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リトルリーグ・ワールドシリーズ2021観戦記

リトルリーグ・ワールドシリーズは毎年ペンシルバニア州ウィリアムズポートで8月に開催されるリトルリーグの世界一を争う大会。日本ではリトル時代の清宮選手が投打に大活躍して優勝したことで知られている方もいると思います。

なんとその大会にうちの子供が属しているチームの一歳上の12Uチームが出場を決めたので、応援するためにウィリアムズポートまで行ってきました。今回はリトルリーグワールドシリーズとそこまでの過程を書いてみます。

リトルリーグ・ワールドシリーズとは

1947年に第一回大会が開催され、それ以降去年を除いた毎年行われているとても歴史のある大会。今回はその第74回大会になります。開催地のウィリアムズポートはリトルリーグの発祥地。地理的にはペンシルバニア州北部に位置しており、小高い山が多くかつては製材業が盛んだったそう。フィラデルフィアからは車で3時間程度のアメリカの典型的な田舎町。

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例年だとアメリカのチームに加え海外からのチームが参加して、まずはアメリカチーム、海外チームそれぞれのチャンピオンを決め、その勝者が最後に試合を行いワールドシリーズチャンピオンを決めるのですが、今年はコロナの影響で海外チームの参加はありませんでした。

日本は過去11回ワールドシリーズチャンピオンになっています。個人的に意外なのは台湾が過去17回優勝していることで、特に1970年から90年代にかけて何度も優勝しています。ただし2000年以降の優勝はありません。

今年の大会は海外チームの参加がないため通常アメリカ国内の各リージョンから1チームの参加のところ2チーム参加となり計16チームが出場権を得ました。

リージョン

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ワールドシリーズ出場までの道のり

ワールドシリーズ出場までにはまずDistrict、Sectional, Stateを勝ち進む必要があります。

DISTRICT 州によってDistrictとSectionの数は異なりますが、うちのチームがある州には全部で32のDistrictがあり、それぞれのDistrictには10前後のチームがあります。単純に300近いチームがうちの州にあることになります。

SECTION Districtで勝った次は4つのDistrictから構成されるSectional大会 (計4チーム)

STATE Sectionの次は8つのSectionから構成される州大会(計8チーム)

REGIONAL 州大会の後はそれぞれの州の優勝チームがRegional Championshipを争います。うちの場合計6州からの6チームが参加。前述したように今年はこの中からトップ2のチームがワールドシリーズ出場権を得ます。

日程

日程はこんな感じでした

District:6月24日ー7月8日

Sectional:7月16日ー7月20日

State:7月24日ー7月31日

Regional:8月8日ー8月14日

World Series:8月19日ー8月29日

かなり長丁場で選手が大変なのは勿論ですが、ほとんどのコーチは選手のお父さん・お母さんがやっているので仕事との両立がさぞや大変だと思われます。

チーム編成

リトルリーグに詳しい方は当然ご存じだと思いますが、チームは最大14名までの選手登録が可能。ただし各選手が連続した3アウトの守備機会と1打席をこなす義務があり、選手の数が多いとその調整が大変になります。

日本の場合は知らないのですが、アメリカの場合どのチームに所属するかは住んでる場所で明確に決められているので、優秀な選手を越境させて入部させることは基本的にありえません。2014年にアメリカ大会で優勝したシカゴのチームが後から越境させていたことが判明して優勝をはく奪されたことがありました。

ですので基本的にそれぞれのチームはごくローカルの子供達で結成されており、コーチは選手のお父さん、お母さんがやっています。

トーナメント方式

全てのトーナメントは今回のオリンピックの野球で採用された敗者復活が可能なトーナメント方式で行われます。こちらだとダブルエリミネーション・トーナメントと言われます。アメリカでは非常にポピュラーなトーナメント方式です。

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投球数制限

一日最大で85球。66球以上で中4日、51球以上で中3日、36球以上で中2日、21球以上で中1日となっています。

トーナメントを勝ち抜くのに一番大変なのは投手の投球数管理。どのチームもメインで先発をする選手が最低2人、それ以外に3-4人は投げることが出来る選手がいないと勝ち抜くことは出来ません。

リトルリーグは6イニング制なので85球以内で完投するには1イニング平均14球で投げる必要があります。これがかなり微妙なところで、コントロールが良くなく四球を出す投手だと完投は難しい。

ですのでチームに物凄い良い投手が一人いるが、それ以外の投手がダメでトーナメントを勝ち抜くことが出来ないことは良くあるケースです。

ファイナンシャルサポート

ワールドシリーズに参加するには経費も馬鹿になりません。特に遠方から参加するチームは交通費も嵩みます。うちのチームの場合はワールドシリーズ参加記念のグッズを販売したり、寄付を募ったりしていました。

日本や海外のチームはもっと凄いでしょうね。

コロナ渦のワールドシリーズ

今回はコロナ渦におけるワールドシリーズということで安全管理も例年以上に厳重に行われているようです。リージョナル大会から選手はホテル住まいで家に帰ることは禁止されていました。

アメリカの場合、12歳以上でワクチン接種可能となるので多くの選手は接種済みだったかもしれません。

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リトルリーグ・ワールドシリーズはEastonとAddidasがスポンサーとなっていて各選手にEastonのヘルメット、Addidasのユニフォームとスパイクが提供されています。

以前からの変更点

以前は13歳までの選手の出場が可能でしたが現在は12歳に変更されています。アメリカの学校は9月に新年度が始まるので、それに合わせて8月31日時点で12歳の選手が出場可能ということになります。

