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インドの中央銀行が、デジタル決済のブームに火をつけた。


1981年に開設されたRBI(Reserve Bank of India/インド準備銀行)


IMF(International Monetary Fund/国際通貨基金)が定期的に公開している「IMF Blog」で、国ごとの情報をまとめて報告する「IMF Country Focus」は2022年10月26日に、ジェフ・カーンズ(Jeff Kearns)とアシュリン・マシュー(Ashlin Mathew)が、インドの中央銀行がデジタル決済のブームに火をつけた理由について報告した。

私は、このど真ん中にいたにもかかわらず、失敗している愚か者である。

1981年に開設されたRBI(Reserve Bank of India/インド準備銀行)の本部は、ムンバイのフォート地区、ウォーターフロントから数ブロックのところにそびえる白亜の高層ビルであるという。

RBIは、急速に成長するインドのデジタル決済ネットワークの柱でもあり、中央銀行と民間企業との協力関係を示す教訓でもあると報告した。

インドのデジタル決済量は、過去5年間で、年平均約50%のペースで増加している。それ自体、世界最速の成長率だが、インド独自のリアルタイムのモバイル対応システムである2006年にRBIとインド銀行協会(Indian Banks’ Association)が共同で設立したNPCI(National Payments Corporation of India)に端を発しているUPI(Unified Payments Interface)では、年率約160%で、さらに急速な拡大をしている。

UPIの目的は、小売決済のデジタル化のための包括的な機関となることであり、インドの人々に公共財を提供することを目的とした非営利企業として設立された。

デジタル金融インフラを提供するためのこの公益的アプローチは、その発展段階にかかわらず、すべての経済に関連すると、国際決済銀行の研究者は2019年の論文で書いている。

参加銀行数が44%増の330行に急増したため、2022年06月の取引額は前年同月比2倍以上のUS$58.6億に達したという。

UPI制度は2016年に、インドの債券を購入している時、高額ルピー紙幣の流通を停止するという「デモネティゼーション構想(demonetization initiative)」の衝撃は続いたが、金額は同期間からほぼ倍増した。

当時の銀行は、「この投資は危険すぎるという意見が一般的であった。」

私はこの時、リアルタイムで経験し、腰が抜けそうになった記憶がある。

インド人を理解し、多くのアドバイスを無視することは勇気がいることであった。

さらに、RBIは2022年03月にタッチスクリーンの代わりにボタンが付いた古い端末フィーチャーフォン向けのUPIを導入したことで、遠方の地方に住む4億人のユーザーを接続できる可能性があるという。

UPIは、決済に関するルールや事務処理がつぎはぎだらけになっている国の現状に対応するものだった。個人でも企業でも、同じモバイルプラットフォームで複数の銀行口座を利用できるようにすることで、より簡単で安全な送金を目指したので、それは急速に成熟していった。

複数の決済システム

NPCI最高経営責任者のディリップ・アスベ(NPCI Chief Executive Officer Dilip Asbe)によると、個人のデジタル決済ユーザーの成長は5年間で3倍の7億5000万人に達し、加盟店のユーザーは2倍の1億人に達する可能性がある。

中央銀行は、大きなシェアを持つデビットカードやクレジットカードの発行会社であるRuPay、現金自動預払機ネットワークであるNational Financial Switch、サービスが行き届いていない地域に銀行をもたらすための国民IDプログラムを用いた決済システムなど、決済システムの多様なエコシステムを育成している。

「RBIは、私たちのような規模の国には、国民が複数の支払い方法から選択できるように、複数の支払いシステムが必要だと判断しました。UPIのようなシステムは、その国の中央銀行と政府が、決済システムを最小の価値と最も合理的なコストで民主化する、このような技術革新を導入することに熱心でなければ、どの国にも入ってくることはできないのです。」「UPIは現在、インドの消費者にはほぼ無料で提供されており、政府はUPI加盟店決済を促進するためのインセンティブを提供しています。」とディリップ・アスベは述べている。

キャッシュレス社会が急成長する中、インドの数億人の若者たちは、旧来のやり方をますます忘れつつある。

世界最大級のモバイルマネーサービスを提供するPaytmの利用者を4億人以上に膨れ上がらせたのは、彼らなのである。

ニューデリーを拠点とする芸術文化団体Cultreの共同設立者で起業家のアンジータ・ナイール(Anjchita Nair, an entrepreneur and cofounder of the New Delhi–based arts and culture organization Cultre)は、販売にPaytmを、オンライン送金にRazorpayのプラットフォームを利用している。個人的な利用では、インドで最も人気のあるプラットフォームの一つであるGoogle Payを好んで使っている。

「金銭的な取引は迅速かつ便利に行うことができます。」と彼女は言う。
「若い世代はUPIやウォレットなどのキャッシュレス決済を利用することが多くなっており、そのような人たちにも簡単に取引できるようにしたいと考えました。また、一部の商品では少額取引も起きており、現金を扱う手間が軽減されます。」

スマートフォン時代に入り、すでに現金に頼った記憶が急速に薄れつつある中、今回のパンデミックは、ウイルスから身を守るために、特に少額での非接触型デジタル取引の受け入れをさらに加速させるきっかけとなった。

オープンスタック技術

インド・スタック(India Stack)とは、オープンなAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)上に構築されたデジタルIDおよび決済システムでで、13億人のユーザーを持つ国民IDプログラム「Aadhaar」を組み込むなど、消費者がサービスを利用しやすくすることで、金融包摂を拡大する力となっている。

オープンスタック技術(Open-stack technology)は、インドのデジタル決済を一変させたUPIの基盤である。

村やその他の遠隔地にある電子公共サービスのセンターを政府が運営するCSC e-Governance Services IndiaのCEOであるディネッシュ・ティアギ(Dinesh Tyagi)は、「政府は、人々が非常に迅速に統合を試みることができるように、オープンスタック技術を推進しました」と彼は言った。

また、従来の公立銀行に加え、民間のフィンテック企業を推進したことも、これらの技術をより早く導入することを可能にした。また、これらのサービスは市民に無償で提供されており、これがインドのデジタル変革のユニークな点である。

一方、政策立案者は、デジタルマネーの未来に大きな賭けをし、経済への影響をさらに広範囲に及ぼすことを計画している。RBIは、金融の安定と効率的な通貨・決済業務という金融政策の目標を達成するために、CBDC(Central Bank Digital Currency/中央銀行デジタル通貨)を検討している。

決済システムと金融技術を統括するRBIのラビ・サンカー副総裁(RBI Deputy Governor Rabi Sankar, who oversees payment systems and financial technology)は、こうした前進を実現すれば、通貨管理、決済リスク、クロスボーダー決済に有利に働くと述べた。

彼は6月に行われたデジタルマネーに関するIMFのイベントでの講演で、デジタルルピーは暗号資産に大きな影響を与えるだろうと述べた。

「CBDCは実際に、民間の暗号通貨にあり得るどんな小さなケースも殺すことができるかもしれません。」と述べている。

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