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「ディグディガ」元ネタ紹介:第7話

これは、漫画「ディグインザディガー」第7話公開に際して、原作の栄免建設と漫画の駒澤零(と、たまにゲスト)が淡々と元ネタ紹介をしていくコーナーです。

ゲスト:hayabusa(DJ)、ナカシマセイジ(Alffo Records店主)

原作担当:栄免建設

◆Dizzee Rascal - Boy in Da Corner

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UK Garageから派生したUKのラップミュージック "Grime" を代表するMCの一人、Dizzee Rascalの1stアルバム。デビューシングル『I Luv U』はチャート入りも果たした名曲。ちなみに今年のオリンピックでスケボー金メダルを獲得した西矢椛選手が「ラスカルの曲を聴いてる」とコメントし、一部界隈では世界名作劇場の『あらいぐまラスカル』なのかラッパーの「Dizzee Rascal」なのかと議論になっていた。真相はあらいぐまの方でした。

今回のディグ盤はUK Garageでラップする "Bad Boy Chiller Crew" のレコードだったので、選んでみました。

普通にパロディにしたら可愛い表紙になりそうだったのもある。

◆m-flo - come again

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VERBAL、☆Taku Takahashi、LiSAの3人からなるユニット、m-floの大ヒットシングル。様々なクラブミュージックの要素を持ち込んだ楽曲を製作するm-floが2ステップの要素を大胆に取り入れた楽曲としても有名。日本のJ-Popの2 Step…と聞けばおそらくこの曲を挙げる人が多いのではないだろうか。

リリースは20年前だが、今もクラブでよくかかるのを耳にする。まさに「日本の2ステップ・アンセム」と言えるかもしれない。
2ステップといえば、☆Taku Takahashi氏とTJO氏がパーソナリティを務める2021年4月2日、9日のblock.fm「TCY Radio」で2ステップ特集をしており、come again製作時の話なども聞くことができる。是非チェックしてほしい。

◆MJ Cole - Sincere

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MJ Coleは、UK Garage、および 2ステップを代表するアーティスト。

本作は彼の1stアルバムである。僕が同ジャンルのアルバムを聞こうとネット検索した時に最初に出会ったのがこの作品だ。多分今でもこの作品がすぐレコメンドされることと思う。2000年にリリースされた本作はクラブシーンのみならず、UKチャートでも堂々14位にランクイン。マーキュリー賞をはじめ、様々な賞にノミネートされ、各所で高い評価を受けた。

FACTmagazineの名物企画に、10分で曲を作ってもらう「Against The Clock」というものがある。著名なプロデューサーも登場し、非常に人気が高い企画なのだが、その中でもMJ Coleの回は神回だと個人的に思う。

UK Garageも、2ステップも、元を辿ればハウス。そのため、BPMは130前後のことが多い。しかしMJ Coleは、まずBPM90台で打ち込みを始める。まるでヒップホップのような打ち込み方だと思って見ていると、一気にBPMを130まで上げて、聞き慣れたグルーヴへと見事に仕上げるのだ。

僕の周りのプロデューサーも、ジャンルを問わずこの回が好きな人は多い。

2003年に2ndアルバムを出して以降、長らくアルバムがリリースされていなかったが、昨年4年ぶりにアルバムをリリース。日本でも改めて盛り上がってきているジャンルだと思うので、是非チェックを。

◆A.G.Cook - APPLE

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《PC Music》の主宰、A. G. Cookの2ndアルバム。現在のPop Musicの最先端を走るアーティストの一人。中田ヤスタカなどJ-popの影響も伺えるポップでカラフルな《PC Music》のサウンドは、「Bubblegum Bass」などと呼ばれ一斉を風靡し、現在のHyperpopシーンへとつながっている。

Porter Robinson主催、オンラインで開催されたSecret Skyでは「Acoustic EDM Set」というセットを披露。かなり衝撃的なセットでTLが大いにざわついていた(そしてこの後がLil Texasだったのもなかなか面白い流れだった)

2020年8月にカヴァーなども含む49曲入り1stアルバム「7G」をリリース。
そのわずか1ヶ月後に発表された2ndアルバムが、本作「Apple」である。

主宰する《PC Music》自体が既に、2010年代を代表するレーベルとして多くのシーンに影響を与える存在と言えるが、近年はCharli XCXのプロデュースや、今年公開「シン・エヴァンゲリオン劇場版」主題歌、宇多田ヒカル『One Last Kiss』の共同プロデュースなど、メジャーシーンでもA. G. Cookのサウンドを耳にすることが多い。今後が楽しみだ。

