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日本のルネサス、電子設計プラットフォーマーを目指し、米国のAltiumを買収。

日経 xTECH(クロステック)は2024年02月19日に、日本のルネサス エレクトロニクス(Renesas Electronics)は、プリント回路基板であるボードの設計用ソフトウエアを手がける米国の中堅EDA(Electronic Design Automation)ベンダーであるAltium(アルティウム)を買収すると報告した。

その買収金額は約8900億円で、中堅EDAベンダーの買収金額としては高めである。買収説明のオンライン会見でルネサス代表取締役社長兼CEOの柴田英利(Hidetoshi Shibata, Renesas Representative Director, President and CEO)は、中長期的に、電子設計のプラットフォームを持つ半導体メーカーを目指すということである。

リストラフェーズから成長フェーズに転じたルネサスは2022年09月に開いたメディア・市場アナリスト向けオンラインイベントで、2022年現在に比べて時価総額を6倍にすることなど、2030年に達成すべき経営目標を発表した(図1)。

CEO柴田にとって、目標達成に向けた重要な戦略が「デジタライゼーション(digitalization)である。」

CEO柴田が言うデジタライゼーションとは、コンピューター上のいわゆる仮想空間において、ユーザーが同社製品などを使った機器やシステムの開発を容易に進められることを意味している。
「デジタライゼーション」によってユーザー層を拡大したり、売上高を増加したりして企業価値を向上させ、時価総額を上げる作戦である。

今回の会見でCEO柴田が示した「デジタライゼーション」の1例が、2023年03月に発表したクラウドベースの開発環境「クイックコネクトスタジオ」である。
ルネサスのマイコンと複数の周辺部品を組み合わせた応用システムを「クイックコネクトスタジオ」上で定義すると、マイコンで稼働する応用ソフトウエアのコードが自動生成される。

ルネサスは2024年01月01日に組織改編を行い、デジタライゼーションを担う部門のトップに、外部から新たに招聘(しょうへい)したブブナ・アヤガリ(Buvna Ayyagari)を据えた。
ブブナ・アヤガリは、半導体メーカーや半導体装置メーカー、EDAベンダーに在籍し、ユーザー・サポートなどの要職を務めた実績を持つ。

ブブナ・アヤガリ(Buvna Ayyagari)

ブブナ・アヤガリ就任後の初めての大きな動きが、今回のAltium買収である。
Altiumは1985年創業のボード設計用EDAツール「Altium Designer」を持つ中堅ベンダーで、最近はクラウドベースのボード設計用EDAツール「Altium 365クラウドプラットフォーム」や電子部品サーチ「Octopart」も手がけている(図2)。


ルネサスによる買収は2024年下期に完了予定だが、その後もAltiumは独立子会社としてこれらの事業を継続する。
これまでルネサスが買収した中堅半導体メーカーとは異なり、Altiumはルネサス本体には取り込まれない。

すなわち、ルネサス本体がEDA事業に参入することはない。

つまり、Altiumを買収するのは、人材ブブナ・アヤガリの確保が重要であった。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08924/
https://www.renesas.com/jp/ja/about/executive-team/buvna-ayyagari

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