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「ディグディガ」元ネタ紹介:7.5話

これは、漫画「ディグインザディガー」7.5話公開に際して、原作の栄免建設と漫画担当の駒澤が淡々と元ネタ紹介をしていくコーナーです。

前半:栄免建設(原作)

◆冨田勲 - イーハトーヴ交響曲

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宮沢賢治文学作品を題材とし、初音ミクをソリストとして起用した交響曲。

冨田勲は、日本のシンセサイザー音楽のパイオニア。当時とんでもない高級品であったモーグのシンセサイザーを日本で初めて個人輸入し、それを用いてドピュッシーの楽曲を演奏した「月の光」が、米国ビルボードのクラシカルチャートで2位を獲得したことで、一躍時の人となる。

続くモデスト・ムソルグスキーの楽曲を演奏した「展覧会の絵」でも1位を獲得。1975年のグラミー賞には、日本人として初めてノミネートされた。

そんな彼が、現代日本の音楽シーンに与えた影響は計り知れない。たとえばYellow Magic Orchestraの細野晴臣は「月の光」に非常に感銘を受け、シンセサイザーに傾倒した。そして結成前から坂本龍一と組んでおり、冨田勲の一番弟子であった松武秀樹をマニピュレーターに迎えたという。

冨田は、シンセサイザーを取り入れる前からも一流の作曲家として活動していた。代表作としては『ジャングル大帝』『どろろ』など手塚治虫のアニメ劇伴がある。本作でも、アンコールで「リボンの騎士」が演奏されている。

今回購入したレコード盤ではLPと別に7inchとして収録されており、ジャケットにはリボンの騎士に扮した初音ミクのイラストが描かれている。

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今回の初音ミクの起用は冨田勲の長年の夢が叶った作品とも言える。

冨田は昔からシンセサイザーに歌わせるのが夢だった。シンセサイザーでパ行の発音は成功しており、「パプペポ親父」と名付けられていた

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ただし、冨田は人間と同じように初音ミクに接していたようで、コンサート会場には初音ミク用の控え室もあったという話も。

2012年当時、オーケストラ・コンサートにおける初音ミクの起用は前代未聞の試みであり、かなり技術的にも工夫が凝らされていた。たとえば普通、シーケンサーなど機械の演奏を合わせたライブにおいては、人間が機械のクリックに合わせて演奏することが多い。しかし本作品ではミクの方を指揮者に合わせて歌わせるなど、技術的にも面白い試みをしている。

日本のシンセサイザーの始祖的存在と、今後も更なる活躍が期待される、ヴァーチャル・シンガーとの融合。音楽史的に非常に重要な作品かつ、現代でも色あせないアルバムだと自分は思う。是非聞いていただきたい。

後半:駒澤零(漫画)

ミクさん描けて嬉しかった!今回は私の元ネタはなし、以下は解説代理です。『イーハトーヴ交響曲』の存在はリアルタイムでも知っていたのですが、幼かったので当時はあまり。今だったら現地で観てみたかったなあ。

◆Mitchie M - グレイテスト・アイドル

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「神調教」として一世を風靡したボカロP、Mitchie Mによる2013年作。

当時多くのリスナーを震撼とさせた『FREELY TOMORROW』をはじめ、ボーカロイドを用いた独特の歌わせ方と隙のないトラックメイクが特徴。今流行りの音楽ゲーム「プロジェクトセカイ」にも楽曲提供しているので、名前は知らずとも作風に馴染みのある方はかなり多いのではないでしょうか。

2ndアルバムの発売に合わせ、2019年にアナログ版の発売が決定。livetune feat.初音ミク「Re: Package」がVOCALOID初の商業流通CDなら、こちらは初の商業流通LPである。2007年に誕生した初音ミクが翌2008年には商業CD化されていたことを思うと、LP化までは随分時間がかかっている。

頭の髪飾りは『新世紀エヴァンゲリオン』ヒロイン、綾波レイのもの。本作のジャケットイラストレーター、貞本義行繋がりです。最近インスタの女の子たちの間でエヴァがミーム化している影響か、作中に登場するインターフェイス・ヘッドセットを私服として身につけている人を時折見かけます。

余談ですが、打ち合わせの時に「『イーハトーヴ交響曲』のBlu-rayジャケがすごいwwwシュールwww」と言われて見に行ったらめちゃくちゃ空山基みたいな絵で、実際空山さんだったので私はあんまりツボに入らなかったんですが、初音ミクをはじめVOCALOIDやニコニコ動画周辺ってときどき豪華クリエイターがひょいと参入してきますよね。あれ面白いと思う。

『イーハトーヴ』の時はアートディレクターを務めた宇川直宏氏が依頼したそうで、冨田作品のイラスト的視覚世界と初音ミクの記号性を融合する際、70年代から《ロボットとアンドロイド》を描き続けてきた空山さんに頼みたかった、とのこと。めちゃくちゃ良いと思う。ちょっと見てみたかったし。

そういった意味では、今回紹介したMitchie Mのデビュー盤が貞本ジャケだったのは当時としてはかなりの衝撃でした。2013年と言えば前年に「カゲロウプロジェクト」が爆発的人気を獲得し、ニコ動からのシンデレラストーリーがだんだん実体を持って世間に広がりはじめてきた頃です。思えば米津玄師がメジャーデビューしたのも2013年春ですね。

今回のプレイリストはこちら。

以上、ディグディガ7.5話の元ネタ紹介でした。ありがとうございました!













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