◆100 gecs - 1000 Gecs & The Tree Of Clues (UK EDITION)

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Dylan BradyとLaula Lesによるユニット、100 gecsの1stのRemixアルバム。
ピッチを上げた歪ながらPopなビートにエモーショナルなラップを乗せたスタイルが特徴。ジャンル「Hyperpop」を代表するアーティストである。

今作は1stの「1000 gecs」収録曲のRemixやLive音源などをまとめた作品。
参加陣には日本人気も高いKero Kero Bonitoをはじめ、Hyperpopシーンの重要アーティストばかり。先述のA. G. Cookも参加している。

僕も100 gecsは大好きなので、もしBBCCに決まらなかったら第7話はこのレコードを選んでいたと思います。

◆Danny L Harle - Harlecore

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《PC Music》の創立メンバーの一人、Danny L Harleによる1stアルバム。A. G. Cookとはコラボ、およびユニットとしても活動している。

本作は、「バーチャル上のクラブ《Club Harlecore》のレジデントDJによるコンピレーション」という異色のコンセプト。パーティの様子を映像にしたMVなどもあって、面白い。

先ほど紹介した「1000 gecs & The Tree of Clues」にも参加している。

《Harlecore》という言葉は自身の名前「Harle」と「Hardcore」を掛け合わせたものだが、Lil Texasの《Texascore》しかりオリジナルなハードコア・ネームにはどこか憧れるものがある。

◆TNGHT - II

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TNGHTは、Luckymeの人気アーティスト Hudson Mohawkeと、カナダ出身のビートメイカー Lunice によるユニット。それぞれのソロ作品も大好きで、特にHudson Mohawkeの1stアルバムはかなり影響を受けてるんだけど、TNGHTはそれらとはまた違った世界観で作品をリリースしている。

現在のクラブシーンにおいてTrapの楽曲(ここでは00年代のT.I.の楽曲的な意味ではなく、Baauer「Harlem Shake」のような楽曲)が当たり前のようにかかるのは、彼らの活躍によるものだと思っている。

一時活動を休止(その間それぞれソロリリースはされている)していたが、2019年、5年ぶりに復活し、本作がリリースされた。

2ndEPにあたる「II」は、1stとまた違う、かなり独特の音使いのBeatが楽しめる作品だ。日本限定で2枚を組み合わせた独自企画盤「TNGHT I & II」もリリースされているので、いま音源を入手するならこれが良いかも。

◆Hyph11E - Aperture

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北京出身で上海拠点のDJ/プロデューサー、Hyph11Eの1stアルバム。第1話にも登場した上海のレーベル《SVBKVLT》を代表するアーティストである。

テクノ、ジャングル、インダストリアルなど非常に不穏な空気を持つエクスペリメンタルな作品。ここ数年ずっと中国のクラブシーンが好きなんだけど、その中でもかなり万人受けするアルバムだと思う。きっと中国のシーンに興味を持てると思うので、気になった方は是非とも。

◆Babii – Hiide

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ヨークシャー出身のプロデューサー、シンガーBabiiの1stアルバム。

非常に浮遊感があるサウンドで、ドリームポップ、シンセポップなどの表情も見える。しかし、これまたアブストラクト。grimesやFKA twigsらへんが好きなならまず気にいると思う。恥ずかしながらこれを書くまで知らなかったのだが、UK DUBの巨匠、Adrian Sherwoodも参加している。

本作がリリースされた2019年、Iglooghost,、Kai Whistonとのユニットとしても作品を発表。2021年には2ndアルバム「MiiRROR」をドロップしている。

◆Radiohead - The Bends

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言わずと知れた大人気バンド、Radioheadの2ndアルバム。
僕はクラブミュージックやエレクトロニカなど電子音楽を主に聞いて育ったため、最近までロックはあまり聞いてこなかったのだが、それでもRadioheadは馴染み深かった。AutechreやAphex Twinの影響を受けた「Kid A」をはじめ僕の好みのサウンドを吸収していたり、ヴォーカルのThom YorkeがFlying LotusやModeselektorの作品に参加するなどしているのだ。

