戦争による食糧・燃料費高騰で新たなショックに直面するアフリカ。

IMF(International Monetary Fund/国際通貨基金)が定期的に公開している「IMF Blog」は2022年04月28日に、アベベ・アエムロ・セラシエ(Abebe Aemro Selassie)とピーター・コバックス(ピーター・コバックス)による世界最大の経済圏アフリカ最新経済情報を紹介した。

SSA(Sub-Saharan African/サハラ以南)のアフリカ諸国は、またしても深刻な外生的ショックに直面している。

ロシアのウクライナ侵攻により、食料と燃料の価格が高騰し、この地域の経済見通しを脅かしている。

成長が回復し始め、政策立案者がCOVID-19の社会的・経済的遺産やその他の開発課題に取り組み始めていた時期に、この最新の後退が起こるとは、これ以上ないほど悪いタイミングである。

https://time-az.com/main/detail/76759

戦争の影響は、生活水準を低下させ、マクロ経済の不均衡を悪化させ、深刻な影響を及ぼすと予測できる。

最新の地域経済見通しによると、今年の成長率は予想を上回った昨年の4.5%から3.8%に減速すると予想していた。

中期的には年平均4％の成長率を見込んでいるが、パンデミックによって失われたものを取り戻すには遅すぎる。

2022年と2023年のインフレ率はそれぞれ12.2%と9.6%となり、2008年以来初めて地域平均インフレ率がこのような高水準に達すると予想されている。

戦争が各国に与える影響には、3つの主要な経路があり、国によって、また国内でも顕著な差異がある。

この地域の個人消費の約40％を占める食料の価格が急速に上昇している。

この地域の小麦供給の約85%は輸入品である。
燃料や肥料の価格上昇も、国内の食糧生産に影響を及ぼしている。

これらの要因が重なると、特に都市部の貧困層が不当に打撃を受け、食糧不安は増大する。

石油価格の上昇は、この地域の石油輸入国の輸入代金を約US$190億押し上げ、貿易不均衡を悪化させ、輸送費やその他の消費者負担を増加させる。

石油を輸入している脆弱国が最も大きな打撃を受け、財政収支は2021年10月時点の予測に比べてGDP(Gross Domestic Product/国内総生産)比で約0.8%悪化する見込みで、これは他の石油輸入国の2倍に相当する。しかし、この地域の8つの石油輸出国は、原油価格上昇の恩恵を受けている。

このショックは、開発支出を増やし、税収を増やし、債務圧力を抑えるという、ただでさえ微妙な財政のバランスをさらに難しくすることになる。

財政当局は一般に、パンデミック後の追加的なショックに備える態勢を整えていない。

この地域の低所得国の半数は、すでに財政難に陥っているか、その危険性が高い。

石油価格の上昇は、燃料補助金を通じて各国にとって直接的な財政コストとなる一方、インフレによってこうした補助金の削減は不人気となる。

先進国の金利が上昇すると、一部の政府にとって資金調達のコストが高くなり、調達が困難になる可能性がある一方で、成長が鈍化すれば、支出圧力は高まる一方である。

各国は、こうした困難な課題に対処するために、慎重な政策対応を必要とする。

財政政策は、債務の脆弱性を増大させないよう的を絞る必要がある。

政策立案者は、最も脆弱な世帯を保護するために、可能な限り直接給付を利用すべきである。また、農家や小規模事業者のための金融へのアクセスを改善することも有効である。

対象を絞った給付ができない国は、一時的な補助金や対象を絞った減税を、明確な終了日を定めて行うことができる。うまく設計すれば、国際価格に徐々に適応するための時間を提供することによって、家計を保護することができる。将来の危機に対する耐性を高めるには、これらの国々が効果的な社会的セーフティネットを整備することが引き続き重要である。モバイルマネーやスマートカードなどのデジタル技術を利用すれば、パンデミック時にトーゴ(Togo)が行ったように、社会的移転の対象をより適切に絞ることができる。

