見出し画像

ムーキー・ベッツは野球界のブラックパンサーである

2018年に公開されて大ヒットした映画ブラックパンサーはご覧になられたましたでしょうか。この映画が画期的だったのは初めて黒人のスーパーヒーローが出てきたところでした。この映画は世界中でヒットしましたが、とりわけ黒人の間では熱狂的に迎えられ、この年のハロウィンには私の住んでいるネイバーフッドでもブラックパンサーに扮している子供を数多く見ました。やはり黒人の間では自分達のスーパーヒーローを求めていたのです。

野球界にも同じことが言えます。黒人の野球離れは年々深刻化しており、人気復活には黒人のスーパーヒーローが必要です。しかしこの何年かのMLBのスター選手のほとんどが白人かラテンアメリカ系の選手でした。黒人のスター選手はバリー・ボンズ、ケン・グリフィーJr.、デレク・ジーター以降出ていません。

そこに突如として現れたのがムーキー・ベッツ選手です。ドラフト5巡目とそれほど目立った選手ではありませんでしたがマイナーリーグでめきめきと頭角を現し21歳でメジャーデビューを果たした後も順調に成績を伸ばし2016年にはオールスター選出、ゴールドグラブ賞(その後は毎年)、シルバースラッガー賞を受賞し、2018年にワールドシリーズ制覇した年にはシーズンMVPに選ばれました。そして今年2020年にドジャースに移籍して再度ワールドシリーズ制覇に大貢献してシーズンを終えます。

日本では報道されてなかったようですがワールドシリーズ中には元ヤンキースのCCサバシアさんのポッドキャストでの発言からアメリカ野球ファンの間でムーキー・ベッツはマイク・トラウトを超え現役最強選手になったかというのが論争になりました。要はそれくらい野球ファンの間でムーキー・ベッツ選手の評価が高まっているということです。

今年のワールドシリーズでベッツ選手がNLSCでオズナ選手の打った大飛球をスーパーキャッチした後やワールドシリーズ第6戦でホームランを打った後に雄叫びをあげながら走っていた姿を観ながら私はMLBが求めていた黒人のスーパーヒーローが遂に現れたと確信しました。

黒人の野球離れを数字で検証

アメリカ全体の人口割合はWikiによると2019年時点で白人60%、黒人13.4%、ラテンアメリカ系18.5%、アジア系5.9%。

2020年シーズン開幕時にロースターに入っていた黒人選手の割合は7.8%。その他は白人が約60%、ラテンアメリカ系が約30%、その他がアジアとヨーロッパ。

これを見ると白人選手の割合は人口比率と同じですが、黒人とアジア系が少なくその分ラテンアメリカ系が多くなっています。

以前はどうなっていたかというと1980年代は黒人選手の割合は17~18%でした。それが徐々に減り始め1993年以降に黒人選手とラテンアメリカ系の選手の割合が逆転し、それ以降ラテンアメリカ系選手の割合は増え続け現在約30%になり、黒人選手の割合は2005年以降はずっと10%未満になっています。

バスケとアメフトの黒人選手比率

NBAで黒人選手の占める割合は81.1%。NFLは70%となっています。圧倒的に多いですね。黒人の優秀なアスリートはバスケットとアメフトに流れているのは明らかです。

黒人の野球離れの理由

その原因は幾つかありますが、まず一つ目はスピーディーなゲーム展開を好む黒人に野球は長過ぎると言われています。実際にプレーしている時間は3時間の試合で14~15分だそう。サッカー好きな人が野球が退屈に感じる理由もこれが原因でしょう。

二つ目の理由は野球は経済的負担が高いスポーツだからです。アメリカ全体の約10.5%が低所得層であると言われおり、黒人全体の18.7%が低所得層です。ボールとシューズがあれば出来るバスケットに比べてグローブ、バット、キャッチャー防具などを子供の成長とともに買い替える必要がある野球はとても出費がかさみます。MLBは経済的に恵まれない子供達に野球道具を寄付する活動をしていますが、なかなか行き渡らないのではないでしょうか。うちの子供もリトルリーグで野球をしていてトラベルチームに属していますが、道具以外にもトーナメント参加費、コーチ費用、ウィンタートレーニングの室内施設費用、遠征費など年間で結構な出費になります。

三つ目は後述しますが他のスポーツの方が黒人選手には稼ぎが良いことです。

そして最後に現在のMLBには黒人のスーパースター選手がいないことです。黒人の優秀なアスリートが他のスポーツに行ってしまい、その結果野球に優秀な人材が来ないのでスーパースターが出ずらい状況になっています。