本作からも現在のRadioheadの片鱗を感じ取れるが、「OK Computer」以前のためロックサウンド要素がまだ強い。 評価も高く、ローリングストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500においては110位。

世界的なバンド、人気を不動にした記念碑的作品、パロディしやすい、ということが重なり、他の漫画でも引用されているのをたまに見かける。

ちなみに今回注文したビール、Radioheadと表記したが正確にはアルバム「In Rainbows」収録の『Reckoner』という名前のビール。The Chemical Brothersは「Surrender」より『(The) Sunshine Underground』、ClarkはChris Clarkからの改名から初のアルバムである「Body Riddle」から。

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ゲスト:hayabusa


◆Bad Boy Chiller Crew - Full Wack No Brakes

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今回、ナカシマセイジと私が共通で好きな1枚ということで選びました。
UK ベースミュージックカルチャー専門家ではないのであしからず。

Bad boy chiller crew(以降BBCC)の「Full Wack No Brakes」は、House Anxietyからリリースされた、現在は入手困難のデビュー・ミックステープ。プレミア化で高騰しているそうですが、Alffo Recordsなら定価で買えますので、気になる方は是非!特典にBBCCロゴがプリントされた、"ハッパ巻き巻きペーパー"もついてきます。

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BBCCは、MC Kane、DJ/ラッパーのGK、芸人Sam、そしてマネジメントにDr Googleというメンバーで結成されたグループです。初期の主な活動はコメディ動画や、イタズラ動画の作成。メンバーのInstagramでは未だにそういった動画が投稿されています(4本の酒を一気に同時に飲めるコップを作ってみた!などのくだらない内容。大体の結末が吐き出して終わり)。

そういう出自もあって、リリックの内容もセックス、ドラッグ、アルコールなどが多い。言ってしまえば中身スカスカのパーティーチューン(最高)。「楽しい」「笑い」といった感情が音楽においての「カッコいい」という評価から切り離されることが多いなかで、近年のBBCCの快進撃は、個人的に痛快で仕方ありません。

バックトラックは、2step、Garage、Basslineに強いこだわりを見せています。直近ではリミキサーや客演にZed bias、Bru C、Nathan Dawe、Ritonなど。音楽的な強度が加速度的に増していることも、注目です。

アメリカの犯罪映画『Reservoir Dogs』(1992) をモチーフにしたであろうPVの『Come With Me』はRitonのRemixもオススメ。ジャケットも90年代のヒップホップ・グループを彷彿とさせるデザイン。

直近で公開された『Bikes N Scoobys』と「Full Wack No Brakes」収録の『450』を見比べてみると、同じような構成で車とバイクの数が異なり、たった1年での目覚ましい成長を感じられます。併せてどうぞ。

ここで、本編に登場したお酒や内装に関しても紹介しておこうと思います。

くもみちゃんが店内で発見した、段ボールの棚は、アメリカ製強化段ボールトライウォールでできています。私の家のDJブースや、ラックもフルオーダーメードでShinwa Record Boxに作ってもらいました!依頼はリンクからどうぞ!Alffo Recordsにあるイスなども全てShinwa Record Box製作です。

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くもみちゃんが飲んでいるお酒は大阪発クラフトビール専門店、マルホ酒店提供のWhiplash(ムチ打ち)という名前のクラフトビール。アーティストモチーフのパッケージデザインが特徴的!

通販もありますので、くもみちゃんと同じビールを飲みたい方はぜひどうぞ。Alffo でテイクアウトも可能です!お近くの方はご利用ください。

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ビールに写りこんだフィギュアは映画ライター・高橋ヨシキさんのソフビ作品。以前Alffoでトークイベントもしていただきました。他にも、映画に関連するフィギュアやポスターがお店のあちこちに展示され、「客が有志で更新していく」というコンセプトの漫画棚もあります。

こういったご時世ですが、漫画をきっかけに是非お店のほうも訪れてもらえると嬉しいです。ありがとうございました!

hayabusa

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漫画担当:駒澤零

◆Prince - Welcome 2 America

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今回のロケ地は大阪だったので、私は取材に行けなかったのですが、栄免さんから送られてきた資料写真に自分がディグディガみたいなレスしてしまったのが面白かったので、これは本編でも描こうと思い描きました。