ベニン(Benin)、エチオピア(Ethiopia)、マラウイ(Malawi)などの商品輸入国は、支出を再優先することで、弱者を保護するためのリソースを見つける必要があります。ナイジェリア(Nigeria)のような純輸出国は、石油価格の上昇から利益を得る可能性が高いが、財政的な利益は、彼らが提供する燃料補助金が抑制される場合にのみ可能である。その恩恵は、信頼できる中期財政フレームワークや強力な公的財務管理システムといった強力な財政制度に支えられ、政策的バッファーの強化に大きく振り向けられることが重要である。

インフレ抑制と成長支援のトレードオフを乗り切るために、中央銀行は物価動向を注意深く監視し、インフレ期待が高まれば金利を引き上げる必要がある。また、金利の上昇がもたらす金融安定化のリスクを回避し、強い独立性と明確なコミュニケーションに支えられた信頼できる政策の枠組みを維持する必要がある。

国際社会は、食糧安全保障の危機を緩和するために歩み寄らなければならない。IMFが最近発表した世界銀行、国連世界食糧計画、世界貿易機関との共同声明では、緊急食糧供給、補助金を含む財政支援、農業生産の拡大、支障のない貿易などの措置をとるよう求めている。

IMFの特別引出権のうちUS$1,000億を脆弱な国々に再分配するというG20諸国の公約を実行に移すことは、この地域の短期流動性ニーズと長期開発への大きな貢献となるであろう。例えば、IMFの貧困削減・成長トラストや、US$400億近いプレッジ(pledges)を受けた新しく設立されたレジリエンスと持続可能性トラスト(Resilience and Sustainability Trust)を通じて、SDRを再分配するオプションもある。

最後に、国によっては、債務の持続可能性を回復するために、債務の再プロファイリングや公的債務の全面的なリストラが必要となる。これを実現するために、G20共通フレームワークは、債務再編のプロセスやスケジュール、債権者間の待遇の比較可能性の実施について、より明確に定義する必要がある。重要なことは、合意に達するまで債務サービスの支払いを停止することである。

