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十一月に~その名はカフカ番外編

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長編小説『その名はカフカ』の番外編である中編『十一月に』の収納箱です。
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十一月に 5  十一月も終わりに近づき、朝の冷え込みが更に厳しくなった。この冬は暖冬になると何度か耳にしたが、店の前の車道に陽だまりができるようになる九時くらいまでは正直あまり外には出たくないな、と思いながらヴィート・スラーンスキーはピアノ展示室のデスクから車道に面した大きなガラス窓を通して外を眺めた。展示室には季節に関係なく一年を通して直射日光が入らないよう考えて建物自体が造られている。  父のヴォイチェフが病に倒れた五年前からヴィートは一人でこの中古ピアノの修理販売店を

中編『十一月に』追記~鴉はやはり沼であった

蓋を開ければ「カフカの番外編」であった中編小説『十一月に』。 全六話で隔日で投稿しましたので、何だかあっという間の連載でしたが、正直、楽しんでいただけた方がいらっしゃったのか、自分では全然判断がつきません。 執筆を開始したのは『その名はカフカ』第四部Modulaceを終了した直後4月25日で、5月6日に最後まで完成させてから投稿し始めました。 もともと「カフカの連載を終えてしまった寂しさを紛らわすため」に書き始めたのですが、前々から書きたいと思っていた部分を扱ったこともあ