農大9日目 2023-10-23
秋は収穫の季節ですね。現在、鳥取県では稲刈りが終わり、梨もそろそろ取りきれてきた段階です。また11月は中部や東部の砂丘地でらっきょうの花がきれいに咲くそうです。
土の色は何色?何によって変わる?
黒 → C: 炭素の量
10%入っていると真っ黒に見える。元は有機物。葉や根などが長い年月をかけて地中に入り込むことによって約数千年〜数百年かけて黒くなる。
赤 → Fe: 酸化された鉄の色(酸化鉄)
元々地球の岩は鉄が多く含まれていた。
灰 → Fe: 酸化されていない鉄の色
田んぼに多い。水を張っているので、空気に触れることがなく、鉄が参加されない。
世界の土壌
ウクライナーチェルノジョーム(黒土)
ウクライナに広がる高大な黒土土壌。世界で最も肥沃な地域とされる。
中国ー黄土(レス)
大陸の乾燥地帯で舞い上がった細かい粉が風に運ばれて堆積したもの。戦乱、森林伐採、過剰な開墾、放牧によって植生が破壊されてきている。
赤道付近 ー ラテライト(赤土)
岩石の風化によってできた赤土。浮きに有機物が流出し、換気に水の蒸発とともに鉄・カルシウムが表出する。
農業には向かず、レンガの材料になる。
肥沃で農業に向いた黒土は寒い地域にある
暑いと地表に落ちた有機物が分解されて空気中に放出される。
砂漠土
降水量より蒸発量が多いため、塩類が表層に集積しやすい。
降水が少ないため養分が流出しないので、水と肥料さえあればよく作物を育てられる。一方塩分や余分な要素も流れ出さないので次第に年度を重ねるごとに乾燥とともに表層に集積してくる。
土壌が養分を保持するメカニズム
土壌の粒径区分
粘土 0.002mm以下
シルト 0.002〜0.02mm
細砂 0.02〜0.2mm
粗砂 0.2〜2mm
礫 2mm以上
小さくなると粒の表面にマイナスの電荷を帯びる
→プラスの養分がくっつく(肥料は土・水の中でイオンになっている)
窒素(NO3-)
粒子にくっつかない→溶脱しやすい
カリウム(K+)、マグネシウム(Mg 2+)、カルシウム(Ca 2+)
粒子にくっつく→溶脱しにくい
リン酸(PO4 3-)
アルミニウムイオン(Al 3+)とくっつく性質があるため、アルミニウムのある土壌では強力にくっついて離れない→植物が利用できなくなる
CEC
土にどれくらい養分がくっつきやすいかを表す数値。大きくなるほど養分を多く保持できる。
砂丘未熟土 → 3〜5
黒ボク土 → 38
灰色低地土(田んぼ)→ 10前後
マイナスの養分(NO3)はどれくらい土に保持できるのか
粒子は同じ-の電荷なのでくっつかないが、土中の腐植にはプラス電荷の箇所もあるため、ある程度保持することができる。
→黒ボク地なら、深さ1mの土壌を通過するのに、約5〜6ヶ月
植物の根がある深さでは2ヶ月程度
→砂地なら、深さ1mの土壌を通過するのに、約1ヶ月
植物の根がある深さでは10日程度
黒ボク土の欠点
黒ボク土にはアルミニウム(Al 3+)が多く含まれているため、リン酸系の肥料は植物がほとんど吸収できない→黒ボク土の梨園はリン酸系の肥料を大量にまく
花き科 見学
農業の特許
特許の申請には手間や費用がかかるので、新しい技術ができてもすぐには特許申請を行わず、しばらくは秘密にしておくことが多い。
北栄町は花き栽培が盛ん。もともと本業の作物の片手間や女性の小遣い稼ぎなどの目的での栽培でやり始めるところが多かったが案外儲かるのでそれが本業になった農家もある。
ストック
鳥取県は全国3位の出荷量。面積を必要とせず、ハウスがあれば他の設備投資額も少ないので北栄町でスイカの後作で生育されることが多い。
花きは市場が求めるタイミングで出荷しないと値段が暴落するので、開花をコントロールすることが非常に重要
お盆・彼岸
年末年始
入学式・卒業式
記念日(母の日・バレンタイン)
ストックは一定の寒さがあって花が咲く。今年のように夏が暑すぎると開花が遅れてしまう。裏作なので、スイカの植え付けまでに出荷が間に合わないと切って捨ててる。→開花のコントロールが重要