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◆カジヒデキ - ミニスカート

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渋谷系を代表するポップミュージックの旗手、カジヒデキの1stアルバム。

私が本作を聴いたのは実は最近で、国立新美術館の「ファッション・イン・ジャパン」展で1曲目の「ラ・ブーム」が流れていたからだったりします。

カジは当初ゴシック・ロックバンド "Neurotic Doll"のBaとして活動していたが、ロリポップ・ソニック(のちのフリッパーズ・ギター)のライブを見て衝撃を受け、バンドを脱退。1989年にブリッジを結成し、数枚のCDを発売するも解散する。

ソロシンガーとしては、1996年『MUSCAT E.P.』でデビュー。翌年リリースとなった本作『MINI SKIRT』は、オリコンチャート4位を記録し、爽やかで軽快なキャラクターや音楽性で一躍注目の存在となった。

来たる11月27日にLP盤の発売が決定しており、10/13までに予約すると早期予約特典がもらえるそう。買おうかな…。

◆Manduka - Manduka

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Mandukaはブラジル出身の音楽家。1952年生まれ、2004年没。

本作は1972年にチリでリリースされたデビュー・アルバム。サイケ・フォークの激レア盤として知られるが、故郷を離れ、チリに亡命していた時期に録音したものである。当時のブラジルは軍事独裁政権下にあった。

ほとんどすべての曲はManduka自身の作曲。サイケフォークからボサノヴァまでジャンルを横断するトラックが並ぶ。アジェンデ政権のチリでは音楽を通じた社会変革運動「ヌエバ・カンシオン」が盛んであり、政治的な意味でもチリで非常に高く評価されている作品である。今年7月に復刻盤が発売。

◆Suicide ‎– Cheree

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タワレコ池袋店の《RECORD STORE DAY》に立ち寄った際、あまりにもジャケが印象的だったレコード。

Suicideは1970年結成、2016年解散。プロト・パンクの代表的存在として知られる、ニューヨーク出身のデュオだ。ずっとアンダーグラウンドな存在ではあったものの、シンセサイザーやドラムマシンなどミニマルな電子楽器を駆使した先駆的な音楽を作った画期的な存在であり、Rolling Stone誌やEntertainment Weekly誌をはじめ、多くのメディアが「80年代以降のミュージック・シーンに大きな影響を与えた」と評している。

◆Fiona Apple - Fetch the Bolt Cutters

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これは大槻美奈という素晴らしい音楽家の友人が教えてくれたアルバム。絵の時点で結構顔が怖いが、実際のジャケも結構ヤバい表情だと思う。頂いたAlffoの資料写真にこの盤を見つけたので、思わず描いてしまった。

Fiona AppleはアメリカのSSW。1996年、17歳の時に「Tidal」でデビュー。290万枚を売り上げたこの作品は、アメリカではプラチナディスクとして認定され、続く3rdシングル「Criminal」のヒットで完全にブレイクする。Mark Romanek監督によるセクシャルなMVが物議を醸し、Billboard Hot 100でもトップ40にランクインと、大きな注目を集めた。

キャリア24年にして5枚目、8年ぶりのリリースとなる本作は4年の歳月をかけた試行錯誤の末、制作された。自作の打楽器オブジェを使い、家の周りをチャンティングしながら行進したり、楽器を物にぶつけたりして実験的な録音を行ったため、アルバムはパーカッシブなサウンドが特徴となっている。

ちなみにこの盤を教えてくれた大槻も良い意味でヤバい天才なので、良ければ彼女の音楽も聴いてみてください。「電波ジャック」では私がMVを担当させていただいてます。

◆Billy Preston - Encouraging Words

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オリジナルは1970年9月11日リリース。The Beatlesのジョージ・ハリスン作「All Things Must Pass」と「My Sweet Lord」が初めて世に出た作品として知られる。LPとしてリリースされたのは1992年が最後。演奏にエリック・クラプトンやリンゴ・スターなどが参加している。

2021年10月にBillyがRock & Roll Hall of Fame(ロックンロールの殿堂)入りするのを記念し、本作のLPの期間限定発売が決定されている。

今回のプレイリストはこちら。

以上、ディグディガ7話の元ネタ紹介でした。ありがとうございました!
























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