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野犬×デジタル #1出題編

「デジテック for YAMAGUCHI」運営事務局 兼 「Y-BASE」スタッフのハラマルです。昨年11月1日にY-BASEを開所してから、4ヵ月が経過しました。最初の1か月間は集中的に見学会を開催して多くの方に訪れていただきました。本年1月には、新型コロナウイルス感染症の影響で100名以上のキャンセルもありましたが、Y-BASEのデモ展示を説明する動画素材を作成するなど、オンラインでの施設見学に対応するなどのアップデートを行いました。また、幅広い業種の方から、DXコンサルをご利用いただき、現時点では約30件のコンサル相談をいただくなど、少しずつではありますが、皆さんのDXのお手伝いを進めています。

DXコンサルについては、その性質上、相談者様の秘密情報も含まれることもありますので、相談者様の御了解をいただかない限り、外部に内容を発表することはありません。が、Y-BASEのDXコンサルってどんなことしているのですか?という質問も多くいただきますので、御了解をいただけた、支障のない範囲で、少し御紹介できればと思います。

今回は、周南市さんの「野犬対策をデジタルで解決したい」というチャレンジングな取組をご紹介したいと思います。第1回目は、「出題編」として、現状と課題をご説明します。

周南市には野犬が出没

山口県周南市は県央部東寄りに位置し、県内の市町では人口が4番目に多く、令和4年1月末現在では約14万人です。

周南市HPから

徳山駅には新幹線も停まり、賑わいも創出されています。

周南市立徳山駅前図書館

え、そんな街に野犬?そうなんです。しかも、結構、街中にも出没しているんです。

山口県では、直近10年間の平均で年間1,300頭程度の犬が捕獲されています。周南市では2014年頃から野犬の出没が顕著になったそうで、2014年度では県全体で1,322頭捕獲されたうち、周南保健所管内(周南市・下松市・光市)で捕獲されている犬は652頭(県全体の49%)、2016年度には県全体の63%にも達しています。かなり集中している印象ですね。

野犬について

そもそも、野犬の何が問題なのでしょうか?
最近は野犬に遭遇する場面が少ないのかもしれませんが、リードがない状態だと、例え大人でも、囲まれたら恐怖を感じると思います。実際に、周南市でも大人が野犬に咬まれてケガをする事例も毎年度発生しています
また、夜中に吠えられたり自宅の敷地にフンをされたりが続くと、毎日の生活にストレスを感じる方も多くいらっしゃると思います。

実は私も、プライベートな場面ですが、周南市で野犬に遭遇したことが何度かあります。大人の腰の高さくらいの大きな野犬の群れです。子供を連れていたのですが、子供は恐怖で動けない状況でした。万が一襲われたら、守り切れる自信がないなと思いました。
「何度か」というくらいなら、「何もなくて良かったね」で済みますが、こうした場面が日常的にあると、住民の方は大変だろうなと思います。

今までの対策

こうした状況に対して、今まで、既にいろいろな対策がされています。まず、狂犬病予防法に基づく野犬の捕獲。これは、県の保健所の業務ですが、周南市も一体的に取り組んでいます。また、野犬へのむやみな餌やりや、遺棄を防止するための巡回や普及活動もされています。

特徴的なのは野犬情報を通報するアプリです。周南市では、もともとあった道路の異常個所を通報するアプリに、野犬情報を市に通報する機能を令和2年9月に追加しました。

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道路の異状通報と同じアプリに実装

このアプリを使って、野犬情報を通報することもできますし、

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撮影位置はマップから指定

通報された情報を地図上から確認することもできます

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通報された直近の20件を表示

この効果もあってか、野犬から咬まれた、追いかけられたといった直接的な被害は、徐々に減少していますが、上のアプリの表示を見ても分かる通り、まだまだ市街地でも野犬が目撃されている状況です。

参考:捕獲した野犬について

ここでちょっと補足です。
決して勘違いしていただきたくないのですが、野犬は、殺処分するために捕獲しているわけではありません。放っておけば、市民がケガをするかもしれませんし、繁殖を続けると、もっと手が付けられなくなってしまいます。市民の方が安心して暮らせるまちをつくるために、法令に基づき捕獲していますが、捕獲した野犬については、保健所の収容施設で一時保護し、希望者への譲渡を進めています。山口県のHPによると、令和2年度は、県全体で1,350頭を捕獲した一方、その91.2%に当たる1,232頭を譲渡しています(この他に75頭を返還)。

Y-BASEへの相談

さて、このような状況の中、周南市さんからY-BASEに「野犬対策にデジタル技術を活用したい」という相談をいただきました。・・・え?そんなざっくりした相談?

はい。Y-BASEを利用される時点では、必ずしもこんな技術を使いたいとか将来のビジョンがはっきりしていなくても構いません。相談いただいた内容から、課題を明確にして、ファーストステップとして何を考えたらいいのか、何に取り組んだらいいのか、一緒に考えていくのもコンサルの大事な業務です。

逆に、「この技術に興味がある」といったように、技術やサービスから入ると、お話を聞いているうちに、「あれ、そのサービスを入れても今の課題は解決しないのでは?この業務フローのここを改善する取組について考えませんか?」となるような事例も多いです。どうしたいか、という考えをまとめる前に、まずは課題ベースで御相談いただければと思います。

YーBASEでは幅広い分野のDXをサポートします。ですが、さすがに野犬対策というのは初めての取組です。周南市さんからの予約内容を確認し、コンサルに臨むこととなりました。

#2へ続く

というわけで、なんとなく想像できるのは、最終的なゴールは、住民の方にとっては野犬の恐怖やストレスから解放されること、人間にとっても犬にとっても住みよい街になることだと思います。

さて、この相談にどう対応していくのでしょうか。#2へ続きます。