現在は開花コントロールの研究が進み、特定の周波数の光を当てることで調整できることがわかってきている。
シンテッポウユリ
お盆のお墓参りで購入される。昔は祭壇にはキクが飾られたが、現在はユリも利用され、仏花としての需要が大きい。葬儀に用いられる極楽鳥花も高価なため、ユリを使うことが増えてきている。
通常、キクは球根で2年目に花を咲かせるが、シンテッポウユリは種から栽培し1年で花が咲くのでコストが低く、管理も容易。
日本の3大花はキク、バラ、カーネーション
これは世界でも変わらず(キク→西洋キク、スプレーキク)、鳥取県でも栽培される。
連作障害
連作障害は農家にとって死活問題だが、近年はその原因を特定して対策を打つことで回避できるようになってきている。
ex) アスパラ→球根が他の植物の生育を阻害する物質(アレロパシー)を持っている。球根が土壌に分解されると、それによって自家中毒を起こすため、連作障害を引き起こす。
対策として、植え替えのとき球根ごと耕耘するのではなく、面倒でも球根をすべて除去してから耕耘することで連作障害を防ぐことができる。
これを怠ると、3年は土地を休めないといけないことになる。
花壇苗
花壇苗の良し悪しを見分けるには、根を見ることが重要。植物は地表に出ている部分で半分。根っこを見ないと状態はわからない。根からはサイトカンニンという植物ホルモンが生成され、植物の生育を促す。
根の量は地中の酸素の量に影響する。酸素は微生物との取り合いとなる。水をあまりやりすぎると酸素の供給がすくなくなり、根が育たない。
研修科の見学
スイカ、ネギ、イチゴ、ブロッコリー、ニンジン、ミニトマトなどを栽培
ミニトマト
赤崎(琴浦町)が主な産地
農大ではエコスイート・プチプヨを育成している。
エコスイートは単為結果性で交配を必要としない。
プチプヨは実をつけるのにホルモン剤を要する。トマトトーンを使って交配している。
通常交配は蜂等を利用した虫媒と風媒がある。
ミニトマトは第一果房直下の脇芽を残して、2本支立てにする。果房の直下の脇芽は強いことが多いため。
スイカ
栽培には15℃以上が必要で、冬にトンネルやハウスで温めて地温を高めてから定植する。
キュウリ
吊り下げ方式で育成。
吊り下げ式メリット→風通しがよく病気になりにくい。日当たりが良くなる。作業性が良くなる。管理が楽になる。
吊り下げ式デメリット→収量が少なくなる。縦に長く吊り下がっているので夏は水分が上まで吸えなくなって弱ってしまう。
芽キャベツ
セル成型苗から定植。
良し悪しの見極めは根がセルにパンパンになるまで行き渡っていること。根の生育が不十分なまま定植すると、その後の成長が悪くなる。
イチゴ
奈良方式で栽培。高設ベッドの底には水を通さないビニールを貼り、底に和紙を敷く。その和紙を底に空けたスリットからベッド下にぶら下げ、水を逃がす。
現在の作業はランナー取りと葉の整理。花芽が出るのを待っている。
イチゴは通常路地では春に花が咲く。イチゴの開花の条件は地温と日照時間。なるべく長い期間、単価が高い時期に収穫できるようにハウス内の環境を整える。
ハウスでは開花を促すため、①黒いマルチを敷く、②ハウスに内側に更にビニールを入れ温度を上げる。③電照をつける。④暖房を入れる。
などを行う。
鳥取県は冬が寒く、日照時間が短いためイチゴ栽培が難しい。一方で、その条件を生かした栽培を行っている。
ハウスは暖房して密閉しているので、CO2濃度が上がる→光合成を促す。生育が遅いので色が薄くて硬いイチゴができる→輸送に耐え、長持ちする。
アスパラガス
鳥取型低コストハウスで栽培→通常よりも強いパイプを使用するかわりにパイプ間の距離を長く取り(50cm→70cm)、トータルでコストを抑えたハウス。
冬は茎枯れ病対策のため、地表をバーナーで焼く。
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