この年代はちょうど成長期に当たり一つの年の差で体格が大きく違ってきます。ちなみに清宮選手が出場したのは彼が13歳の時で既に身長が180cmを超えていました。

それとリトルリーグで使用可能なバットの規格が数年前に変更になり、以前より飛ばなくなりました。その影響もあり今回の大会ではあまりホームランが出ていません。

注目選手

今回の大会の一番の注目選手はサウスダコタのGavin Weir投手。クリス・セールさながらの投球スタイルで70マイル中盤の速球(メジャーだと95マイル相当)に加えスライダー、カーブ、ツーシームを投げ分けます。地方大会ではヒットを一本しか許しておらず、ワールドシリーズ初戦でも最後は投球数制限であと一人のところで降板しましたが強豪のルイジアナチームをノーヒッターに抑え、しかも17のアウトのうち15を三振で奪いました。

二回目の登板となる優勝候補だったカリフォルニア戦ではノーヒッターを達成。14奪三振、1四球。打っては3ランホームランと大活躍でした。

次戦の準決勝はGavin Weir投手は球数制限による休息日の関係で登板出来ず、2番手ピッチャーでオハイオ戦に臨みましたが残念ながら敗退してしまいました。

この夏の地方大会からワールドシリーズを合わせたGavin Weir投手の成績は43.2イニングを投げて自責点0、被安打1,対戦打者数132,奪三振数114と凄まじいものでした。

メジャーファンにはおなじみのPiching Ninjaでも特集されています。


ニュージャージーのカーソン・フレイジャー選手も注目選手の一人。おじさんはメジャーで活躍し今回アメリカオリンピックチームの銀メダル獲得に貢献したトッド・フレイジャー選手。そしてトッド・フレイジャーはリトルリーグワールドシリーズに出場し優勝しています。カーソン・フレイジャー選手はワールドシリーズ進出をかけたリージョナル大会で1点ビハインド6回2アウトランナー2・3塁のアウトになれば敗退の場面で起死回生のタイムリー2塁打を放ちました。こちらもメジャーファンにはおなじみのJomboy Mediaの動画にもなっています。


個人的に応援していたのはテネシー州のNolan Brown投手。左腕投手でお父さんはアメリカ大学野球の超強豪ヴァンダービルト大学のピッチングコーチ。Gavin Weir投手ほど球速はありませんがBrown投手もフォーシームとスライダーのコンビネーションが素晴らしかった。試合は延長戦になり球数制限に達したため降板した後に後続の投手が打たれてしまい、次の試合もBrown投手は投げることが出来ずにチームは敗退してしまいました。テネシーはショートの選手も好守備連発していました。


テキサスのエラ・ブルーニング選手は今大会唯一の女性選手。強肩強打の捕手で初戦では2打数2安打でチームの勝利に貢献しました。過去にワールドシリーズに出場した女性選手ではペンシルバニア州のMo'ne Davis選手が有名ですね。ホワイトハウスにも招待されました。現在は大学でソフトボールをしているそう。

使用バットとグローブ

統計は取っておらず、あくまで自分が見た範囲の印象ですがグローブはRawlingsとWilsonを使っている選手が多いようです。WilsonはA2000が人気のよう。

バットはLouisville PrimeとSelect, DeMarini Voodoo, Easton Ghostですかね。

観客制限

今回はコロナ渦での大会ということで一般観客の入場はなし。各チームに250のパスが出され、それを家族中心に配布されました。私は運よくチームのマネージャーを良く知っていたのでパスを貰うことが出来ました。

パスにはチームの州が印字されており、自チームの試合はスタジアム席、他チームの試合は外野席で観戦出来ます。

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MLBリトルリーグ・クラシック

リトルリーグ・ワールドシリーズを開催中にメジャーの試合をウィリアムズポートにある普段はマイナーリーグやカレッジの試合をしているBowman Fieldで行うMLBリトルリーグ・クラシックが2017年より始まりました。メジャー選手との交流はリトルリーグの選手には夢のような時間でしょう。素晴らしい企画ですね。

そして今年はエンゼルスとインディアンスの試合が組まれ、もちろん大谷選手も参加。ワールドシリーズに参加している全選手に好きな選手をアンケートした結果大谷選手とマイク・トラウト選手が同票でトップでした。大谷選手の人気はアメリカンキッズにも確実に浸透しています。今回はその両選手と会うことが出来て選手たちは超ラッキーでした。ちなみに来年はオリオールズ対レッドソックスらしいので、ちょっと地味な感じがしますね。個人的にはレッドソックスのデバースの大ファンですが。

うちのチームも大谷選手を含むエンゼルスメンバーと写真をパチリ

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私は試合へのパスは手に入らなかったのですが、ワールドシリーズのパスは持っていたので試合前にエンゼルスとインディアンスの選手たちがリトルリーグの球場を訪れた際に居合わせることが出来て、うちの子供も大谷選手とマイク・トラウト選手からボールにサインを貰うことが出来て狂喜乱舞しておりました。

最後に

今回はまさかの地元チームのリトルリーグ・ワールドシリーズ進出についてでした。残念ながらうちのチームは敗退が決まってしまいましたが、選手達とコーチには限りない賞賛を送りたいです。うちの子を含めた年少チームに夢を与え啓発してくれました。今まではワールドシリーズに出場するなんて夢のまた夢の世界だったのが、自分が良く知っている年長の選手が出場したことで一気に身近になりました。毎年この時期には秋からの部員を募集するのですが、今年は例年の倍の応募があったそう。このエリアに住む野球好きな子供達はもちろん大人達にも最高の夏休みの思い出をつくってくれてありがとう。



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