スポーツ間の年棒比較

アメリカでは複数のスポーツを季節によってやる子供が多いのですが(例:春に野球、秋にアメフト、冬にバスケ)、優秀なアスリートは全てのスポーツで秀でた才能を発揮します。プロのアスリートになる際にどのスポーツを選択するかの決め手は金銭面が重要なファクターになります。ここでは野球、バスケットボール、アメフトの年棒を比較してみます。

2020年のMLB高給番付

画像3

8位にランクインしているムーキー・ベッツ選手とデビッド・プライス投手が黒人、同じく8位のマチャド選手はアメリカ生まれのドミニカンの選手。それ以外は白人選手。

実際にはMLBは今季60試合しか行われず給与もそれに合わせた額しか払われませんでしたが、ここでは他との比較のため全試合行われた際に支払われるはずだった額を示しています。

NBAの高給番付

画像2

全員黒人の選手です。

NFLの高給番付

画像3

1,2,8位が黒人選手。トップ10全員がQB。NFLの黒人選手の割合は70%ですがQBは白人選手の割合が高い為にトップ10には白人の選手が多くランクインしています。ただしここ数年黒人選手のQBが増加傾向にあるようです。1位のパトリック・マホーン選手のお父さんは元MLBのピッチャーでマホーン選手も学生時代は野球とアメフトの両方をしており、野球でもプロから注目されていました。

これを見ると黒人選手が最も稼いでいるのはNBA。NFLとMLBは比較が難しいですがNFLの方が黒人選手の割合は圧倒的に高いのでプロとして黒人選手が稼いでいるのはNFLの方が多いと言えるでしょう。

今回は省きますがプロのアスリートはスポンサーからのエンドースメントもあり、特にNBAの選手はエンドースメントを合わせると$90M超えの選手もいます。

ムーキー・ベッツ選手への期待

ここまで述べてきたように、黒人の野球人気復活には黒人のスーパースターが必要です。その意味でムーキー・ベッツ選手への期待はとてつもなく大きく、今年トレードでドジャースという人気球団に行き、しかも移った年にワールドシリーズ制覇したことはMLB全体にとっても大変良かったのではないでしょうか。

ベッツ選手はドジャースに移籍してから契約延長をしたのですが、その内容は12年$365Mという凄いものでした。この総額はこれまでのMLB史上最大の契約であったマイク・トラウトの10年$360Mを超えたことに非常に大きな意味があります。

ベッツ選手はまだ28歳。これから更なる進化をして絶頂期を迎えるので野球界のブラックパンサーとしての大活躍を期待したいと思います。

ベッツ選手余談

ベッツ選手のファンには既にお馴染みですがベッツ選手はボーリングが上手いことで有名です。PBAワールドシリーズなるプロの大会で300点のパーフェクトゲームを達成したそう。


ベッツ選手は身長175cmとメジャーの中ではかなり小柄ですがバスケではダンクシュート出来るそう。よくホームラン性の当たりをキャッチしてますが、やはり凄いジャンプ力。


ベッツ選手はAxeハンドルのバットを使っています。日本だとJグリップと言われるものです。ただ不明なのはバーデン社のAxeバットという会社のサイトに広告にスプリンガー選手と一緒に出ているのですが、実際に試合で使っているのはVictusのAxeモデル。

画像4



グローブは安心のWilson A2Kモデル。アメリカではローリングスに次いでWilson使っている選手が多いですね。有名なところだとカーショー、アルトゥーベ、ミゲル・カブレラ、マット・チャップマンなんかでしょうか。Wilsonは1914年創業の伝統ある会社でバットで有名なDeMarini, Louisville SluggerもWilsonの傘下。MLBで使われているグローブは日本の鹿児島県阿久根市で作られています。そしてアメリカでマスタークラフトマンとしてメジャーの選手から信頼されているのは日本人の麻生茂明さん。メジャーリーガーを日本人の技術が支えているとは何だか誇らしいです。


高校まではずっとショートを守っていましたがレッドソックスに入ってからショートで使うには肩が弱いということでセカンドになり最終的に外野にコンバートされたそう。ベッツ選手と言えば肩が強いことで有名ですがショートからの送球はまた違うのでしょうね。

ベッツ選手はいつも2つのネックレスをしています。1つはゴールドのネックレスでこれは高校を卒業してレッドソックスにドラフトされた時にお父さんからお祝いとして貰ったもの。もう1つは2018年のスプリングトレーニングで12歳のファンの男の子から貰った野球のバットとボールが象られたネックレス。この年ベッツ選手は大活躍してシーズンMVPを獲りチームはワールドシリーズ制覇をしました。それ以来ラッキーチャームとして必ず身に付けているそう。お値段は$6.67。微笑ましいエピソードです。

画像5


画像6

最後は2019年オールスターゲームの前に行われたレッドカーペットショーでのお洒落したベッツ選手の写真で締めたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

画像7


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?