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十一月に~その名はカフカ番外編

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長編小説『その名はカフカ』の番外編である中編『十一月に』の収納箱です。
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#ハシボソガラス

十一月に 5

十一月に 4  展示室の中で鳴り響く玄関先のベルの音は、工房まで聞こえる。わざとそれくらい大きな音にしているのだが、この日来客の予定がないヴォイチェフはベルの音を聞いても、片眉を上げて横目で壁の柱時計を確かめただけで、作業する手は休めなかった。もう一度、ベルが鳴った。しかしヴォイチェフは仕事を続けた。時間は午後四時を回ったところで、普段からこの時間帯は一番仕事に集中できることもあり、接客の予定は入れないようにしている。予期せぬ訪問など、相手にする理由はない。しかし一分ほどの

中編『十一月に』追記~鴉はやはり沼であった

蓋を開ければ「カフカの番外編」であった中編小説『十一月に』。 全六話で隔日で投稿しましたので、何だかあっという間の連載でしたが、正直、楽しんでいただけた方がいらっしゃったのか、自分では全然判断がつきません。 執筆を開始したのは『その名はカフカ』第四部Modulaceを終了した直後4月25日で、5月6日に最後まで完成させてから投稿し始めました。 もともと「カフカの連載を終えてしまった寂しさを紛らわすため」に書き始めたのですが、前々から書きたいと思っていた部分を扱ったこともあ