の現代風歌舞伎であるスーパー歌舞伎、中村獅童の最新技術との融合の超歌舞伎、海外でのプロジェクトマッピングを使った公演など新しい試みも行われている。歌舞伎は脈々と受け継がれているだけではなく、常に新しいものを取り入れ進化している日本の芸術である。
(本文総文字数 1309字)
註・参考文献
歌舞伎用語案内 並木正三 https://enmokudb.kabuki.ne.jp/phraseology/3622/ (2022年8月24日閲覧)
松竹株式会社 エンタテインメント歌舞伎考 第6回 幻惑する廻り舞台 https://www.shochiku.co.jp/play/enjoy/kabukikou/vol6/ (2022年8月24日閲覧)
出石永楽館 http://eirakukan.com/?page_id=1374 (2022年8月12日閲覧)
エンタメホール 日本の伝統的な劇場:歌舞伎 https://www.homemate-research-hall.com/useful/13113_hall_005/ (2022年8月24日閲覧)
文化デジタルライブラリ https://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/ (2022年8月24日閲覧)
松竹ホームページ 南座・歌舞伎座・大阪松竹座・新橋演舞場 https://www.shochiku.co.jp/play/theater/ (2022年8月25日閲覧)
蛇足などなど
2022年夏期に書いたレポート。
歌舞伎の舞台装置の創始者である並木正三にスポットを当てて書いた。
80点。
歌舞伎の歴史背景をベースに、舞台装置の進歩により、現在のダイナミックな舞台へと発展したという仮説を立てて構成した。
最初に書き上げた時に大幅に文字数がオーバーしていて、相当削った記憶が…