Inflation rate, average consumer prices(インフレ率、平均消費者物価年間変化率)のAnnual percent change(年間変化率)
Afghanistan no data
Albania 5.5
Algeria 8.7
American Samoa no data
Andorra 2.9
Angola 23.9
Anguilla no data
Antigua and Barbuda 4.4
Argentina 51.7
Armenia 7.6
Aruba 4.6
Australia 3.9
Austria 5.6
Azerbaijan 12.3
Bahamas, The 7.3
Bahrain 3.5
Bangladesh 6
Barbados 6
Belarus 12.6
Belgium 8
Belize 4.8
Benin 4.6
Bermuda no data
Bhutan 7.9
Bolivia 3.2
Bonaire no data
Bosnia and Herzegovina 6.5
Botswana 8.9
Brazil 8.2
British Virgin Islands no data
Brunei Darussalam 2
Bulgaria 11
Burkina Faso 6
Burundi 9.2
Cabo Verde 2.3
Cambodia 3
Cameroon 2.9
Canada 5.6
Cayman Islands no data
Central African Republic 4
Chad 4.1
Channel Islands no data
Chile 7.5
China, People's Republic of 2.1
Colombia 7.7
Comoros 5
Congo, Dem. Rep. of the 6.4
Congo, Republic of 2.7
Cook Islands no data
Costa Rica 5.4
Côte d'Ivoire 5.5
Croatia 5.9
Cuba no data
Curacao no data
Cyprus 5.3
Czech Republic 9
Denmark 3.8
Djibouti 3.8
Dominica 5
Dominican Republic 8.4
Ecuador 3.2
Egypt 7.5
El Salvador 5.2
Equatorial Guinea 4
Eritrea 6.2
Estonia 11.9
Eswatini 4.8
Ethiopia 34.5
Faeroe Islands no data
Falkland Islands no data
Fiji 4
Finland 3.8
France 4.1
French Guiana no data
French Polynesia no data
Gabon 2.9
Gambia, The 8
Georgia 9.9
Germany 5.5
Ghana 16.3
Gibraltar no data
Greece 4.5
Greenland no data
Grenada 4.4
Guadeloupe no data
Guam no data
Guatemala 4.4
Guinea 12.7
Guinea-Bissau 4
Guyana 5.4
Haiti 25.5
Holy See no data
Honduras 6
Hong Kong SAR 1.9
Hungary 10.3
Iceland 6.9
India 6.1
Indonesia 3.3
Iran 32.3
Iraq 6.9
Ireland 5.7
Isle of Man no data
Israel 3.5
Italy 5.3
Jamaica 8.5
Japan 1
Jordan 2.8
Kazakhstan 8.5
Kenya 7.2
Kiribati 5
Korea, Dem. People's Rep. of no data
Korea, Republic of 4
Kuwait 4.8
Kyrgyz Republic 13.2
Lao P.D.R. 6.2
Latvia 10
Lebanon no data
Lesotho 6.1
Liberia 8.2
Libya 3.7
Liechtenstein no data
Lithuania 13.3
Luxembourg 5.6
Macao SAR 2.8
Madagascar 8.8
Malawi 10.7
Malaysia 3
Maldives 2.3
Mali 8
Malta 4.7
Marshall Islands 5.3
Martinique no data
Mauritania 4.9
Mauritius 8.4
Mayotte no data
Mexico 6.8
Micronesia, Fed. States of 5.6
Moldova 21.9
Monaco no data
Mongolia 15.5
Montenegro 6.8
Montserrat no data
Morocco 4.4
Mozambique 8.5
Myanmar 14.1
Namibia 5.5
Nauru 2
Nepal 5.8
Netherlands 5.2
New Caledonia no data
New Zealand 5.9
Nicaragua 8.7
Niger 5
Nigeria 16.1
Niue no data
North Macedonia 6.9
Northern Mariana Islands no data
Norway 3.5
Oman 3.7
Pakistan 11.2
Palau 5
Panama 3.1
Papua New Guinea 6.4
Paraguay 9.4
Peru 5.5
Philippines 4.3
Pitcairn no data
Poland 8.9
Portugal 4
Puerto Rico 4.4
Qatar 3.5
Reunion no data
Romania 9.3
Russian Federation 21.3
Rwanda 8
Saint Helena no data
Saint Kitts and Nevis 4.2
Saint Lucia 6.4
Saint Martin no data
Saint Vincent and the Grenadines 6
Saint-Pierre and Miquelon no data
Samoa 8.3
San Marino 4.9
São Tomé and Príncipe 14.5
Saudi Arabia 2.5
Senegal 3
Serbia 7.7
Seychelles 5.6
Sierra Leone 17.3
Singapore 3.5
Sint Maarten no data
Slovak Republic 8.4
Slovenia 6.7
Solomon Islands 5.4
Somalia 9.4
South Africa 5.7
South Sudan, Republic of 16
Spain 5.3
Sri Lanka 17.6
Sudan 245.1
Suriname 38.9
Svalbard and Jan Mayen Islands no data
Sweden 4.8
Switzerland 2.5
Syria no data
Taiwan Province of China 2.3
Tajikistan 10
Tanzania 4.4
Thailand 3.5
Timor-Leste 6
Togo 4.6
Tokelau no data
Tonga 6.1
Trinidad and Tobago 4.6
Tunisia 7.7
Turkey 60.5
Turkmenistan 17.5
Turks and Caicos Islands no data
Tuvalu 4.4
Uganda 6.1
Ukraine no data
United Arab Emirates 3.7
United Kingdom 7.4
United States 7.7
United States Virgin Islands no data
Uruguay 7
Uzbekistan 11.8
Vanuatu 4.8
Venezuela 500
Vietnam 3.8
Wallis and Futuna Islands no data
West Bank and Gaza 2.8
Western Sahara no data
Yemen 59.7
Zambia 15.7
Zimbabwe 86.7

2022-04-27---世界のインフレ率は、戦争、需要、雇用市場で長期的に上昇へ。
2022-04-19---戦争が、パンデミックによるインフレ抑制を複雑化し、金融安定化のリスクが増大。
2022-04-19---世界経済の見通しは、ロシアのウクライナ侵攻により、大きく後退している。